敏感な子どもの気持ちはどうやったらわかるの?不登校のわが子は生き方を教えてくれる先生だった!~HSP&場面緘黙症サポーター井上愛子さんインタビュー後編~

敏感な子の気持ちはどうやったら理解してあげられるでしょうか?子ども時代にHSC・場面緘黙症で、現在は不登校の息子さんをサポートをされている女性にお話を伺いました。「子どもが不登校になった後の方が幸せ!」と前向きでいられる理由もお聞きしました。

1.愛のあるトライ&エラーで子どもの居場所を探していく

前編のインタビュー「子ども時代のつらい過去を乗り越えるチャンスをくれたのは、わが子の不登校だった」からの続きです。

ひといちばい敏感な子や発達の特性がある子を育てるとき、他の子と同じ方法ではうまくいかないことがあります。また親であっても、子どもの気持ちを理解してあげるのが難しいことも…。

現在中学1年生のHSCの不登校の息子さんをサポートされている愛子さん。インタビュー前編では、息子さんのサポートをしながら、ご自身の子ども時代のつらい気持ちに向き合い乗り越えていったことをお話してくださいました。

後編では、子どもの気持ちを理解しサポートするための具体的な方法、母親のマインドの持ち方について伺っていきます。

――不登校の息子さんのサポートをしていて、とくに難しいなと感じたことはどんな事ですか?

「息子は、これといって熱中できるものがあるタイプではありませんでした。何か熱中できるものがあれば、学校に行けなくても親としてそれを応援してあげれば良いと思うのですが、何もなかったのでそこが難しかったです。

学校以外の居場所も探そうと思って放課後デイにも行ったのですが、人がこわくなってしまっていたので、少人数のところでも他の子どもが何人かいるとダメだったり。

熱中できるものがない、人がこわい、不登校の中でも難しいケースにあたってしまったなと思いました。

でも絶対いつか息子に合う居場所が見つかるはず、と思って探し続けました。

本当に色々探して、昨年の夏にやっと個別支援をしてくれる息子に合う居場所が見つかりました!

私と離れるのがずっとダメだったのですが、そこは2回目から『お母さん、来なくていいよ』と言って1人でいられるようになりました。」

――息子さんに合う居場所が見つかってよかったですね!その子に合う居場所を見つける秘訣ってなんだと思いますか?

「不登校になったばかりの頃は、無理に居場所を探したりせずに休憩して力を蓄えさせてあげて、本人が大丈夫な範囲で外に出させてあげる工夫をすることが大切だと思います。

もちろん、まったく外に出られない子もいると思います。 その場合も、しっかりとお母さんが子どもの心に寄り添いながら、無理をさせずにサポートしていく必要がありますよね。

うちの場合は、いじめで不登校になったので心の傷が深く残ってしまいました。 なのでまず最初は、息子の嫌なことはさせない、やらないと決めて好きなようにさせていました。

その時期は、まったく外に出られなくなることを避けるため、私とだったら安心して外に出られる状態だったので、私の用事に付き合わせて一緒に外出していました。

そうやって子どものエネルギーが充分回復してきたら、親の方もずっとそっとしておいて何もしないのではなく、子どもの様子を見ながら押すところと引くところを考えることが大切だと思います。

今回、息子の居場所が見つかったことで、子どもって“安心“できたら、ちゃんとそこにいられるんだなと思いました。

どんな場所が安心・安全なのかは、その子によって違うと思います。それを試行錯誤して、ヒットするまで探していく感じでしょうか。私もうまくいかなかった経験はたくさんあります。

お母さんが体裁を気にしてやっていることって子どもの心に傷を残しやすいんですが、子どものことを本当に考えた上で、トライ&エラーを繰り返す分には、子どもの心は傷つかないと思います。」

――うまくいかなかったらどうしようと子どもの背中を押すのをためらってしまうお母さんが多いと思いますが、「親が子どものことを本当に思った上で試したことであれば傷つかない」という言葉に勇気がもらえます。

押すべきか、引くべきかを見極めるには、子どもの様子をよく観察することが大切ですね。

2.敏感な子どもの気持ちを理解するには、お母さんのマインドチェンジが必要!?

次に、敏感な子どもの気持ちを理解するためのヒントをお聞きしていきます。

――愛子さんは、ご自身の経験から息子さんの気持ちがよくわかると思いますが、敏感な子どもの気持ちがなかなかわからないというお母さんはどうしたら子どもの気持ちがわかるようになると思いますか?

「HSCに関するお話会をすると、『子どもがHSCなんだけど、私にはその感覚がわからないから、子どもの気持ちを理解したくて勉強しに来ました』というお母さんがいます。子どものためにわからない事を勉強されようとしている、それってすごいことだなと思います。

子どもの気持ちに寄り添って試行錯誤すること、それこそ愛だと私は思っています。」

――親が一生懸命自分の気持ちをわかろうとしてくれている、それだけでも子どもの気持ちは救われますよね。

「そうですよね。どうしても、子どものしんどさがわからないと言うお母さんにはこんな風にお話することがあります。

『お母さんが苦手なことを1つ挙げてください。周りの人が当たり前のようにそれをやっていて、自分1人だけできなかったらどう思いますか?お子さんは毎日そのしんどさを学校で突きつけられているんだと思いますよ。』と。

そんな風に質問を投げかけると、ハッとした顔になってお母さんの中で気づきがうまれるのを感じることがあります。」

――なるほど、それはちょっと想像しただけでもツライってわかります。自分のことに置き換えてみると子どもの気持ちも想像できますね。

3.不登校のわが子は最先端の生き方を教えてくれる先生だった!?

次に、不登校のお子さんをサポートしていく上での母親のマインドの持ち方についてお聞きしていきます。

――息子さんのサポートをしていて、心が揺れることはありませんか?

「もちろん、ありますよ!

不登校の子をもつお母さんが不安になるのは当たり前だと思います。誰も教えてくれなくて、手探りで探していく道ですから。

でも、私の場合は不安になってもすぐに戻れます。1番大切なことはコレっていうのがわかったので。」

――愛子さんは、子どもをサポートする上で1番大切なことってなんだと思いますか?

「親が子どもの人生を信じること、子どもの生き方を信じることだと思います。

親が、“この子はこうだ”って決めたら、本当にその通りになっていくと思います。私は息子が不登校になった時から、今できないことがあったとしても、この子の未来は明るいと信じています。

私の場合は、つらくてもなんとか耐えて周りに合わせるような生き方をずっとしてきてうまくいかなかった体験があったから、焦ってみんなと同じように生きていくことに価値がないと気づいたんです。

嫌だ、助けて欲しいということを周りに伝えられて、他の人と違う生き方を選択できる息子のことを、私はスゴイと尊敬していて、サポートしながら大切なことを教わっていると思っています。

これからの時代は、自分の本当の気持ちを大切にして生きていかないと生きづらくなってくるとよく聞きます。

私にとって息子は、最先端の生き方を教えてくれた先生のような存在です。」

――気持ちが焦ってしまって、おおらかに子どもを見守ることができないというお母さんにアドバイスありますか?

「自分に厳しいお母さんほど、子どもにも厳しいなとは感じていて、“こうでなければならない”という思い込みが強いような気がしています。

私の場合は、息子をサポートする中で自分の中の思い込みをひたすら外していきました。

厳しい言い方かもしれないけれど、私は子どもが不登校になった時点でお母さんは『今までの生き方を変えなさい』と言われているんだと思います。

“お母さん、そういう生き方じゃなくていいんだよ”という子どもからのメッセージなんじゃないかって。

『そういう生き方じゃなくていい』とは、がんばり方を間違えているよね、という意味です。自分に厳しくするのではなく、自分の心の声を聞いたり、人に自分の気持ちを伝える、イヤだと思ったことをやらない、人の枠じゃなくて自分の枠で生きるという感じでしょうか。

お母さん自身が思い込みを手放しながら自分の生き方を変えていかないと、道が開けていかないと思います。

だって、学校へ行くことが当たり前だと思い込みながら学校へ行くことができない子どものサポートをするのって心が折れそうになるし、その思いを子どもにぶつければぶつけるほど、子どもと心の距離が離れていくことになるので。

私は息子が不登校になったことで前より幸せになりました

母としての自分ではなく1人の人間としてどう在りたいのか?ということに向き合って、「~でなけばいけない」という思い込みがとれていったからだと思います。

私が自分の気持ちを伝えることをし始めたら、周りの家族も不思議なぐらい変化して、サポートしてくれるようになりました。

お母さんが自分の気持ちを大切にして自分の人生を生きることで、子どもの気持ちも自然に思いやれるようになるし、子どもも自分の人生を生きることができるようになると思います。」

――お母さんが自分を大切にすることが、子どもの気持ちを理解することに繋がっているんですね。貴重なお話ありがとうございました。

4.子どもを信じ、お母さんも自分の人生を生きよう!

愛子さんのお話、いかがでしたか?

息子さんは自分に合う居場所が見つかり、中学校にも学校と連携しながら環境を調整した上でこれから通う予定だそうです。

お話を伺っていて、愛子さんが息子さんのことを信じてサポートし続けた結果が、これからどんどん花開いていくのだろうなという予感がしました。

敏感な子や発達の特性を持っている子にとって、お母さんが自分の感覚を理解しようとしてくれているということが、まずは救いになると思います。

自分にはその感覚がわからなくても、「この子はどんな気持ちでいるんだろう?」と思いを馳せること。そして実際に調べたり、人に話を聞いたり、学んでいこうとする姿勢が大切ではないでしょうか?

また愛子さんは、不登校は子どもがくれたメッセージだと感じ、子どもが出すサインに耳を傾けながら自分の心と向き合ってこられました。

お母さんが“こうあるべき”にとらわれて自分の気持ちに蓋をしてしまっていると、子どもからのサインになかなか気づいてあげられなかったり、気づいたとしても自分の理想を押し付けてしまいがちです。

子どもが学校に行けないときや他の子と同じ行動ができないときは、「どうしたらこの子の問題は解決するのだろう?」と子どもに意識が集中して、お母さんの力が入り過ぎてしまうことがあると思います。

でも、そこで力をフッとゆるめて、子どもではなく自分の気持ちに目を向けてみませんか?

お母さんが自分らしく人生を生きられた時、お子さんとの心の距離もきっと自然に近づいてくるのだと思います。

ー井上愛子さんプロフィールー

人より敏感な気質をもちながら生きてきた自分自身の経験から、HSPや場面緘黙症の人をサポートする活動をされています。
ブログ:「自分の殻を破りたい人の為に送る言葉たち~HSP&場面緘黙症サポーターaiko
現在は、重度の産後うつの経験から産前産後・育児中のお母さんをサポートする『産前産後プロジェクト』を立ち上げ、同じ思いのお母さんたちと活動中。

執筆者:滝麻里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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