1.帰ったらまず宿題!は発達障害の子には通用しない!?
ついこの前進級したかと思えば、もう一学期も折り返し地点に差しかりましたね。
発達障害グレーゾーンのお子さんにとって、一学期は進級の壁にぶつかり、またすぐにやってくるGW明けの壁にぶつかる…そんな不安の感情と闘いながら過ごす時期でもあります。
大きな壁と向き合いながら学校生活を送るお子さんにとって、帰宅後の宿題が重くのしかかっている様子はありませんか?
帰宅後すぐに宿題に取り掛かれない理由の一つに、感覚過敏や集団活動の苦手さなどから起こる、発達障害・自閉症スペクトラム(以下、ASD)タイプのお子さんの疲れやすさがあります。
感覚過敏があり、学校で苦手な音やにおいに耐えながら過ごさなければいけない。
集団行動に合わせるために、自分の心地よいペースを乱されながらも必死に周りについていかなければいけない。
そんな苦痛に強いられたお子さんにとって、学校生活は楽しいことよりも辛いことの方が多いのかもしれません。
そして、決して調子よく学校生活を送っているとは言えないお子さんにとって、帰ってきて宿題をこなすことはとてもハードルが高いのです。
お母さんとしては「しっかりと宿題させたい!」と思っても、宿題をこなすだけの気持ちと体力がついてこないのです。
なかなか宿題に取組めないお子さんには特性に合わせた宿題へのアプローチをすることで、宿題に対する嫌悪感を激減させることができます。
2.宿題をやらせてもやらせなくてもバトルになる…
我が家には、発達障害・ASDの特性のある小学5年生の長男がいます。
小学校低学年の頃までは宿題バトルとは無縁で、毎日学童で宿題を終わらせてきていました。
ですが、3年生になったことからスムーズに取り掛かることが難しくなり、その半年後には宿題バトルが毎日のように勃発していました。
夕方、私が仕事から帰るとランドセルを開けることもなく、テレビやYouTubeにかじりついている長男。
夕飯が終わっても、夜9時を過ぎても宿題をする気配がありませんでした。
宿題問題だけにとどまらず、お風呂にも入らない、洗濯物も出さない、時間割も合わせない…結局「いい加減にしなさい!」と怒られてしぶしぶ動き出すことの繰り返しでした。
次第に、長男に「宿題やろうよ!」と声を掛けることすら嫌になり、完全に放置したこともあります。
しかし、長男は「宿題をやらなくてもいいや」と思うタイプではありませんでした。
不安が強いという発達障害の特性を持っており、先生や私に怒られることが怖くて「絶対に宿題をやらなければいけない」という呪縛にとらわれているタイプだったのです。
夜11時になって「ママ、わからないから教えて!!」と癇癪を起こして寝ている私を起こすことが続き、深夜に宿題でもめる羽目になったことが何度もあります。
無理にやらせても、やらせなくても起きる宿題バトルでしたが、我が子の個性に合った方法を取ることで、解決することができたんです!
ASDタイプのお子さんには効果があると思うので、ぜひ試してみてください!
3.宿題バトル卒業の近道は親子で頑張りすぎないこと!
我が家では、次のような方法で宿題バトルを終結させることができました。
◆帰宅後はまず休憩!
お母さんの本心としては、「宿題は遊ぶ前に終わらせるものでしょ?」と思いますよね。
ですが、学校から帰ってすぐに「宿題やって!」と言ってもなかなか動いてくれません。
疲れやすいという発達障害・ASDタイプの特性を持つお子さんたちは、6時間授業を受けて帰ってきたころにはもう余力はない…ということがあります。
ですから、帰宅後はまずエネルギー回復に努めてください。
30分や1時間では十分な回復ができないかもしれません。
さらに、あまり調子の良くない日は普段よりも長めに休憩時間を取るかもしれません。
お子さんがその日の調子によってどのくらいでエネルギー回復ができるのか、基準となる時間を探ることから始めてみてください。
例えば、お母さんが「ただいま」と声をかけたとき、お子さんの「おかえり」の声が弱々しいとき、または繰り返し「ただいま」と言ってもなかなか「おかえり」が返ってこないときは、エネルギー回復ができずに学校での疲れを引きずっている可能性があります。
そんな時は、学校のことや友達のことは聞かずに夕飯にお子さんの好物を多めに用意してあげる方法がおすすめです。
我が家では夕飯のデザートに長男の大好きなオレンジを山盛りに用意し、無言で応援の気持ちを送っています。
◆ご褒美とあわせて始める時間を自分で決めてもらう
お母さんに「宿題は遊ぶ前に終わらせるべき」「宿題は夕飯の前には終わらせるべき」という考えはありませんか?
宿題バトルを回避するためにもその「べき」を少し形を変えてお子さんに提案してみることをお勧めします。
大人だって「やらなければ」という想いが頭の中でちらついたり、その想いと葛藤しているときに「やりなさい!」と言われると一気にやる気が急降下しますよね。
「今日、何時になったら宿題する?○○時までなら手伝えるよ!」と宿題を後回しにしないメリットを提示したり、
「宿題が○○時までに終わったら、ゲーム時間増やすよ!」とお子さんのやる気がアップするご褒美を設定し、宿題を始める時間を決めてもらいます。
とは言っても、決めた時間をしっかり守って動くことが難しいこともありますよね。
そういう時は、怒らず穏やかな声で「もう○○時になってるよ。宿題どうする?」と取り掛かりを促す声かけをすると、自分の決めたことを守ろうと動いてくれることが多いです。
◆答えを教える!
ご褒美を設定しても、最後までは集中力が持たない…そんな時は思い切って答えを教えてあげてください!
答えを教えてしまっては宿題の意味がない!とたくさんのお母さんが感じていることと思います。
ですが、集中力とやる気のなくなったお子さんに無理に考えさせても、結局バトルになったりお子さんが癇癪を起こして宿題を放棄してしまうことはありませんか?
無理に宿題をやらされるといったやる気のない状態では、集中力が途切れて普段なら解ける問題も考えられなくなる→自信の低下につながる→宿題なんてやりたくない!という想いが強くなる、という負のスパイラルになりかねません。
ですが、答えを教えてあげることで、「途中までは合ってたんだ!」「結構おしかったんだ!」など、自信につながる部分も見えてきます。
自分では答えを出せずに諦めて終わったり怒られて終わるより、ひとつでもできることに気付けた!という想いで宿題を終えることができれば、翌日以降の宿題の取り掛かりのハードルが下がります。
この3ステップで我が家の宿題バトルは終結しました。
今では、長男は夜7時の夕飯まで休憩時間を取った後、夕飯後に自ら宿題を始める時間を宣言するようになりました。
自分が決めた時間よりも少し遅くなることはありますが、私が声かけしなくても自分で切り替えて宿題を始め、私が家事を片付けている間に宿題を終わらせられることがグッと増えました。
いかがでしたか?
お母さんに一番大切にしてほしいことは、お子さんの宿題をやらなければ…という想いを形にするために、お子さんがやってもいいかな!と思うきっかけ作りをすることです。
お母さんが「宿題は早めに終わらせるべき」といった考えや「自分の力でやり遂げるべき」といった考えを手放すことで、お子さんが宿題をやってもいいかな、と思える環境を作り出すことができます。
そして、お子さんとの宿題バトル卒業につなげることができますよ。
執筆者:川崎すみな
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
発達障害グレーゾーンの子の勉強の苦手さを和らげるヒントがあります