1.不登校のはじまりと息子の気持ちに気づかされた言葉
お母さんは、子どもが不登校になると、どんなことをしたら学校に行きやすくなるのかな?と色々作戦を練りますよね。
教室に入れなくなった子どもにお母さんがしてあげられることは何でしょうか?
この春に新5年生になった息子には、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD) と自閉症スペクトラム(ASD)の特性があります。
特性により小2の後半あたりから、学習面で苦手さがみられるようになりました。
それでも 1、2 年のときは先生にも
「いつも真面目に一生懸命頑張っていますよ」と言われており、 低学年ではそれほど他の子と能力差も目立ちませんでした。 お友だちトラブルも特になく、楽しそうに学校へ通っていたのです。
息子は小 3 の ゴールデンウィーク明けに突然学校に行けなくなりました。 頭痛、腹痛、吐き気、食欲不振に加えて手足に力が入らなくなり、当時は青い顔でうずくまり動けなくなりました。
夜寝る時も、朝目覚めても、息子は私の右腕にギュッとしがみつき、 まるでコアラと木枝のような布団の中の親子。
「母ちゃんにくっついていると安心する」とつぶやき、 一緒にいてとても切なくなったことを覚えています。
とてもマイペースで穏やかな息子でしたが、 「早くしなさい、やるべき事をやりなさい」と大人の価値観で叱られると頭を壁にぶつける、物にあたる、泣き叫ぶようになりました。
それだけでなく、過去の嫌だった記憶を芋づる式に何度も引っ張り出してくるのです。
その嵐が過ぎた後に
「母ちゃんは死にたいって思った事ある? さっき僕暴れてる時に死にたいって思った」と言った事があります。
その時はじめて、息子はそんなに辛い気持ちを抱えているのか、と気付かされました。
2.「僕は勉強が苦手…」学校で失った自信
息子が「小学生は学校でめっちゃ大変なんやで」と話してくれた中に、学年が上がり量が増えた板書があります。
先生の話を聞きながら、黒板を見て書く事を覚え、 手元のノートに書く、その作業は短期記憶が弱い息子にはしんどい作業だったのです。度々どこを書いていたのか分からなくなったようです。
また、 ADHD の特性で、
気がそれやすい
繰り返し漢字を書くことが苦痛
課題の量が多いと見通しがたたず取り組む気力がなくなる
といった様子がみられ、自分は勉強が苦手、勉強が出来ないと自信もやる気も無くしていったのでした。
発達凹凸特性があると、学校での時間がつらくなる子がたくさんいます。 それほど注意をひくような困った様子が見受けられなかった場合でもです。
定型発達の子が1のパワーで無理なく出来る事を、 もしかすると5、6のパワーでやっているのかもしれません。
みんなが当たり前にしていることなのに、自分は必死にならないと出来ない、みんなより出来ないことが多い…と、もやもやして毎日を過ごしているのだとしたら。
頭の中のもやもやを言語化できず、吐き出せず、小さな体や心にどんどん疲労感が蓄積していく感じではないでしょうか。
3. 今持っている能力で活躍中⁈周りの大人のあったかみ
フリースクールや適応教室の利用を望まず、学校も先生も好き、違うところに行きたくない、お友だちとも離れたくないと話す息子。
私は真っ先に学習面の配慮を先生にお願いしましたが、体調不良も続いていてうまくいきませんでした。
そんな息子が以前のように、スッと普通に朝からやる気を出して学校へ行ける時がありました。
遠足や社会見学などの学習行事です。
楽しいことや嫌な記憶がない事ならば、周りが働きかけなくても行動できるのです。
息子には実際に体験して会話をして学ぶスタイルが向いているのだとわかり、そんな息子のために学校では周囲の人達が様々な体験を用意してくれるようになりました。
◆お化け屋敷を企画、制作
教室とは違う別室へ登校できるようになり、先生がお化け屋敷を作ろうと企画してくれました。 息子は、おしゃべりをする中でアイディアが次々出てきます。
先生は息子にそのことを気づかせてくれました。 また実行力が伴わない部分は、会話の中でうまく動けるように段取りを引き出してくれ、 形にすることをサポートしてくれました。
一緒に盛り上がり「○○くんとお話するのとても楽しいよ!」と何回も伝えてくれました。
◆学校内の花の水やり
花と緑のボランティアさん(地域の方や児童の母たち)らと、 ホースシャワーやじょうろで学校周りの水やりをします。
私とはほぼ別行動。 寄せ植えや野菜の事を教えてもらったり、キャベツの葉っぱにのっているきれいな朝露をみつけて喜んだり。
息子の感性が刺激されることいっぱいです。 大人以上に張り切って働くので重宝されています。
(当番制、冬は2週に1度、他季節は毎週)
◆図書館のボランティアの活動
私が学校の図書ボランティアをしており、教室や別室にいることが難しい時には、図書準備室で好きな本を読んだり宿題をしたりしてそばにいました。
一緒に図書館の壁飾りなどの製作や貼り付け作業もやる気満々で一緒にやっています。
「センスいいね、大人じゃ思いつかないよ」と、皆さん褒め上手で温かいです。 (月に 2~4 回の活動)
◆朝の交通安全旗振りのボランティアさんとの交流
いつも中途半端な時間に登校をしている母子の様子を気にかけて声をかけてくれました。
息子の興味がある事を聞いてくれ、家で物づくりをよくしている事を伝えると「いいものが家にたくさんあるからちょっと見においで」と誘ってくれました。
ご趣味でされている電子工作を見せてくれ、「基盤にはんだ付けしてるよ」「どんな仕組みで光るかわかるかな」といろいろ教えてくれました。
工作やおもちゃの分解が好きな息子は目をキラキラさせ、ボランティアのおじいちゃんと楽しく会話をしていました。
このように、みんなと同じ教室で勉強することを強要されず、様々な体験を大人とする中で、 たくさんの肯定的な褒め言葉をもらう事が出来ました。
大人に誘導されるような選択肢を出され選べず困っていた時や、課題の提出と連絡帳だけを別室に書きに行く日が続いていた頃を思うと、顔つきも話し方もまるで別人のようです。
また学校内で活動していると、お友だちと自然に接する機会も増えます。
遠くから「○○(息子の名前)~!!」と大声で呼ばれ、走って会いに来てくれるのです。もちろん好きなことだけやっていてズルいと思う子も当然いたと思います。
それでも、先生やほとんどのお友だちは、楽しい事が好きで、興味のあることは知りたいやりたい気持ちが強い息子を快く受け入れてくれたのでした。
4.子どものやる気を回復させ明るい未来と出会う方法
コロナ明けはみんなと同じペースで登校し、ある月は週に2~3日、朝から終わりの会まで登校出来た時もあります。
そして息子は4 年生の終業式の日、 朝の支度をスムーズに行いひとりで登校、 「今までで一番楽しい学年やった」と笑顔で帰宅しました。
身体症状はいつの間にかなくなり、自分のペースで登校が出来るようになりました。
少し頑張りすぎた時は自主休校、今日は〇時から行く、と自分で決める事が出来るようになりました。
登校しても別室へ行くのか、教室に入るのか、何の教科を勉強するのか、別の過ごし方をするのか、それを決めるのも今では本人です。
心の安定から、自信をなくしていた学習の取り組みにも少しずつ変化がみられます。
画数の多い漢字を見るとイライラして、プリントをグシャグシャにしたり、 血管が切れそうなほどの真っ赤な顔で怒ったり泣いたりすることがなくなりました。
算数プリントは4問だけに限定してもなかなか取り掛かれず、解きはじめても間違うとパニック になっていたのが、今では落ち着いて取り組め、全20問をあっという間に5分くらいで終わらすことが出来ます。
また応援してくれる大人とのコミニュケーションから、お友だちと遊ぶ際にもしっかりと必要なことを伝える力がついていると感じます。
相変わらずの母ちゃんマンですが、不登校になった頃と比べると自分の意志で出来る事がたくさん増えました。
今息子は翌日に備え、自分の部屋でひとりベッドに入り眠ります。
子どものやる気を回復させ明るい未来と出会う方法。
それは「お母さんが子どもの価値観めがねをかけてみる!」です。
みんなと同じでなければ将来幸せになれないという時代ではないはずです。
脳の特性で苦手なことは、エネルギーが枯渇している場合、どんなにスモールステップを準備しても、なかなか取り組めません。
そこで自信をもたせることは本人のモチベーションも低く時間がかかります。
子どもが動きだす順番があるのです。
子どもの
楽しい!
興味がある!
嬉しい!
好き!
を感じ取りその想いをお母さんが大切にしてあげられると、 子どもにやる気がわいてきて、たくさんの行動が出来るようになります。
そしてお母さんは子どもの価値観めがねで見えたことを周囲の大人にも勇気を持って伝えてほしいのです。
案外近くに味方がいる事に気が付くかもしれません。 今つらい思いをしているお母さん!
一度大人の価値観を横に置いて、子どもの価値観めがねをかけてみませんか?
不登校の先に明るい未来が少し見えてきますよ!
執筆者:とくながともえ
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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