ほぼ白紙のテスト…言葉にできない不安と親の焦り
私の生徒さんNさんには、小学2年生の息子さんがいます。
Nさんが悩んでいたのは、息子さんの「文字を書くこと」でした。
小学1年生でひらがなは覚えたものの、漢字もなんとか書いていたのですが、2年生になると、ほとんど覚えなくなりました。
漢字テストで書けるのは、1〜2文字ほど。
学校のノートもほぼ白紙。
課題も白紙で出しているようでした。
できないことがあること自体は、仕方がない。
Nさんが苦しかったのは、その先でした。
「ノートを書かないまま授業を受けていて、しんどくないのかな」
「テストのたびに『全然漢字が分からない』って感じていたら、学校にいる時間そのものがつらいんじゃないかな」さらに心配だったのは、息子さんが得意な算数でした。
文字が読めなければ、いずれ問題文を読むことにも困るかもしれない。
「息子の得意は残してあげたいのに。」できない漢字だけではなく、その先にある息子さんの学校生活まで心配になっていました。

小さな希望「練習させなきゃ」と焦る私が、その手を止めた理由
「漢字は練習しなければ、できるようにならないもの」と思っていました。
もし以前の自分だったら、「とにかくドリルをやらせていたと思います。」と振り返ります。
できないなら、練習する。
苦手なら、できるまで取り組ませる。
わが子のためを思えばこその選択でした。
けれど息子さんは、できないと思ったことにはなかなか挑戦しません。
「もう嫌だ」
「やらない」 一度そう決めると、文字からますます離れていきました。
そんな中、Nさんの見方を変える言葉との出会いがありました。
「できるようになる未来が見えないと、子どもは練習をしない」
その言葉を聞いたとき、「この子は、自分ができるようになると思えていないんだ」と気づいたのです。
だったら今必要なのは、苦手な漢字をもっと練習させることではないのかもしれない。
「僕にも書ける」まずは、そんな実感を息子さんの中に増やしていこう。
Nさんの見る場所が、少しずつ変わり始めました。

「頑張ってほしい」と思ってかけているその言葉、
今のわが子に合っているでしょうか?
「ママの声かけタイプ診断」
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「直す」のをやめて、「できた1文字」に花丸を
Nさんが始めたのは、とても小さなことでした。
息子さんが持ち帰った漢字の宿題を見て、少しでもいいところを探す。
そして、「ここ、いいね」「この“はね”、いいね」と声をかけ、小さな花丸をつけました。
一つだけではありません。
小さな花丸で、ノートをいっぱいにしました。
「ここが書けていない」ではなく、書けた文字を見つけて褒めました。
苦手をなくすことを急ぐのではなく、「ここはできたね」を一つずつ増やしていったのです。
そんな毎日を続けていたある日。
息子さんから、思いがけない言葉が出ました。
「ポケモンの漢字ドリルが欲しい」大好きな算数ではなく、漢字。
Nさんは驚きました。
「文字への抵抗が少し薄れてきたのかな」ここで、いきなり今習っている2年生の漢字をやらせることはしませんでした。
書けない問題ばかりになれば、せっかく芽生えた自信を失ってしまうかもしれない。
そこで、2年生の漢字ドリルと一緒に、ひらがな、カタカナ、そして1年生の漢字ドリルも用意しました。
息子さんは、スラスラ書ける1年生の漢字からスタート。
「バトルクリア!」大好きなポケモンのドリルを楽しみながら、書き進めました。
気づけば、毎日自分からドリルに向かうようになっていました。
「僕にもできる!」小さな自信が引き寄せた親子の変化
変化は、家の中だけではありませんでした。
これまでほぼ白紙だった学校のノートに、少しずつ文字が書かれるようになりました。
そして、ある日。
息子さんが持ち帰った漢字テストを見ると、80点。
Nさんは驚きました。
「何か配慮してもらったのかな?」
「今回だけかもしれない」そう思ったほどでした。
けれど、その後も同じくらいの点数を取ってくるようになりました。
何より大きかったのは、80点という数字ではありません。
文字を避けていた息子さんが、「自分も書ける」という気持ちで、文字を見るようになったことでした。
Nさんはこう感じています。
「点数よりも、この子の中で『自分は練習すればできる』という、自分への信頼が育ったことがうれしかった」
「できないからやらない」だった文字が、「やったらできるかもしれない」に変わっていったのです。
変わったのは、息子さんだけではありません。
以前のNさんは、苦手なことを見つけるたびに、「ここも何とかしなきゃ」「次はこれもできるようにしなきゃ」と、一つひとつ対策を考えていました。
けれど今は、できないことを全部直そうとするのではなく「今、この子に一番必要なのは何だろう?」と考えられるようになりました。
今できないことがあっても、焦らなくていい。
「この子は、これからもっと育っていく」そう思えるようになったことで、Nさん自身にも余裕が生まれました。
今見えている「できない姿」だけが、この子の未来ではない。
息子さんの小さな「できた」を見つけ続けたことで、ママ自身も、わが子のこれからを信じられるようになったのです。

まとめ
漢字が苦手なわが子を見ると、「もっと練習させなきゃ」「できないところを教えなきゃ」と焦ってしまうことがあります。
Nさんも以前は、漢字は練習しなければできるようにならないと思っていました。
けれど、息子さんに必要だったのは、苦手を一つずつ直すことよりも、「僕にもできる」と思える経験を重ねることでした。
書けた一文字を褒める。
できているところに花丸をつける。
そんな小さな「できた」が、自分から漢字に向かう力へとつながっていきました。
もし今、わが子の苦手なことが目について、「ここも直さなきゃ」と思ったら、直すことを一つ増やすのではなく、その中にある「もうできていること」を一つ見つけて、言葉にして伝えてみませんか。
その一つが、「僕にもできる」と、子どもが自分を信じる始まりになるかもしれません。
明日も素敵な「小さなできた」に出会えますように。
執筆者:桜井 ともこ
(Nicotto Project 発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)


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