小学校入学まで残すところ約3カ月。自閉症スペクトラム・ADHDのある年長さんママは「本当に小学校は普通学級で大丈夫?」と不安になっていませんか?発達障害・グレーゾーン子どもが普通学級でうまくいくために必要なのが、居場所づくりとママの子育て軸。今回は先輩ママにお話を伺いました。 |
【目次】
1.自閉症スペクトラム・ADHDのうちの子、本当に小学校は普通学級で大丈夫?」と不安のある年長さんママへ、先輩ママが語ります
2.普通学級になじめない子の居場所づくり~通級の利用~
3. 発達障害の子どもが学校で安心して過ごせる対応
1.自閉症スペクトラム・ADHDのうちの子、本当に小学校は普通学級で大丈夫?」と不安のある年長さんママへ、先輩ママが語ります
発達が気になるお子さんをお持ちのお母さんは、小学校生活にたくさんの不安を抱えていますよね。
特に自閉症スペクトラムと注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害のある年長さんのお母さんの不安は人一倍大きいと思います。
就学相談で普通学級相当と判定されても、心配事がきれいになくなったわけではないですよね。
この子はこんな困りごとがあるし…
先生は配慮してくれるかな?
どこまでお願いできるのかな?
お友達とうまくやれるのかな?
本当に小学校で普通学級でやっていけるのかな?
こんな風に、不安になっていませんか?
これ、2年前の私です。
私の息子は発達障害・自閉症スペクトラムの2年生。ちょうど一昨年の今頃、「本当に普通学級で大丈夫なのか疑惑」に押しつぶされそうになっていました。
そんな「うちの子、本当に普通学級で大丈夫?」と不安な発達障害のある年長さんのお母さん、必読!
現在4年生で就学相談を受けた息子さんをお持ちのお母さんに、小学校入学後どんな困りごとが起こり、どう解決したのかについて、インタビューさせていただきました。
ぜひ、お子さんの小学校生活をイメージしながら読み進めてくださいね。
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発達科学ラボ・こじまあつこさんの息子さんは小学校4年生。幼稚園の頃から療育に通い、6歳のときに自閉症スペクトラムと注意欠陥多動性障害(ADHD)の診断がおりました。
就学相談を経て、通常級(通常学級・普通学級)と通級で小学校生活をスタートさせた息子さん。小学校入学後にどんな困りごとがあったのか、どんな対応をしたのかについてお話を伺いました。
―ー入学してからのお子さんの様子について教えてください。
「入学前に特に心配していたのは、偏食と集団行動についていけるか、ということです。でも、1学期は比較的スムーズだったと思います。
偏食がひどくて、繊維質のものや初めての食材は食べられなくて心配でした。野菜はほとんどダメ、お肉もミンチ以外はダメで、食べさせると吐き出してしまうんです。給食は厳しいだろうと思っていました。
気持ちの切り替えも苦手なので、体育で着替えたり、教室を移動したりするのが苦手でした。体育に参加できなくて特定の友だちと追いかけっこしたり、教室移動ができなくて、教室や廊下に残ったり、ということもありました。
特に2学期からは大変で、特定のお友だちとトラブルが増えて行きしぶりになってしまいました。
1学期はお互いにちょっかいを出し合って楽しく遊べていたのですが、2学期に入ってその子が泣いてしまうようになってしまったそうです。
息子は言葉がゆっくりなので、別の子に責められてしまうと言い返せずに手が出てしまって、トラブルがどんどん大きくなる、ということが多くなってしまったようです。
その特定のお友だち以外の子とは目立ったトラブルはありませんでしたが、かといってなじめている、というわけでもありませんでした。
また、緊張とストレスが大きくなると「イヤだ―!」と泣き叫んだり、トイレを失敗してしまったりすることもありました。泣き叫ぶと周りからうるさい!と言われてしまって。
トイレの失敗は自分から先生に助けを求められず、そのまま帰宅したり、先生に気づいてもらったり…ということが何回かありました。
就学相談では、言葉で説明することが苦手、緊張感や不安感の強さ、こだわりの強さを指摘されていましたが、そのまま入学後の課題として出てきました。」
◆ポイント解説
入学後にどんな課題が出てくるか知って事前に対応を考えたり、お母さんが心の準備をしたりするためにも、就学相談は有効な手立てです。
こじまさんの息子さんは1学期は比較的スムーズに過ごせていたものの、2学期からは困りごとが増えたとのこと。入学後、「意外とうまくいってるな!」と思っても油断は禁物です。
2学期に入ると、ほとんどの子は学校生活に慣れてきます。先生方も「もう2学期だから○○できるように頑張ろう!」「もう2年生になるんだからね!」という姿勢に変化します。
発達障害・グレーゾーンのお子さんの困りごとが悪目立ちして、学校生活がしんどくなってしまう可能性大!
そのような状況にどんな風に対応したらいいか、お話を聞きました。
2.普通学級でなじめない子の居場所づくり~通級の利用~
―ー通常級ではさまざまなトラブルがあったんですね。通級ではどんな様子でしたか?
「現在、週1回の1コマ通級を利用しています。通級は言葉の教室と情緒の教室の2種類あるのですが、息子は情緒の教室の方に通っています。
年齢の近い子と少人数で係決めや発表の分担など、学校生活の練習をしています。通常級で課題になっていることやトラブルなども伝えているので、息子に合ったかかわりをしていただいています。
通常級ではなかなかひとりひとりに合ったフォローは難しいので、通級でその部分をフォローしていただいています。
通級の先生とは毎回送迎のたびに会うので、通常級での様子・通級での様子を話しています。担任の先生以外の先生に学校のことを相談できるので、また違ったアドバイスをもらえることもあります。
本人も甘えが出るのか、『ここではやらなくていい』という気持ちなのか、参加できないことも多々ありましたが、あまり厳しい指導はされていないようです。
なによりも本人がリラックスできる居場所になっているようでよかったです。」
―通級に通うことで、息子さんの居場所になったんですね!一方で、通級でも大変なことがあるかと思いますが、いかがですか?
「授業を抜けて通級に行きますが、授業中にやった課題は家庭でやって提出するようにしています。今のところ、特別勉強が遅れるということはありません。
通級が別の学校になるので、私もお迎えに行くのですが、みんなお見送りしてくれます。
ただ、息子が通級に行っている間待機しなければならないので時間的な拘束はあります。最初の頃はまだ下の子が保育園に入っていなかったので、下の子を2人連れて行っていって…それが一番大変でした。」
◆ポイント解説
教室になかなかなじめなかったり、集団行動できない場面があったりする場合、通級ではその子に合った指導が受けられるだけでなく、居場所としても活用できそうです。
通級に関しては、こじまさんのように就学相談と同時に利用が決まることもあれば、入学後に申請するケースなど自治体によって違うようです。
また、通級は授業の内容や通う頻度が異なります。どんな支援が受けられるのか、必ず見学に行ってから利用を決めてください。こじまさんのように通級が別の学校にあるケースだと、送り迎えの負担も発生します。
通級は普通学級で頑張るお子さんの味方になってくれそうですが、まずは指導内容を確認したり、実際に見学に行ったりすることが大切です。
―通級が違う学校ということですが、通常級の先生と通級の先生はどのように連携されているのでしょうか?
「基本的には直接的な交流はほぼないと思います。通級では、半年ごとに保護者から聞き取りをして支援計画を作っているのですが、その計画を普通学級の先生も目を通すぐらいだと思います。
あとは、通級の先生が年に2回普通級の様子を見に来てくれます。
反対に、普通学級の先生が通級に見学に行くというのもあるのですが、実際に見学に行くとなるとクラスをあけてこないといけないのでなかなか難しいと思います。」
◆ポイント解説
通級が他の学校になる場合、保護者に送迎の負担があるだけでなく、先生同士も気軽に交流することが難しくなります。お母さんを通して情報交換できるように、お母さんが両者の間に立つことが必要になります。
通級をどのように利用するのか?
通級で学んだことを普通級にどう生かすのか?
お母さんが通級での学びをどう担任の先生に伝えていくか?
など、通級を利用できればそれでいいというわけではないことに注意が必要です。
3.発達障害の子どもが安心して学校で過ごせる対応
―通常級でのトラブルはどう対応しましたか?
「一番大きな問題だったお友だちとのトラブルですが、2学期以降は補助の先生が2人の間に張り付いている状態で、2年生にあがるときにクラスを分けていただきました。
トラブルがひどかったときは行きしぶりをしていて、私が登校に付き添ったり、迎えに行ったりしていました。結果的にクラスが離れて距離ができたことでトラブルが解消して、今は1人で登校できています。
給食に関しては、初めての家庭訪問のときに無理に食べさせないようにお願いしました。食事前に減らしてもらっていますが、どれも食べられなくてごはんと牛乳だけ、という日もあります。
息子も『今日も食べられるものがなかった~』と帰ってきますが、無理に食べさせて学校がイヤになるぐらいなら食べなくて帰ってきてくれていいと思っています。
体育も同じです。無理強いして学校を嫌いになるぐらいなら参加できないならできなくていい、と割り切って先生にその旨を伝えました。
『体育がイヤなら参加しなくていい、着替えたくないならそのままでいい、でも先生と一緒に移動して先生が見える範囲にいる』というルールでいいですか?とお願いしたんです。
先生にOKをいただいてから息子にも話しました。『教室には残らない、その場からも離れない』ということだけルールにしました。2年生になってから少しずつ参加できることが増えたようです。
担任の先生はもともと支援級にいらっしゃった先生なので、理解があって助かっています。
パニックのときも別室でクールダウンさせてくださっています。
通級に通うことで直接的な変化は感じませんが、通級の先生が根気よくその時に合った本人の課題を見つけてくれます。
前まではできなかったことができるようになった成長を丁寧に細かく伝えてくれるので、少なからず通常級で生きているのではないかと思います。」
◆ポイント解説
発達障害やグレーゾーンの子どもの学校での困りごとはさまざま。でも学校には学校のルールがあり、対応してもらえるかどうかは聞いてみないと分かりません。
特に普通学級では、担任の先生に理解があるかどうか、他の生徒さんとの兼ね合いも関係します。
こじまさんは対応を具体的に考えてから先生に相談される、というパターンでした。このスタイルであれば、一番子どものことをよく知るお母さんが、一番子どもに無理のない対応を提案することができます!
こじまさんは
「給食を無理に食べさせて学校が嫌いになるぐらいなら食べなくていい!」
「体育や着替えで学校がイヤになるぐらいならやらなくていい!」
とおっしゃっていましたが、まさにその通り!
学校がつらいことを無理強いされる場所にならないように対応することがポイントです。
子どもがつらいと分かっているのに強制されると、学校がイヤになるだけではなく、強制する先生もお母さんもイヤになってしまいます。
特に1年生の最初が肝心!子どもが「学校は安心して楽しく生活できる場所だ」と思えるように対応することが必要です。
そして、友だちと同じようにできないということに対して、子どもが罪悪感を抱かないようにすることも大切です。
子どもが罪悪感を持ってしまえば、お母さんに事情を言いづらくなって学校での様子が正確に把握できないだけでなく、親子の信頼関係にも悪影響です。
対応に迷ったら、「どうすれば子どもは学校で楽しく生活できるかな?」と考えてみてください。
「うちの子、本当に普通学級で大丈夫?」と心配なお母さん、いかがでしたか?
私はこじまさんのお話を伺って、入学前の今だからこそ「問題が起こったらどうするか?」をイメージしておくことが大事だと思いました。
こじまさんの場合、課題への対応法は一貫して、「子どもを学校嫌いにさせないこと」。
これがこじまさんの子育て軸なんですね。軸があるから、対応に迷わずに進めてこられたことが分かりました。
今のお子さんの様子から、「小学校生活でこんな課題がありそうだな」と予測することはもちろん大切です。
でも、実際には課題として表面化しないかもしれませんし、全く別の課題が出てくる可能性も大いにあります。
個別の課題にどう対応するかよりも、「子どもにどんな学校生活を送ってほしいのか」という軸を持って、入学に備えましょう!
次回はこじまさんの今後の心配ごとや、年長さんのお母さんへのメッセージをお送りします。
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執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)