1.発達障害の「嘘をつく」行動、そのまま大人になって大丈夫?
これから、中学、高校、社会へと進み新しい環境でがんばる発達障害やグレーゾーンの子どもたちに、手渡しておきたいチカラこそが「社会性」のスキルです。ソーシャルスキルともよばれます。
発達障害・グレーゾーンの子どもたちは
・相手の気持ちを理解するのが苦手
・空気をよみまちがえる
・自分の意見を伝えられない
・ルールや時間を守るのが苦手
・ペースを乱されるのが苦手など
さまざまな”苦手さ”を持ち合わせているので、集団での活動ではトラブルが起きやすかったり、悪目立ちしてしまいがち。
そして、この苦手さによるさまざまなトラブルや問題が起きたり、それを周りに知られないように嘘つきになってしまったり。
このように苦手なままでは、いいことはありません。
だから社会では絶対に必要になるチカラがソーシャルスキルなのです!
こんな調査結果があります。
「新卒社員(社会人1年目の社員)に求めるスキル」
1位:コミュニケーションスキル
2位:ビジネスマナー
3位:論理的思考
※PRTIMES「新卒社員に求められるスキル」に関するアンケート調査より
1位のコミュニケーションスキル(ソーシャルスキル)は、圧倒的に多く63%!
ついで2位のビジネスマナーは、12.3%という数字になっています。
この結果のように、コミュニケーションスキルも、マナーも、社会でやっていくにはとっても大切なスキルなのです。
しかし、社会性のチカラをつけたいのに「うちの子すぐに嘘をつくんです」こんな悩みを抱えているお母さんもいらっしゃるかもしれません。
次の章から、社会では発達障害グレーゾーンの子たちの「噓をつく」本当の理由を紐解いていきます。
2.嘘をつく子どもの頭の中はどうなっているの?
発達障害グレーゾーンの子の「嘘をつく」様子をみて、将来を不安に思うお母さんもいるかもしれません。
「ウソをつくなんて人としてどうなの!?」
「このまま大人になって大丈夫なの?」
など、社会で生活していく上でも、コミュニケーションのマナーとしても、嘘をつかずに正直であることは大切なチカラですよね。
だからお母さんも、嘘に対しては厳しく叱って対応をしている方も多いことでしょう。
ですが、実は、発達障害グレーゾーンの子たちの「嘘をつく」は、叱ってもさとしても実はあまり変わらない。
「嘘をつく」理由がわかってくれば、どうやって対応すればいいのかがわかりますよ。
ここでは、発達障害の特性のある子は、なぜ嘘をつくのか?その理由をさぐってみましょう。
◆認知のズレが「ウソ」と解釈されてしまう
よくあるのが友達とトラブルになったり、先生に叱られたりした時に、お子さんの言い分とまわりの人の言い分が「ズレる」ということ。
ですがこれ、当の本人は嘘をついているつもりはまったくないことも多いです。
発達凸凹キッズは、認知の仕方(ものごとの捉え方)が個性的だったり、偏りがあったりして、本人が捉えた事象とまわりの客観的な理解が一致しないことがよくあります。
だから、ただ叱っても本人にとっては
「どうして僕の言い分をだれもきいてくれないの?」と感じるだけなのです。
◆頑張るつもりだったけどムリだった
例えば「明日の朝は学校に行くよ」「●時になったらちゃんとやるから」と宣言したのに、結果的に守れなかった…というケースです。
発達凸凹キッズだって、本当はやらなくちゃいけないということは頭で理解しているのです。
ですが、その時を迎えるとやっぱりできそうな気がしないという「不安の強さ」「自信のなさ」が顔をだしてしまって、行動に移せないこともよくあります。
また、過集中などの特性の影響でついダラダラ好きなことをやってしまい、結果的にできなかったということも多いのです。
◆怒られすぎ、自信喪失から自分を守ろうとしてしまう
発達凸凹キッズは苦手なことも多いので、大人から叱られる場面が多いです。
友達から指摘されることも、思春期になると増えてきます。
だから、叱られたりイジられたりすることを回避するために嘘をついてしまうこともあります。
防衛反応といってもいいでしょう。
3つの理由のうち「これうちの子のことだ」と思ったら先送りせず、いますぐに対応を変えましょう。
3. 「嘘をつく」行動を落ち着かせる、脳が育つ親子のコミュニケーション
もし子どもが「嘘」をついてしまう場面に遭遇したらやってほしいこと、それは我が子への理解です。
また嘘をついた!と叱るのではなく
「うちの子はこういう場面でこんな思考になるんだな、こんな行動になるんだな」と理解するところからスタートです。
必要以上に叱る必要はないのです。
叱られてばかりいると、子どもたちの脳は、常に感情の脳がよくない興奮をしている状態になります。
その状態が長く続くと、子どもたちの自己肯定感は下がり続け、自分を守るために「嘘をつく」行動を繰り返してしまいます。
「嘘をつかない」ためには、穏やかに過ごせる時間を増やし、ルールを守るなどの「社会性をコントロールする」役割の脳が、バランスよく活動できる環境を作ってあげましょう。
脳がバランス良く活動できる環境づくりができると、子どもの困りごとが落ち着き、発達が加速しやすくなります。
昔の私は息子に対して「嘘ばっかりつく」と厳しく叱り、正しいことだけを延々と言って聞かせる。そんな対応をしていました。ですがそれだけでは子どもの行動は変わりませんでした。
だからその代わりにやったのは、息子の自己肯定感の回復。
✔️どんな些細なことでも発見して肯定する
✔️日常の当たり前にできていることを見つけて言葉で伝える
✔️笑顔と明るい声で会話をする
こんなやりとりを続けて「大丈夫、お母さんは、怒っていないよ」「あなたのこと嫌いじゃないよ」というプラスのメッセージを伝え続けました。
すると、息子は次第に「意味もわからず叱られる」恐怖がなくなり、嘘をつくことで「自分を守る」「ごまかす」ような行動をしなくなりました。
そして、うまくいかないことがあったら相談してくれたり、点数が悪いテストでも「がんばったけどここまでしかできなかった」などと、素直に伝えてくれるようになりました。
そうやって相談してくれれば、私たち大人が一緒に作戦を考えてあげることができます。そしてそれを乗り越えることができたら、また子どもの自信につながっていきます。
発達障害グレーゾーンのお子さんの「嘘をつく」お悩みには、理由と対処方法があります。
お母さんには発達凸凹キッズの”ウソ”の正体を知ってもらい、必要以上に叱るのではなく、ルールを守る脳がしっかりと働くコミュニケーションにシフトしてもらいたいと思います。
執筆者:清水畑亜希子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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