給食が食べられない・着られる衣服がないと悩む親子に伝えたい上手な感覚過敏とのつき合い方~感覚過敏研究所所長の加藤路瑛さんのお母さん咲都美さんインタビュー~

幼い頃から食べられるものが少なく、匂いに過敏で「給食が食べられない」と受験した私立中学を退学。このような食べ物や着られる衣服がないなどの感覚過敏に悩みがあった息子さんを育てるお母さんの咲都美さんに感覚過敏との上手なつき合い方を伺いました。

1.「給食が食べられない」で受験した私立中学

お子さんが「給食が食べられない」「洋服を着るとチクチクする」などの、不快感を示すと「食べないと大きくなれないよ」「今だけ我慢して着てね」など言ってしまっていませんか?

そんな子どもからの困りごとは、大人からすると「わがまま」と思われがちですが、もしかしたら、感覚の過敏さによるものかもしれません。

感覚過敏研究所の所長である加藤路瑛さん(現在高校1年生)は、「給食が食べられない。給食から離れたい」と昼食はお弁当の私立中学を受験し、合格して通い始めたのも、つかの間。

やはり給食の時間の匂いなどが辛く、学校をお休みするようになり、その後退学をします。

そして、自分がいつも苦手に感じていた「食べ物のにおい」「服のチクチク」「履ける靴下がない」などの感覚の過敏さで困っている方々の五感にやさしい社会を創造することを目的とした感覚過敏研究所を立ち上げました。
感覚過敏研究所
https://kabin.life/

今回は、路瑛さんの感覚過敏にどのように対応してきたのか、お母さんの咲都美さんに伺い、感覚過敏との上手なつき合い方を考えていきたいと思います。

2.感覚過敏を繊細でわがままな子と思っていました

ーー路瑛さんの感覚過敏は小さい頃からありましたか?

「小さい頃から感覚の過敏さはありましたが、感覚過敏という言葉を知りませんでした。中学校の保健室の先生から教えていただいたのが、感覚過敏を知るきっかけでした。

小さい頃から食べられるものがほとんどなく、特に食べ物のにおいは敏感で、靴下を履きたがらない子どもでした。

ただ感覚過敏という言葉すら知らなかったので“繊細な子、わがままな子”というイメージは私の中でありましたね。

主人も息子が食べない様子を見て『食べろ』と言っていたのですが、実は主人自身も子どもの頃、偏食でほとんど食べなかったと話していて…

そんな主人もこうして大人になったら食べられるようになっているから『大丈夫か』と思えるようになりました。

さらに息子には読み書きの困難さもあるのですが、主人は字を書くのも苦手なので、どちらかというと、私よりもおおらかで、息子の気持ちは理解できていたようです。

『読めなくても、書けなくても、食べられなくても、しょうがないじゃない』と無理に強制させるような人ではありませんでした。そこで、私も『そういうものか』と思えた部分があります。」

ーーわが子も兄妹で、食べられるものが違って食事を作る時には苦労しています。でも大人になってご主人が食べられていると聞いて安心します。路瑛さんには理解してくれるお父さんの存在も大きかったと思いますが、咲都美さんは、食べることに関しては怒ることもあったのですね?

「私は息子を小さく産んでしまい、小さく産んでしまったことへの負い目を感じていて、大きくなってほしい、親が思う子どもの理想の体になってほしいという気持ちがありました。

“このまま小さかったらどうしよう”と不安でした。

その不安から『食べろ、食べろ』と言っていましたが、ちょうど小学校高学年くらいからぐんと成長してきたので、こちらも安心して言わなくなりましたね。」

ーー人は、見えない未来、将来に心配や不安があると、あれこれ考えたり、なんとかそれを解消しようと頑張ってしまいがちですよね。

食べられるものが少なくて、給食が食べられなくても、路瑛さんは成長されてますし、人は食べた物から栄養を取って成長していけるということがわかって安心しました。

3.自分の納得する生地に出会うための挑戦を繰り返しています

この章では、路瑛さんが着るものへの過敏さからオリジナル洋服のブランドを立ち上げるまでの、お話を伺っていきます。

ーー路瑛さんは、着るものの過敏さは主にどのようなものがあったのでしょうか?

靴下が小さい頃から嫌いで、キャラクターの靴下でごまかして履かせていました。

色々な靴下を買ってみましたが『やっぱり嫌だ』というので、このまま大人になってもキャラクターの靴下だったらどうしようかと思っていました(笑)

洋服もだいたい着ると「チクチクする」となりますね。中学校は指定の靴、靴下だったのでそれは我慢して履いていたようです。

今は通信制高校N高のオンライン授業を自宅で学んでいるので、学校指定の制服や靴下からは解放されています。自宅では冬でもタンクトップとパンツだけです。

そして近所に出かける時は、真冬でも素足にクロックス、仕事に出かける時は、1足だけ履ける靴下と靴を履いて、帰ってきたら即脱ぎます(笑)

だからいつも足が冷たくて…

『寒い。寒い。』と言う息子に父親が『寒いなら服を着れば?』と言いますが、寒いのと服を着ないの2つを天秤にかけたら、“服を着ない”を選んでしまうタイプです。」

ーー想像するだけで寒そうです。タンクトップは大丈夫なのですね?

「小学生の時から着ているものがあります。肌着もたくさん買いましたが、着慣れたものが安心できるのか、受け入れてくれなくて。5年以上着続けているので、かなり破れています。」

ーー自分の本能的に合うものがきっと安心するのですね。そこから自分に合うもの、そして困っている人のための洋服を作ることになったと思うのですが、着るものの過敏があると服は綿100%で縫い目が外に出るもの、柔軟剤の使用はしない、などの工夫もありますが、自分自身が工夫することだけで感覚過敏が和らぐことはありますか?

「服に関しては、触覚の過敏さは人によって部位も程度も違いますし、受け入れられる生地も違うので、着て試すしかないと思います。お店で『これなら大丈夫』と買った服でも、洗濯すると風合いが変わり、着られなくなることもあります。息子の場合、柔軟剤や洗剤のニオイは強すぎなければ許容範囲のようです。

感覚過敏が和らぐと言うよりも、自分の苦手なものを知り、その対策を考えることで過敏な状態にならないように工夫することはできます。

個人ができる工夫には限界がありますし、これを見出すまでの試行錯誤期間も本人には辛いです。ですので、そのような感覚過敏の課題を解決したいということで、息子は感覚過敏研究所を立ち上げました。今はその途上です。」

ーーその途上での挑戦が、先日クラウドファンディングが終了した、感覚過敏の人にやさしいパーカーですね。こちらの素材は綿ではないのですか?

「そうですね。綿はいいと言うのですが、綿も産地、織り方編み方によってもぜんぜん違います。

洋服を作るようになって、同じ綿100%でもぜんぜん違うことに気がつきました。やはりその人によって綿100%でも好きな手触りがあります。

生地も表面を毛羽立たせないようにするとか、フワっとさせるためにどうするかなど、色々な工夫を生地メーカーさんで加工がされているのです。

息子は、綿はそんなに好きではないといいます。綿も表面を良く見ると小さな毛羽立ちがあって、それが肌にチクチクするようです。

それでも、生地を選ぶ際は、綿好きな人のことも考えているようです。

肌着とTシャツも今、作っています。肌着やTシャツは直接肌に触れる部分が多いので、生地選びも慎重です。息子が納得する生地になかなか出会えず、先にパーカーの生地が決まりました。

パーカーは、縫い目が外側になっていて、タグはプリントです。

首元のプリントも気になるようで肌に触れない場所に印刷しています。外側に出した縫い目をパイピングテープを使って、あえてデザインとしていています。

ジップを上まであげると簡易的なマスクにもなり、さらにフードは目や耳を覆って周囲の情報を遮断できるようになっていて、感覚過敏の人のためにとことん考え抜いたパーカーです。

肌着は、完全に破れて朽ち果ててしまう前に完成させたいですね。」

ーー生地は産地や、編み方織り方で手触りが違うのですね。そしてパーカーは、自分のためでもあり、また同じように感覚の過敏さに困っている人のために作ろうというこだわりや気持ちが伝わってきます。

感覚も、100人いれば100の感じ方があり、同じ食べ物でも匂い、見た目、触感など、洋服などの着心地もそうです。

子どもが発するイヤには理由があるはずです。感覚は目に見えませんし、子どもが何を嫌がっているのか分からない時もあります。

理由がわからない時は親もイライラしてしまいますが、まずは理由はわからなくても本人が嫌なのだと事実を受け止めることからはじめたいと思います。

4.君には障害はないよ

ーー最後に発達障害グレーゾーンのお子さんや感覚の過敏さに悩まれている親子にアドバイスをお願いします。

「息子も、小学4年くらいに発達障害を疑って、検査には行っています。数値的には凸凹が激しくて、診る人が診れば発達障害と言われてもおかしくないくらいの差がありました。

ただ診てくださった先生がおっしゃっていたことが、私の中に残っています。

『障害と言うのは、困っていることがある状態のことをいいます。君、困ってないでしょ?
困っていることを伝えて、自分で解決方法を考えられる君には障害はないよ』

と息子に話してくれたのです。

だから発達障害の診断はもらっていません。

自分で自分の困っていることを、解決するまではいかなくても、SOSを出す『これは困っています』と外に伝えることができれば、何か道は開けるなと思っています。

どうしてもこんなことを言ったら迷惑をかけてしまうのではないか、失礼かなと我慢して言わないことが多いですよね。

息子は『給食が食べられない』『起業したいです』『ぼくはこんなことに困っているので、こういう人に出会いたいです』と色々なことをSNSで周りに発信しています。

発信すると必ずだれかが『それ手伝います』『それだったらこうしたほうがいいですよ』と仲間がばーっと集まってきてくれます。

今は自分の感覚の過敏さをメディアや外向けに話をしているので、自分から困っていると言わなくてもみんなが認知してくれるようになってきました。

息子は、自分の困っていることは『“困っている”と、まずは発信することが大事だ』とよく言っています。

それが仕事や生き方に結構大事なのではないかということを、息子から教えてもらいました。」

ーーおっしゃる通りで、困っていることをなかなか言葉にできないことが、仕事がスムーズにいかない、さらには生きづらさに繋がっているのではないでしょうか。

今回伺ったお話しは、感覚過敏にお悩みの親御さんだけでなく、お子さんの育てづらさを感じているお母さん、さらには大人の感覚の過敏さに悩まれている方にも、参考になると思います。

本日は、どうもありがとうございました。

5.親子で発信して気持ちよく生活しましょう

咲都美さんのお話から、子どもが何に苦手さを感じていて、何に困っているのかを、まず理解すること、そしてその不快感や困ったことにどう対応したらいいのか、自分で発信できるようになることが大切ということがわかりました。

「給食が食べられない」「靴下を履きたくない」などは大人にとって困った子、わがままな子と思われがちですが、実は子どもたちからの、SOSなのです。

そのSOSをきちんとキャッチして、何に困っているのかを理解しながら、食べられるもの食べられないもの、着られるもの着られないものなど、試行錯誤と工夫をしながら、そのデータを蓄積していく。

まずは家庭が「そっか、そういうことに困っているんだね」とお子さんを理解する環境だと、お子さんも「困った」を発信しやすくなります。

そして、子育て中のお母さんは一人でがんばってしまっていませんか?

お母さん自身も「困っていますどうしたらいいでしょうか?」と周りに助けを求めたり、相談ができるといいですね。

そうすると、お子さんも困ったときは声をあげていいんだと思えます。

今日から親子でSOSを発信することを心がけて、気持ちいい毎日を過ごしていきましょう!

感覚過敏研究所事務局 加藤咲都美さん 
感覚過敏研究所所長・加藤路瑛の母。株式会社クリスタルロード代表取締役。偏食で食の細い我が子の育児に悩んだ時期を経て、親子で感覚過敏という言葉に出会い、これまでの苦労の理由を知る。所長の事務的サポート、研究所のバックオフィスを担当。

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執筆者:渡辺くるり
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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