発達障害・グレーゾーンの子の板書の苦手は「記憶」が関係している⁉ワーキングメモリに課題がある子のサポート術

発達障害の子たちは、記憶・ワーキングメモリに課題があることが多いと言われています。板書が苦手・ノートがとれないという困りごとも記憶が関係しているかもしれません。困りごとを減らすためにお母さんができるサポートについてお伝えします!

1.お子さんは授業中ノートをとるのに困っていませんか?

お子さんの普段の様子を見ていて「頼んだことをすぐに忘れる」「一度に2つ以上のことを処理するのが苦手…」と思うことはありませんか?

発達障害の特性がある子どもは、記憶することが苦手な傾向があります。

そんなお子さんは、家だけでなく学校でも困っているかもしれません。

記憶が苦手な子が学校で遭遇する困りごとには、どんなものがあるでしょうか?

考えられるのは「板書が苦手」「ノートを書くのに時間がかかる」という困りごと。

たとえば“先生の話を聞きながらノートをとる”という動作を分解して考えてみると、一見簡単なようですが、このとき脳は複数の作業を同時進行しています。

・先生の話を”聞く”
・聞いた内容を”短期的に記憶する”
・記憶した情報を”整理する”
・整理した情報を”アウトプットする(書く)”

こうやって分解してみると「ノートをとる」という行動をするだけでも、意外とたくさんの作業を脳の中で同時に処理していることが分かりますね!

作業や動作に必要な情報を一次的に記憶・処理する能力をワーキングメモリと呼ぶのですが、同時進行が苦手な子はこのワーキングメモリをつかさどる脳の部分に凸凹があると考えられています。

脳の中で、記憶や学習に関係する場所を「海馬」と呼びますが、発達障害の多くの子どもたちはこの「海馬」の形成に特徴があるそうです。

字を書くのは問題ないけれど、ノートに書きとるのが苦手なタイプのお子さんは、ワーキングメモリと呼ばれる脳の作業領域が少ない傾向があります。

要領が悪い、ぼーっとしているなど、性格の問題として扱われることも多いのですが、それは違うんです!

脳の特性なので本人が頑張って努力しても難しい、ということを覚えておいてください。

その理解をうっかり忘れてしまうと、「なんでできないの!!」とついついお母さんのイライラがヒートアップしがちなので要注意です。

2.発達障害・グレーゾーン「記憶」が苦手な子への学校のフォロー

必要に応じて「苦手」のフォロー体制を整えてあげることで、お子さんが過ごしやすくなります。

家庭だけでできることもあれば、学校への相談が必要な場合もあります。

学校へ相談するときは「一度に複数の指示を与えられるとこなすのが難しい」というのが発達の特性によるものである事を理解してもらいましょう。

その上で対応策を一緒に考えていけると良いですね。

小学校で担任の先生との連携ができている場合は、先生に相談して「指示の内容は1回につき1つだけにしてもらう」などの対応をしてもらえると、学校生活で困る場面が減ると思います。

また、黒板が見やすい前の席にしてもらったり、板書を少なくするためにプリントを用意してもらうなどのサポートをしてもらえる可能性があります。

小学校まではその子の特性に合わせて対応してもらえることが多いですが、対応が難しくなるのは中学校進学後かもしれません。

通っている学校によって環境が異なると思いますが、一例として息子の例をご紹介しますね。

息子は、都内の区立中学校の通常級に通っていました。

中学に入ると
①教科ごとに先生が異なる
②教科によって教室の移動が増える
③教科ごと、バラバラに宿題がでる

という環境に変わります。

まず、教科ごとに先生が異なると何が起こるかというと…全教科の先生に子どもの特性をお伝えして、同じクオリティの対応をしてもらうのは難しいワケです。

次に、教室の移動が増えると何が起こるかというと…次の授業は何か、教室はどこか、必要な教科書やノートは何か、宿題は何かなど、複数の情報を整理して行動に移すことが必要になります。

すると、教科書は持ったけどノートは忘れてきたとか、宿題を持たずに行くといった、先生に叱られやすい状況ができてしまうワケです。

そして、教科ごとバラバラに宿題が出ると…情報をまとめて整理するのが苦手なので、1日を通じてどんな宿題が出たか忘れてしまう

だから、宿題をやらずに次の授業を迎えてしまう。

その結果、先生に叱られ、成績表の評価はグーンと下がり…という状況に陥りやすいのです。

だからこそ、記憶の苦手な発達障害の子どもには早めの対応が必要なのです。

3.記憶やワーキングメモリに課題がある子にお母さんがしてあげられるサポート

記憶やワーキングメモリに課題がある子にはどのような接し方をしてあげるといいのでしょうか?

お家の中であれば、お母さんが意識して指示を1つずつ出してあげるのがオススメです。

指示は「細かく、1回に1つの指示を出す」のがポイントです!

例えば、お子さんが朝起きたとき「顔を洗ったら、着替えて、脱いだパジャマはたたんでね」と一度に言うのはNGです。

してほしい行動を、顔を洗う、服を着替える、パジャマをたたむ、に分けて指示しましょう。

まず「顔を洗おうね」と声をかけます。

洗い終えたら「顔洗えたね」と肯定して、次に「服に着替えようね」と声をかけます。

着替え終わったら「着替えられたね」と肯定して、次に「パジャマをたたもうね」と声をかけます。

たたんだら「パジャマたためたね!」と肯定してあげてください。

ここで言う「肯定」とは、発達科学コミュニケーションでお伝えしている「褒める」「認める」こと!

褒められる・認められることで、お子さんの脳のネットワークが強化されていきますよ。

できていることに注目して肯定することが大切です!

当たり前のようなちょっとしたことでも、お子さんが「できた」ことを認めてあげてください。

褒めるのが難しい場面なら、「着替えて」と指示したとき、取りかかろうとしたその瞬間を逃さず、「ズボンを脱いでいるんだね」と行動に移したこと自体を肯定するのも有効なんですよ。

発達障害の特性を持つ子、記憶に関して発達凸凹のある子どもたちが自信を失わずに過ごすには、お母さんの「理解」がとっても大事です。

家庭でも、発達の特性に合わせたコミュニケーションでお子さんの成長をサポートしてあげましょう!

執筆者:清水畑 亜希子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)

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