タブレットがないとイライラしてしまう発達障害の思春期女子にどう接すればいいか悩んでいませんか。怒りっぽい子がデジタルの使い方のルールを決めて家族との会話を取り戻し、卒業・入学をスムーズに乗り切った経験から、対応のコツをお伝えします。
【目次】
1.家族と会話しなくなった発達障害・不登校の思春期女子
2.怒りっぽい子が日常生活に支障をきたすまでタブレットに夢中な理由
3.「肯定的な注目」と「気づき」を与えるルール作り
①本人が納得して合意する
②第三者からの褒めで肯定のシャワーを浴びせる
③ルールを決めることの効果に気づいてもらう
4.気持ちを尊重すれば、行動が変わる
1.家族と会話しなくなった発達障害・不登校の思春期女子
ゲームや動画を否定するつもりはないけれど、子どもにはデジタルと上手に付き合ってほしい。
けれど、タブレットがないと怒り出す、日常生活が疎かになるほど夢中になっている子どもに、どう対応したらいいのか分からない。
こんなお悩みはありませんか?
我が家にも、そんな思春期女子がいます。
気持ちのコントロールが苦手、切り替えが苦手。
外ではある程度我慢できても、家ではイライラが止まらない。
集団生活がしんどくなり、今は自治体が運営する不登校の教室に通っています。
そんな彼女の趣味は、イラストを描くこと。
絵を描く目的でクリスマスプレゼントにタブレットを手に入れました。
すると、急速にタブレットにのめり込んでいきました。
・タブレットでイラストを描くこととゲームをする以外には興味関心を示さなくなった。
・部屋にこもり、コミュニケーションを面倒がる。家族が通りかかると画面をさっと隠す。
・次第に登校時刻が遅くなっていく。
・ルールを守れない、制限を破る、タブレットが使えないと怒りだす、ひどい時は暴れる。
ついには中学進学を控えた2月、タブレットの利用制限時間に腹を立て、夜ひとりで家を出ていってしまうというトラブルを起こしてしまいました。
2.怒りっぽい子が日常生活に支障をきたすまでタブレットに夢中な理由
そこで、なぜ彼女はタブレットにのめり込んでしまったのかを考えてみました。
・特性や思春期の特徴で衝動性があり、感情コントロールが苦手。
・卒業、進学、父親の転職など、環境の変化への不安。
・本人が「私はデジタル中毒」と使いすぎを認識している。
・急速な変化に、まわりの大人が否定的な注目を増やしてしまった。
この状況をみて、私は彼女の行動を変えるにはまずまわりの大人が変わらなればならない、と感じました。
本人がタブレットの使いすぎを自覚していることから、彼女はやめるという行動のコントロール機能がうまく働かないために、結果的に長くやってしまうことがうかがえました。
考えてみると、私も落ち込んだりして自信をなくした時、ついダラダラと好きな動画を見続けてしまった経験があります。
自信がなく、やる気が失われると、脳は行動の切り替えがなかなかできないものです。
そして、自信が育つためには、まわりから肯定的に注目されることが欠かせません。
しかし、大人がタブレットの使用時間に注目し続けた結果、自然と否定的な関わりが増え、彼女がデジタルを自分の居場所と感じてのめりこむ要因になってしまいました。
使いすぎを防ぐためには、本人の行動を認めて、肯定していくことが大切だと感じました。
3.「肯定的な注目」と「気づき」を与えるルール作り
とはいえ、現状、タブレットが使えないと暴れるなどするため、使い方については対応策が必要だと考えました。
そこで、医師に相談の上、第三者を交えたルール作りを行うことにし、不登校の教室の先生や保健師さんなどに協力していただきました。
その際に意識したポイントが3つあります。
◆①本人が納得して合意する
まずは否定せず彼女の気持ちを聞き出します。
その上で、中高生のデジタルトラブルについて解説し、あなたを守るために一緒にルール作りをしたいという意図を伝えました。
事前にルール案を準備しておき、本人の意見を聞いて、落としどころを探ります。ペナルティを提案し、ルールが守れない場合は必ず実施することを伝えました。
◆②第三者からの褒めで肯定のシャワーを浴びせる
話し合いの場で描いたイラストを見せてもらい、
「細かいところまですごく丁寧に描いてるね」
と具体的に褒めたり、
「タブレットでどうやって描くの?」
と興味関心を持って質問し、彼女のイラストの実力を皆で認めていきました。
何かと斜に構えがちな思春期女子でも、第三者からのほめは受け取りやすかったようで、嬉しそうに描き方を教えてくれました。
◆③ルールを決めることの効果に気づいてもらう
タブレットに触れていない時間に色々な体験をすることで絵に深みが増し、イラストの上達につながる可能性を伝えました。
ルールを決める=居場所を失うことではなく、得意を伸ばすチャンスにもなると気づいてほしかったからです。
4.気持ちを尊重すれば、行動が変わる
話し合いの結果、提案したルール
・家の外に勝手に持ち出さない。
・夜〇時から朝〇時までは使わない。
・タブレットに〇時間の利用制限をかける。
に本人が納得し、「違反したら〇日ノーデジタルで過ごす」と、自分で決めることができました。
また、ルールを守るだけでなく、どんなアプリにどれだけの時間を使っているかを見える化したデジタル日記も書くことができました。
最も嬉しかったのは、リビングで堂々とタブレットを使い、ゲームの内容や描いたイラストについて話してくれるようになったことです。
他にも、
・「タブレット制限があるから、暇~」と言って、お手伝いをしてくれるようになった
・新たなイラストの描き方にチャレンジして、作風も明るくなった
・卒業式、入学式に落ち着いて参加できた
・ゲームのアップデートをイライラせず待てるようになった
など、本人の気持ちを尊重し、肯定することで、こんなにもたくさんの行動の変化がありました。
発達障害で怒りっぽい子のデジタルの使い方が心配だと思ったら、まずは大人が肯定的に注目をしてみることをお勧めします。
ルールを作るかどうかは別として、本人の気持ちを尊重したコミュニケーションを心がけることが大切だと感じます。
特に、好きなこと・興味のあることを軸に本人を肯定しながら会話を進めることがポイントになると思います。
私自身も、彼女と話すことでゲームやイラストについて色々なことを教わりました。
それに対して、
「知らなかった!教えてくれてありがとう」
と、感謝を伝えて肯定していきました。
まわりの人に肯定されることが本人の自信となり、家族と会話をしたり、デジタル以外に目を向ける時間を作ることにもつながっていきます。
私の体験が、同じように悩まれている方の参考になりましたら幸いです。
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執筆者:山中寧子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)