思春期のお子さんがなぜ今までの子育てではうまくいかなくなるのか
これまで幼いころからお子さんと二人三脚で歩んできた発達障害の子どものお母さん。
子どもに寄り添って手取り足取りサポートされてきた方も多いと思います。
しかし、子どもが思春期になり、お子さんとの関係やサポートもこのままでいいのかな、と感じていらっしゃいませんか?
私の息子は発達障害・注意欠陥多動障害(ADHD)の傾向がある子で、私は幼いころから息子のサポートをしっかりやってきました。
ですが、息子が中学生のころ、このままではいけないと感じる出来事があったのです。
ADHDの息子が思春期になり、子どもとの親子関係やサポートを見直す時期に来た私の経験をお伝えしてます^ ^
次項では、どうして思春期になると親との関係性が変わってくるのかについてお伝えします。
なぜ思春期には親との関係が変わるのか
人間の子どもは、生まれてすぐは一人で歩くこともできず、お母さんにお世話をしてもらいながらだんだんと成長していきます。
0〜3歳ぐらいまでは、身の回りのほとんど全ての世話をしてもらいながら、お母さんに依存して生きています。
3歳ぐらいからは、だんだんと外とのつながりが広がっていきますが、幼稚園や小学校に上がっても、まだまだお母さんとスキンシップをしながら、愛情を体で確かめながら育っていきます。
この時期は親の方も、子どもが肌を寄せて愛情を求めてくれることを嬉しく思いながら、たっぷりと愛情を注いで育てていきます。
つまりここまでは、依存的に、またはぴったり寄り添って、親が子に愛情を注いで、子どももその愛を一心に受け取っていくという時期になります。
しかし、小学校高学年になってくると、急に雲行きが変わってきます。
スキンシップや自分のことに口を出されることを極端に嫌がるようになり、親に反抗的な態度を取る子も出てきます。いわゆる「思春期」の始まりです。
思春期になると、子どもの気持ちは急激に変化していきます。
思春期は小学校の高学年から第二次性徴と共に訪れます。
このあたりから大人へ向かって脳と体が大きく変化するからなのです。
この時期、性ホルモンが急激に増えて特に感情をコントロールする脳部位で活発に働きます。
そのため感情が不安定になることが多いのです。
またこの時期の子どもたちは、自意識を持ち始め、自分自身に意識が向いて他人の目を気にしたり、劣等感を持ったりします。
家族より友達を優先する気持ちも出てきます。だんだんと家族からの影響より友達からの影響が大きくなってくるのです。
家族よりも友達と過ごすことが中学生の子どもにとって一番楽しいこと。
少し寂しく感じるかもしれませんが、これが子どもの成長なのです。
このように、子どもは思春期には劇的に変化成長しているにもかかわらず、親は子どもが生まれてからずっと一身に愛情を注いできたため、子どもの変化になかなか対応することができません。
子どもが「それはもういらない」と思っていても、親のほうが余計なお世話をしてしまう。
つまり、子どもが思春期を迎えると、子どもの求める愛と親が与える愛情にズレが生じてしまい、親子関係がうまくいかないということが起こってくるのです。
特に気を付けなくてはいけない発達障害・ADHD傾向の子との関係
ADHD傾向の子は、不注意の特性があります。
ADHDの不注意特性のために小学校に上がると、忘れ物が多い、プリントや宿題の管理が一人でできないなど、何かと親がサポートをしなくてはいけないことがたくさん出てきますね。
一人では頑張れないこともたくさんあるので、日々の母親のサポートは必要不可欠です。
我が家でもそうでした。
私は、ADHD傾向の息子とずっと一緒に時間割を揃え、宿題を確認し、次の日の持ち物を揃えていたのです。
ADHDの不注意は脳の特性なので、本人の努力だけではどうにもなりません。
私も、本人にわかりやすいように毎日の持ち物を大きく書き出した表を作るなど工夫しながら、息子が一人でできるようにサポートをしていました。
しかし、いつになっても息子は、
「お母さん、あのプリントどこにやった?」
「数学の教科書どこ?」
と全く自分でできていく気配がないのです。
学校でミスの多い息子が心配だった私は、これも彼の特性なんだと受け止め、マイナスに響かないようにとずっと一緒に取り組んで頑張ってきました。
それは中学生になっても続きました。
あるとき、配られていたテスト範囲の変更がありました。
授業中に口頭で伝えられていたのにもかかわらず、全く聞いていない息子は、私の計画通りにやり続け、無残な結果になってしまうということが起こりました。
そのとき息子は私にこう言ったのです。
「だってお母さん、言わなかったじゃん」
そのとき、私はやっとこのままではいけないと気がつきました。
私はいつまでもこの子のサポートを完璧にしてあげられるわけではない。
これからは、 この子が「自分でなんとかしてやっていく力をつけなくてはいけない」と痛感しました。
思春期になっても直接的なサポートをずっと続けてしまい、本人が自分でやれるようになるチャンスを奪ってしまっていたのです。
息子がミスしないようにと思うばかりに、彼が自分の頭を使って考えなくてはいけないことまで、先回りして代わりに考えてしまっていたのです。
サポート自体は、子どもの自信を失わせないように、失敗の多いADHD傾向の子どもを育てる際に絶対に必要なものです。
しかし、思春期以降は、サポートのやり方を変えていかない限り、「本人が自分の力を発揮すること」ができないと気づきました。
発達障害ADHDの思春期以降の失敗は成長のチャンス!
お母さんが思春期以降の子育てで大事にしていただきたいのは
「子どもが失敗する機会を奪わないこと」です。
子どもが思春期になると、反抗期も始まり親子の関係性がガラッと変わっていきます。
思春期になってからの子育ては、今までの「ぴたりと隣に寄り添う愛」から、「一歩離れて見守る」というスタイルに変わっていきます。
しかし、特性のために日々サポートすることが当たり前になっていると、親はこれまでのサポートのやり方を変えていくことが後手になってしまいます。
「できるようになったことから少しずつ手を離していこう」と思っていると、いつまでたってもなかなか手を離すことはできません。
つまり、思春期からは、親が覚悟を決めて子どもから手を引き、「子どもが失敗しながら、自ら学ぶ」というスタンスに変えていかなくてはいけません。
「失敗することを恐れず、本人に任せていく」ということが必要になります。
失敗は子どもにとっても、失敗から学びを得て、ぐっと成長するチャンスでもあるのです。
親の先回りでその成長のチャンスを奪わないでほしいのです。
息子の成長~思春期以降の子育てスタイルとは?~
私はこれまでやってきたような息子への先回りをやめて、本人のことは本人に任せるようにしました。
2020年にはコロナ休校がありましたが、息子は休校中の課題を、今日はどれをやろうかと自分で考えながら、頑張ってやってやりました。
まだ少しサポートしたところもありましたが、それでもほぼ全てを自分で考え、自分でやりきりました。
私が、彼に色々なことを任せたところ、わからないことがあると自分から質問をしてくるようになりました。
そんなときも、答えをすぐ言うのではなく、「どうだと思う?」「分からないときはどうする?」と彼が「自分で考えるきっかけ」をあげて、本人に考えさせるようにしていきました。
思春期以降の子育ては、「本人がやっていることを、後ろからそっと見守る」というスタイルに移行していきます。
これが子どもが自立への第一歩となります。
発達障害・ADHD傾向のお子さんのサポートも、できるようになったから手を離すのではなく、
「できていなくてもやらせてみる」
「親がしっかり手を離して、見守る」
というスタンスに移行していく必要があります。
本人が自分の力を自分で発揮していくためにも、「本人のことは本人にしっかり任せて、自分で考えさせる」という習慣を作ってあげましょう。
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執筆者:桜井ともこ
(発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)