学童選びに迷ったら〜発達障害・自閉症スペクトラムタイプの女の子の場合〜

 

発達障害・グレーゾーンの子どもの中で、自閉症スペクトラム(ASD)タイプの女の子だと、症状が目立ちにくく、周囲からの理解が得られにくい場合があります。学童生活の困りごとも気づきにくいので、おうちでのコミュニケーションとフォローが大切です。
 

【目次】

 

1.発達障害・自閉症スペクトラム(ASD)タイプの学童選び、どうすればいいの?

 
 
発達科学ラボのリサーチャー・T.Oさんは、自閉症スペクトラム(ASD)タイプのグレーゾーンで、小学校3年生の女の子のお母さんです。
 
 
お子さんは現在、通常級(通常学級・普通級)に在籍しています。
 
 
娘さんの就学前、T.Oさんがどう行動したかについてはこちらの記事をご覧ください。
 
 
T.Oさんは、平日はフルタイムで仕事をされているので、お子さんを学童保育に通わせています。
 
 
現在の学童を選択した経緯や、お子さんが学童でどのように過ごしているか?学童での生活を楽しんでいるのか?などのお話をうかがいました。
 
 

――学童を選ぶ際、どのように情報を集めて選びましたか?

 
 
「娘が年長の時から療育に通っていたので、公営の学童でよいか、コミュニケーションに特化した放課後等デイサービス(放デイ)などを検討した方がよいか、地域で得られる情報はすべて調べ、見学したり職員から聞き取りをしました。
 
民間の学童は近くになく、送迎付きの放デイはありましたが、週に2回のみだったので、フルタイムのワーキングマザーには利用しづらいと感じました。
 
内容やカリキュラム自体は面白そうだっただけに残念です。
 
残るは、公営の学童しか選択肢がありませんでした。
 
娘に発達障害の診断はついていないものの、療育に通っていたことを市に説明しましたが、やはり「公営の学童しかない」と聞き入れてもらえませんでした
 
同じ学校の子が通う学童は、AとBの2つのグループにに分けられていて、フロアも別になっています。
 
娘が通う学校はマンモス校で、学童に通う子もAとBで合計100人以上いて、年々増えているとのことです。」
 
 

――お子さんは学童に楽しく通っていますか?

 
 
「時々不満をこぼしますが、楽しい時もあるようで、無理なく続いています
 
 
娘さんは、学童で時々不満をこぼされてるとのこと。どんな不満でしょうか?また、T.Oさんは娘さんの不満にどのように対応されてるのでしょうか?
 
 

――例えば、どんな不満をこぼされますか?

 
 
「学校でもそうですが、娘は大きな声や大人数でにぎやかな場所が苦手です。
 
学童でも男の子からあだ名で呼ばれる、メガネについてからかわれる…といったことを不満に思ってるようです。
 
3年生からは、女の子同士の人間関係で困ることがあるようですが、話を聞く限りは『3・4年生女子あるあるの範囲かな?』と思っています。
 
娘は特定のグループに属さずマイペースにしているところがありますが、かえって友人関係がこじれずに済んでいるので、良い面でもあるかな、と思っています」
 
 

――娘さんの不満に対してどんな対応をされていますか?

 
 
「娘は不満でも嬉しいことでも、私が帰ってくるや否や玄関に駆け寄って話しはじめます。
 
できるだけ娘の話を聞いてあげています
 
 
◆ ポイント解説
 
公営の学童にも、発達障害・グレーゾーンの子どもが在籍しています。
 
 
自治体に相談すれば、学童でも加配がつくことがありますが、実際につけてもらえるかどうかはケースバイケースです。
 
 
しかし、発達障害の診断がつかず、特性が目立たないタイプのお子さんでも、指導員に相談して特性や必要な対応を伝えておけば、配慮してもらえることもありますよ
 
 
 
 
こちらでも、学童での対応について解説しています。
 
 
また、学童と放デイを併用したり、お母さんの送迎が難しい場合はファミリーサポートを利用するなどの合わせ技で利用されている方も。
 
 
いずれにしても、お母さんとお子さんの無理のない範囲で利用したいですね。
 
 
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2.症状が目立ちにくい子どもの学童生活での不安、おうちでのお母さんとの過ごし方が解消のカギ。

 
 

――学童の指導員の対応で、良い点と気になる点があれば教えてください。

 
 
「体育会系の指導員の先生が、にぎやかな子を叱る時に『静かにしろー!』『コラ!お前!そこで何やってんだ!』という強い言い方なので、娘がショックを受けたことがありました。
 
保育園や学校で『ふわふわことば』『ちくちくことば』という言葉をよく使いますが、娘が『なんで先生がちくちく言葉を言うの?』と言ってきました。
 
どう対応しようか考えて、娘には『大きくなったら、ふわふわ言葉ばかりでは進まない時もあるんだよ』とか『世の中にはちくちく言葉を使う人もいるんだよ』と言うと、娘は『そうなんだ』と納得してくれました。
 
ただ『騒がしいことをしてると、注意したり叱られるんだ』ということは、娘も理解していて救われていると感じる一方で、乱暴な言葉遣いをしないと、騒ぎが収まらないのかな?と疑問に思うこともあります」
 
 

――お子さんは、学童のどの時間(あるいは行事)を気に入ってますか?

 
 
行事の取り組みが多くて楽しんでいるようです。
 
学童のおもちゃではLaQ(ラキュー)パズル遊びが好きで、よく話してくれます。」
 
 

――学童生活で、他に気になることはありますか?

 
 
学童で宿題ができないことです。
 
3年生の娘が、学校が終わって学童に行く時には、学習時間がすでに終わっているので、学童で宿題をやって帰ることができません。
 
学童に通う子の家庭は大抵共働きです。
 
私の場合は、仕事が終わってから下の子どもを保育園に迎えに行き、帰宅するのが午後6時半くらい。
 
それから宿題や夕食などを済ませ、寝るまでが3時間ほどしかありません
 
学童の指導員に、宿題について相談したことがありますが『決められた学習時間以外では、宿題はできません』との回答でした。
 
これは、学童のスタンスによると思います」
 
 

――実際にどれぐらいの時間を、学童で過ごしているのですか?

 
 
「3年生の場合ですが、3時過ぎに学童に行き、冬は4時半までの1時間半、夏は5時までの約2時間を学童で過ごしています
 
 

――家と学校以外の居場所について、今後一番心配なことはありますか?

 
 
「親が過保護なのか、娘が家が好きすぎるのか、小学校3年生になってもお友達だけで遊ぶ経験が少ないのが気になります。
 
4年生から学童がなくなるので、放課後どのように過ごすか心配です」
 
 

――友達とはどれぐらいの頻度で遊びますか?学童から帰ってきてから遊ぶことはありますか?

 
 
「遊ぶ約束をするときは、お互いの親を通じて日時や場所を決めて遊ばせています。
 
子ども同士で日時を決めて約束することがほとんどありません。
 
学童から帰ってきてから遊ぶこともほとんどありません。しいて言えば、土曜日に行われる学童のイベントのような特別な日の後くらいです」
 
 

――4年生以降はどんな選択肢を考えていらっしゃいますか?

 
 
「現在週に1回、学校の後に習い事に行っていますが、4年生になったら回数を増やそうかと思っています。
 
しかし、いきなり環境を変えると娘が混乱するかもしれないので、まだ検討中です。
 
留守番については、お友達を家に呼ばないなどルールを決めてやらせています。
 
今は、娘が学童から帰ってから、私と下の子が帰宅するまでの1時間ほど留守番をしています。
 
4年生以降は、留守番をしてもらう時間が増えますが、基本的に家でテレビを見るのが好きなので、問題はないと思います」
 
 
 
 
◆ ポイント解説
 
T.Oさんは、お子さんが学童での不満があっても、お子さんとコミュニケーションをとって話を聞かれています。
 
また、学童にもいろんなタイプの人がいるということを説明して、お子さんに納得してもらえるようにされてるのも印象的でした。
 
T.Oさんは発達科学コミュニケーションを受講し、お子さんとのコミュニケーションと信頼関係の構築に役立てられています。
 
お子さんとの会話がスムーズにできない、指示が通らないなどのお悩みがある方は、ぜひ個別相談をご活用くださいね。
 
 
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3.年長さんのお母さんに伝えたい、学童をお子さんの居場所にするための心構え

 
 

――居場所づくりに関して、年長さんのママに伝えたいことはありますか?

 
 
「学校や学童が居場所であることを、入学前から繰り返し当然のように伝えておくのもいいと思います。
 
感覚特性などがあり、居づらい場所ならば無理強いすることはないと思いますが、我が子のように、そこが自分の居場所だと思ってくれているのは楽です。
 
2年生以後は授業時間も長くなり、学童で過ごす時間が短くなります。
 
学童で過ごすのがどうしても嫌!という子は無理に行かせる必要はないとも感じます。子どもが馴染んでくれれば使う、という姿勢でよいと思います」
 
 

――ありがとうございました!

 
 
 
 
T.Oさんのお子さんのような、自閉症スペクトラムタイプの女の子は、問題になる行動が目立ちにくく、周囲の人から理解されないことが少なくありません。
 
 
そんな中、T.Oさんはお子さんの特性を理解し、学童を居場所にしてあげるにはどうすれば良いかを常に考えておられました。
 
 
自閉症スペクトラムタイプの女の子は、自分の考えを言葉にするのが苦手です。まずはお母さんがお子さんとコミュニケーションをとって、話をしやすい環境を作ってあげたいですね。
 
 
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執筆者:渡辺みゆき
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
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