発達でこぼこの子どもが保育園の行事の練習や参加を嫌がっていることもあると思います。1年前には発表会に参加できなかった子が保育園と家庭での対応を変えることで、素晴らしいパフォーマンスを発揮することができました。その方法を紹介します。
【目次】
1.行事が嫌、というお子さんのことで困っていませんか?
2.年中の時に「今年は劇に出ない」と宣言していた息子
3.行事は発達でこぼこがある子にとっては大変なもの
4.対話の仕方を変えたら息子は伸びました!
①嫌!といえるのは才能!どうすればできるか一緒に考えよう!
②スモールステップとこまめな休憩
1.行事が嫌、というお子さんのことで困っていませんか?
入学式、始業式が終わったと思ったらすぐに運動会の練習、と行事が目白押しのシーズン。
多くのお母さん、お子さんたちは、ワクワクドキドキ、かもしれません。
そんな中で、
練習が始まりだしてから機嫌が悪くなってきているお子さん、
夕食食べながら寝てしまうほど疲労をためているお子さん、
「練習をやりたくない」「本番はお休みしたい」とこぼしているお子さん
も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
親としては、行事の練習を通して、お子さんを大きく成長させてあげたいもの。
そして、お子さんの晴れ舞台で頑張る、かっこいい姿を本番で見たいもの。
それなのに、親のそんな理想とかけ離れて、行事のための練習で疲れている、嫌がっている姿は、親としてもすごくつらいものですよね。
お子さんがこういう状況になっているとき、どうやって対応してあげればいいでしょうか?
2.年中の時に「今年は劇に出ない」と宣言していた息子
現在小学1年になる私の息子は、年中さんの時に「恥ずかしいから今年は劇に出ない」と宣言しました。
息子は自閉症ですが、療育通所と発達科学コミュニケーションでの学びの実践により、非常に息子は大きな成長をとげていたタイミングでした。
しかも、元々行事が苦手だったわけではありません。
年少のときは、劇では自分の役をとても楽しんで、セリフも大きな声で堂々と言えていたんです。
息子の変化がショックで、どうしてそんなことになるのだろう?と辛い時間を過ごしていました。
3.行事は発達でこぼこがある子にとっては大変なもの
音楽会にしても、学習発表会にしても、卒園式にしても、行事は発達でこぼこのある子どもにとっては、大変なことです。
いつもと違うこと、列に並ぶこと、指示に従うことが苦手な子にとっては、多くの新しいことを覚えて挑戦する、行事の練習が苦痛になることが多いのです。
できない、わからない、がいつも以上に増えて自信を行事を通して失っていくこともあります。
そして、練習にきちんと参加できていないという子であっても、決してさぼっている、楽しているわけではありません。
息子の場合、「劇には出ない!」宣言の通り、劇の練習に参加できず、一人でお絵描きなどして遊んですごさせてもらう日が続きました。
そんな毎日でも帰宅するとひどく疲れた様子で、トイレに行く回数は異様に多く、夕食を食べずに寝ることすらありました。
練習してないのだから疲れていない、ではないんです!
参加ができない状態というのはかなり疲れた状態で、頑張れと言われても頑張れる状態ではないのです。
普通にみんなと同じように参加するのは難しい。
ですが、息子ならではの行事への向き合い方を見つけることで、息子は大きく成長し、行事も素晴らしいものとなりました。
そのストーリーを皆さんにご紹介しますね。
4.対話の仕方を変えたら息子は伸びました!
1年前の年中時は、理由ははっきりしないものの、劇に参加しないという意思は非常にかたく、大道具の手伝いのみで参加としました。
しかし、本番を終えた息子は、どこか後悔もしている様子もありました。
行事は絶対にやり遂げなくてはいけないことではないけれど、来年までに本人の満足できる形は探し出そう、と決意していました。
年長になった年は、以下の工夫で運動会、劇、音楽会に最後まで参加ができただけでなく、本人がほかの子と一緒にかなり楽しむことができるようになりました。
そのポイントを紹介します。
◆①嫌と言えるのは才能!どうすればできるか一緒に考えよう!
年中だった1年半前に「劇には参加しない」と決め込んでフル参加しなかった息子。
療育で一緒のママから、「本人の意思で参加しない、と言えるってすごいことだよ。」と指摘されました。
劇の練習に参加できなくなっているということに日々落ち込んでいた私にとって驚きの言葉でした。
そうか、「嫌だから参加しません」と言えるって才能なんだ、と気づきました。
それならそれを生かさないのはもったいない!と切り替えました。
家庭でも保育園でも、日々の活動に関して、嫌だという気持ちはしっかり聞いて受け止めて、気持ちが落ち着いてきたらどうしたいのかをじっくり聞いていく、ということを繰り返していきました。
まわりの大人の人が「安心して嫌だと言ったりこうしたいといっても大丈夫」と思える下地を日々作っていきました。
こうして、息子のコミュニケーション能力、大人の人に意見を言う能力は磨かれていきました。
年長時は、劇の演目が発表されたときには、「何かの役をやることは恥ずかしいから無理、でもナレーションとハンドベル演奏ならやってみたい」と自分から劇を作り上げる提案をしてきたのです。
◆②スモールステップとこまめな休憩
行事における課題を、挑戦しがいはある、けれども難しすぎない、というレベルに設定してあげましょう。
難しすぎて投げ出して全部やらない、となることだけはなるべく避けられるといいですね。
息子はやり進めていくうちに、セリフの少ない役どころをいくつか「これならやってみたい」「これならできる」と申し出たようで、少しずつセリフは先生と息子自身で相談しながら増やしていきました。
本番の演技量やセリフ量はほかの子たちと変わらない量をこなせていました。
そして難しいことに挑戦するのは疲れることなので、こまめに休憩を入れてもらうようにお願いしましょう。
練習期間は、集中力が切れる前に休憩したり、行事と関係ない気楽な遊びを挟んでくださるなどの配慮もしてくださっていました。
家ではとにかく、頑張っていることを褒めて、しっかり睡眠をとらせて疲れをとるようにしてあげていました。
ほかの園児たちも、自分のやりたいことを提案しながら劇を作り上げていっていたようで、皆、とても生き生きと演じていて、素晴らしいものでした。
なにより、行事や保育園での活動を通して、大人と交渉する能力がついたことがうれしいことでした。
「これならできる、これはできない」「こうしたらもっとよくなる」と、ヤダヤダというだけでなく、建設的に提案までできるようになりました。
息子は、人の輪を乱す迷惑な子ではなく、皆が自分の意見を言いやすくしていく、ムードメーカーのような存在にと変わっていったのです。
行事において、先生の指示に完璧に従えて、皆の輪を乱さないという子、そういう子はそういう子で必要な大事な人材。
ですが、息子のように発達でこぼこがあり、一斉指示に従えなくても「これは嫌だ、でもこうしたい」という思いが強くある人間も世の中を面白くしてくれる貴重な人材になることは間違いありません。
発達のでこぼこによる、行事参加のむずかしさがあっても、こうやって面白い子に育っていくことがある、そんな一例として参考にしていただければ幸いです。
発達障害凸凹キッズの子育でのヒントをお伝えしています
執筆者:いぬいまき
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)