本格的な受験シーズン到来!神経質で繊細、プレッシャーやストレスに敏感な自閉症スペクトラムタイプの受験生をお持ちのお母さん。発達の特性を活かした勉強の仕方がありますよ。お母さんが上手に受験をサポートする方法をマスターして親子で乗り越えましょう!
1.繊細でストレスを抱えやすい自閉症スペクトラムタイプの受験生
受験生のお子さんたち、また彼らを日々支えるお母さん方、いかがお過ごしですか?
今年度は、新型コロナウイルスの影響で、前半は長い自粛期間がありました。
学校再開後も、行事予定や授業形態が大幅に変更になり、勉強、勉強の2学期だったのではないでしょうか。
自閉症スペクトラム(ASD)の子どもたちは「変化」が苦手という特性があるため、お子さんも支えるご家族も、気の休まらない日々をお過ごしかもしれませんね…
繊細で、神経質、ストレスを抱えやすい。
一方で、こだわりが幸いして、目標が決まればそこに向かって真面目に、一生懸命頑張ることができるASDタイプの受験生。
今回は、真面目で一生懸命だからこそ陥りやすい彼らの行動パターンと、その勉強面での対応の方法についてお話していきたいと思います。
2.受験勉強で活きてくる特性・ネックになる特性
我が家の長男はASDの傾向があり、昨年度受験を経験しました。
真面目な彼は、受験生であるという自覚をしっかり持ち、憧れの高校を目指してがんばるぞ!という意識を強く持っていました。
反面、繊細で神経質、不安が強い傾向があるため、「頑張るぞ!」が「頑張らなくては…。」というプレッシャーになってしまうこともありました。
母親である私自身も、実はASDの傾向あり、受験生だった頃、特に夜になると…
「受験本番は、○月△日だから、今日からあと○ヶ月と○日後、今は○時○分だから、今夜は○時に寝るとして、勉強できるのはあと○時間と○分。ああ、時間がない!」
なんてパニックになって、結局何も手が付かないなんて日もありました…。
頭の中で思考が止まらなくなってパニックになってしまう。ASDにはよくある特性です。
さらに、ASDの子どもたちが持っている特性で、受験勉強と関わってくるものにはどんなものがあるでしょうか。
・ 興味のあることには積極的に取り組むけれど、そうでないことには途端にスイッチがオフになる
・「変化」が苦手で、こだわりが強い
・気になることがあると、思考が頭の中でグルグル回って止まらない
・感覚が鋭く敏感で真面目。プレッシャーやストレスに弱い
いかがでしょう?お子さんに当てはまることはありませんか?
3. 特性を活かしてお母さんが一緒に受験を乗り越える方法
それでは、特性に合った勉強面での対応方法を考えていきましょう。
◆お母さんのサポートがあれば安心です
①興味のあることには積極的に取り組むが、そうでないことにはスイッチがオフ
合格が目標ではなく、例えば、「部活に入って楽しく活動する」や「得意なことをとことん学ぶ」など志望校でやりたいことを目標にしましょう。
見通しのつかないことが苦手な彼らにとって、目標が見つからないと、頑張る理由までも見つけられず、勉強がただ苦しいものになってしまいます。
真面目なASDのお子さんは、目標があり、その先に明るい未来が見えるからこそ、受験勉強もがんばれるのです。
お子さんの特性や、得意なこと学びたいこと、様々だと思いますが、お子さんの意見を聞いて、親子で目標を決めるといいですね。
②気になることがあると、思考が頭の中でグルグル回ってしまう
先の見通しを立てて、スケジュールを立てるのが苦手です。
もしかしたら、やらなければいけないタスクがたくさんあるけれど、頭の中だけで考えていて、具体的な全体像を把握できていないのかもしれません。
そんな時は、タスクとスケジュールを具体的に書き出し、言語化・可視化すると頭の中の混乱を整理することができ、心の負担が減ります。
この作業は、お子さんが困っているようだったら、是非お手伝いしてあげてください。
私と息子はテストの範囲が出ると、テストまでのカレンダーと、問題集のやるべきページの数字をノートに書き出しました。
日付とできたページにチェックを入れることで、残りの日数と、課題の量を目で確認できるようにしました。
チェックを入れることで、達成感も味わえ、勉強の励みになりますよ!
③「変化」が苦手でこだわりが強い
これは、毎日コツコツ続ける必要のある勉強に生かせる特性です。
例えば、計算問題や、漢字・英単語の練習などをルーティーンとして取り入れてみましょう。
毎日のリズムができ、何から始めようかと迷うことなく、勉強に取り掛かれます。
④感覚が鋭く敏感で、プレッシャーやストレスに弱い
プレッシャーを感じやすいお子さんは、課題が多かったり、苦手な問題があったりすると、気持ちが萎えてしまうことがあります。
そんな時は、心理的なハードルを下げる「スモールステップ」の手法を使いましょう。
・量が多いなら問題をいくつかに分けて、適度に休憩を入れながら取り組む
・難しい問題があったら飛ばして、まずは自分が解きやすい問題から始めてみる
調子が乗ってきたら、難しい問題にチャレンすればいいのです。
⑤体力に自信がなく、疲れやすい
ASDタイプは、社会性に課題を抱えている子どもたちが多いです。
学校生活では気苦労も多く、帰宅すると脳も心も体もヘトヘト。
もしお子さんが頭を抱えて、固まっている様子の時には、何かが頭から離れないで辛い思いをしているのかもしれません。
悩み事のようだったら「どうしたの?よかったら、話を聞くよ。」と声をかけてあげてください。
「大丈夫?」と聞くと、人は反射的に「大丈夫だよ。」と答える傾向があり、心に蓋をしてしまうので「どうしたの?」と声をかけるのがコツです。
また、疲れている様子のときには、思い切って早く寝ることです!
心と体をゆっくり休めて、次の日に早く起きて、スッキリした頭で勉強すればいいのです。
◆受験とは、ボルダリングのようなもの
課題を小さな段階に分けるスモールステップ。これは、ストレスを感じやすい子どもたちにはとても有効な手段です。
受験とはまるでボルダリングのようだな、と思うのです。
志望校・憧れの高校生活という目標は、まだ手の届かない先にあり、下から見上げてみると、その距離に圧倒されてしまうこともある。
でも目の前をみると、すぐ手の届くところに目標へと進む手がかりがある。
時々上にある目標を見上げて、今の自分の居場所を確認しながら、目の前にある手がかりの中で、自分に必要なところに手を伸ばし、自分を引き上げる。
地道に、1つ1つのステップを重ねていくと、いつかゴールに到達する。
私たち保護者の仕事は、一生懸命次のステップに挑戦し、登っていく子ども達を見守り、応援し、時には助けの手を差し伸べること。
苦しいこともあるけれど、ステップを上がるごとに、実力と自信を身につけることができる。私の息子もそうでした。
ゴールに手が届いた時、そこには最高の喜びが待っています。親子で一緒に乗り越えていきましょう!
私も、心から応援しています!
執筆者:飯島なち
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
発達障害の受験生を支える親子のコミュニケーションのコツはこちら!