1.なぜ子どもは「宿題がない」などと嘘をつくの?
お母さんの悩みの種の一つ「宿題」問題。
今回は、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)グレーゾーンの子どもたちの宿題問題についてお話していきたいと思います。
・本当は宿題があるのに「先生が宿題はないって言ったよ」とウソをつく
・宿題が終わっていないのに「もう学校でやってきちゃった」という
・先に「勉強しなさい!」と言っても いつも後回しでバタバタする
こんな場面でおもわずイライラしてしまったり、厳しく叱ってしまうこと、ありませんか?
我が家のADHD男子の小学生の頃を思いかえすと、私も同じようなことにいつも頭を悩ませていました。
息子の小学校では子どもたちが連絡帳に宿題を書いたら、先生がちゃんと書けたかチェックしてステキなハンコを押してくれていました。
息子の連絡帳には毎日先生のハンコがついてあったので、私は連絡帳に書いてある宿題を疑うことはありませんでした。
ですが!息子は、先生に見せたあと実はこっそり書き直していたのです。
本当は、宿題はどんどん進んでいるのに息子は先生に見せたあと、消して、自分がやったページの番号に書き換えていたのです…。
連絡帳をみて「あれー?最近ドリルの宿題あんまり進まないんだね」と息子に聞いたら、「うん、まだ進んでない子がいるからみんなが揃うまではここで待ってるんだって」と 何ともごもっともらしい解説をしてくれたのです。
ところがある日、学校にいく用事があって先生と話したときに「最近、ドリル進まないですね」と雑談がてらきいてみたら…
「お母さん、ドリルは今、このページまで進んでいますよ」
と言われ、問題が発覚したのです!!!
「息子に騙されたーーーー!!」
この狡猾なウソを考えるエネルギーを、どうか勉強に向けてもらえないだろうか…と心底思いました。
そして、当然のことながら帰宅後はお説教タイムです。
ところが、叱っても叱っても息子は勉強をするどころか、もっともっと勉強嫌いになっていきました。
そんな、昔の苦い思い出ですが今は、勉強の苦手さがありながらも向き合う力を持っているので、学校でもがんばれる子になっています。
2. 宿題「できた体験」をプレゼントしよう
では、なぜ発達障害グレーゾーンの子どもたちは、そんな嘘やごまかしをしてまで勉強をしたくないのでしょうか。
それは、勉強で「うまくいった」体験が少なすぎるからなのです。
発達障害グレーゾーンの子どもたちの勉強の苦手さは、発達の困りごとが影響していることが多いので、
「だって、勉強わかんないし」
「そんなにたくさんできないし」
「やったってどうせできないし」
こんな状態になってしまっています。
それに気づかずに「もっとやれ」「努力が足りない」となるので、こじらせてしまう…
そんな、勉強の成功体験が少ないお子さんには、お母さんの〇〇を下げて「できた体験」をプレゼントしてみてください。
3.お母さんの○○を下げる方法2つご紹介
お母さんが下げる〇〇とは…
それは要求値です。では、どのように要求値を下げたらいいのでしょうか。
例として2つご紹介しますね。
◆やらないことを決める!
得意なことも苦手なことも全部ごちゃ混ぜでたくさんあって、どれを重点的に取り組めば良いのか、ADHDの子どもたちは自分では把握できません。
だから国語が得意なら国語だけやる!とか算数の中でも文章題が苦手なら計算問題だけやる!など頑張りポイントを決めてあげてください。
「これだけやればOK!」がわかっているほうが発達障害グレーゾーンの子たちは取り組みやすかったりします。
そうなると勃発するのが「やらなかった宿題はどうすればいいんですか?」問題です。
残ったものについては以下のような対応術があります。
◆ちょっと非常識⁉苦手な宿題の対処方法
<その1>ドリルの答えなどがあれば答えを写す
「答えを見るなんてそんなの勉強になるの⁉」と思われるかもしれませんが、答えをみて「そうか!」と気づくならそれも1つの方法です。
わからないままウンウンうなっていても、お子さんにとっては苦痛の時間をすごすだけです。
そうか!わかった!の体験の先に「やってみよう」があります。
やり方をわかって次もやってみよう、と思わせてあげることが大切です。
最初のうちは、答えの「意味」を理解していないかもしれません。
ただ写すだけになるかもしれません。
理解が追いついていないお子さんの場合は、そんなこともあります。
それでいいのです。
そんなお子さんが最初に目指すのは「提出できた!」という成功体験です。
書いていないものは提出すらできませんが、書いてあれば提出することはできます。
そこからのスタートでもいいのです。
宿題=嫌なもの
宿題=僕にはできないもの
の記憶を書き換えていくコミュニケーションを重ねていきましょう。
一見遠回りのようですが、要求値を下げることがコツになります。
写すことで目や手を動かしますので、脳の活動量はUP!
「嫌だー」といってやらない状態 VS 写しながらだけど脳を使っている状態
どちらのほうが脳の活動量が多いかは想像できますよね。
発達科学コミュニケーション(発コミュ)で「行動」にこだわるのには、実はこのようにきちんとした理由があるからなのです。
<その2>お母さんがやる
こちらも要求量を下げるという意味では一緒です。
宿題をやらせるのが難しい場合、“提出する”ということをまずは目標にしてしまいましょう!
「提出した」という成功体験を作って勉強に対する嫌悪感を払拭するところからスタートします。
<その3>やらなくてよし!とする
これは、お母さんのハードルが少し高いかもしれません。
要求値を下げるという意味では、実はこれも1つの方法なのです。
その代わり、勉強以外のことで毎日の当たり前の行動をしっかり肯定してあげる。
こうやってお子さんの自信を育むことからチャレンジしてみてください。
さあ、どれにしますか?
「どれも無理です〜」と思うお母さんの気持ち、とてもよくわかります。
私も発コミュに出会う前は、「宿題やらない」とか「答えを写す」とか「絶対にありえない!派」でした。
ところが、結果的に上の1〜3をやったことで、今、高校1年の息子は勉強をする習慣がついています。
受験に向き合うだけの学力とメンタルの強さを手にすることができました。
どれだけ塾にたくさんのお金を払っても、厳しく言って聞かせても、長時間勉強させようとしても、変わらなかった息子が、今、やっているのです。
このように、行動する、経験を積む、ハードルを下げてでも子どもにトライしてもらいたいのは、なぜか。
脳を使う「経験」が脳の成長には不可欠で、脳を使うことで子どもの脳がポジティブに働き出すからです。
発コミュの子育ては「今」だけを見ていません。
1ヶ月後、半年後、1年後、5年後、この先の人生をどう歩ませたいのか、その視点で子どもの脳を伸ばしていくことをします。
発達の特性は、「脳の特性」でもありますので、今すぐ成長するものばかりではありません。
でも、ゆっくりでも成長していくのです。
息子は13歳(中1)の時に発達の検査を受け「成長のステージとしては8歳くらいだと思って接してください」と言われました。
衝撃ですよね!マイナス5才です。
当時の息子の困りごとを今、冷静になって振り返れば「そうですよね」と思えます。
なんとか今の困りごと地獄から脱却したいと思っていた私にすれば、他の子と同じようには成長していかないのかな、という不安が先立ちました。
しかし、発達の特性を潰さずに伸ばす方法に変えたら、息子は伸びました。
これが発達障害やグレーゾーンの子どもの子育てに必要な視点です。
子どもが伸びる方法を知っていれば、お母さんの不安は軽くなっていきますよ。
執筆者:清水畑 亜希子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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