最近よく目にする「ギフテッド」という言葉。「ずば抜けた才能を持つ天才」といったイメージがひとり歩きしている印象ですが、その実態はもっと複雑なもの。外からは見えにくいギフテッドの生きづらさを支えるために大切なポイントをお伝えします。
【目次】
1.「ギフテッド」について正しく理解しよう
◆「ギフテッド」の定義
◆ギフテッドは「配慮や支援を必要とする子ども」です!
2.なぜギフテッドは発達凸凹(非同期発達)になりやすいの?
3.生きづらさをサポートするために大切なポイント
◆WISC-4(ウェクスラー式児童知能検査)を味方にする
◆数値だけでその子を見ない
1.「ギフテッド」について正しく理解しよう
◆「ギフテッド」の定義
最近よく目にするようになった印象のある「ギフテッド」という言葉。
その語源は英語の「GIFT」 であり、「神からの贈り物」、「天賦の才能を持つ人」を意味します。
映画や小説などの題材にされることも多いため、「並外れた天才」といったイメージがひとり歩きしている傾向がありますが、一般的には、知的水準が上位3~5%(IQ130以上)の人をさします。
つまり、クラスに1人ぐらいはいる計算で、思ったより身近な存在なんですね。
しかし、単にIQだけでは測れない才能もあるため、ギフテッド教育が進んでいるアメリカにおいてさえ、その定義や判定基準は、州や学区ごとにばらつきがあります。
全米小児ギフテッド協会(NAGC)では、下記の5つの領域のうち「1つあるいは複数の領域で突出した能力をもつ人」という定義を掲げています。
・知的能力全般
・特定の学問領域
・創造的思考
・リーダーシップ
・芸術
この定義で考えると、多少の違いはありますがどの州も大体一致するようです。
まず両親や担任の先生などが、ふだんの様子や成績からその子の突出した能力に気づき、知能検査や専門家のヒアリングなどを受けたのち、それらの結果が総合的に評価され、ギフテッドであるという判定が下されます。
◆ギフテッドは「配慮や支援を必要とする子ども」です!
ギフテッドは生まれながらにして優れた能力を持つ反面、独特で複雑な思考や激しさのために生きづらさを抱えている可能性が高いとされています。
日本ではギフテッド判定を下すことのできる医療・教育機関はまだ存在しない状態ですが、 近年になってようやく、ギフテッドに関する有識者会議や精神医療の学会などが行われるようになってきました。
そして、その実態の理解が進むにつれ、従来の「天才」といったような単純なイメージではなく、「ギフテッド=知的能力は高いが、配慮や支援が必要な子ども」という大前提で語られるようになってきたのです。
これは、日本の教育・医療における大きな前進ですよね!
ちなみに文部科学省では、個々が持つイメージの違いを避けるため、「ギフテッド」という言葉ではなく、「特定分野に特異な才能のある児童生徒」という表現が使われています。
2.なぜギフテッドは発達凸凹(非同期発達)になりやすいの?
「発達凸凹」も最近よく使われるようになった言葉だと思いますが、ギフテッドについて言えば「非同期発達(発達のアンバランス)」のことを意味します。
言語的、社会的、情緒的などの能力はお互いに関係している(=同期している)ので、ほぼ同時に発達していくとされています。
しかしギフテッドの場合、得意な分野の能力が特出しているため、どうしても不得意な分野の能力との差が大きくなってしまうのです。
つまり、「ギフテッドなのに発達凸凹」ではなく、「ギフテッドだから発達凸凹」と言えるわけです。
そして、その差が激しいほど違和感や不全感、すなわち生きづらさを抱える可能性が高くなります。
脳の覚醒度が高く、感覚も過敏なため、ギフテッドはこのような生きづらさを小学校低学年の頃から感じ始めます。
その状況は周囲が想像するよりも深刻であることが多く、結果として学校にいることがつらくなり、不登校になってしまうこともあります。
「ちょっと凸凹があるくらいでしょ? そのうち変わるわよ、気にしない!」では済まなかったりするんです。
それではいったい、どのようなサポートが適切なのでしょうか?
ここでは、特に大切なポイントをお伝えしていきますね。
3.生きづらさをサポートするために大切なポイント
◆WISC-4(ウェクスラー式児童知能検査)を味方にする
発達凸凹は、日常生活の中での困りごとがきっかけとなり、認知の特性を知るために受けるWISC-4(ウェクスラー式児童知能検査)によって判明することが多いです。
WISC-4は、未就学児であれば自治体の発達支援センターなど、その後は小児心療内科や発達クリニックなどで受けられ、下記の4指標と、それらをもとに算出された全検査IQ(知能指数)を知ることができます。
① 言語理解指標(VCI) 言語を用いたコミュニケーションや推論などに必要な力
② 知覚推理指標(PRI) 新しい情報に触れたときの見方や解決能力、対応力
③ ワーキングメモリー指標(WMI) 口頭での指示理解や、読み書き算数といった学習能力、集中力
④ 処理速度指標(PSI) 情報に素早く反応し、物事を正確に処理する力
この検査結果により、その子の発達特性(得意・不得意やバランス)を把握できるのですが、一般的に、得意と不得意の数値の差が15以上あると、日常生活に支障が出てくると言われています。
数値を知ることで、この分野がどうしても苦手なんだ、とあくまでも特性として把握できるので、周りが厳しく注意して直そうとしたり、本人が無理にがんばりすぎてしまうといった負担を軽くすることができます。
また、得意分野を知ることで、そこにフォーカスし、伸ばしていく手がかりがつかめます。
極端な発達凸凹のために自己肯定感が低くなりがちなギフテッドが、自信をとり戻すきっかけにもなるのです!
◆数値だけでその子を見ない
このように、知能検査でその子の特性を知ることはとても大切です。
特性を把握することで、対応やサポートの仕方がまったく違ってくるからです。
ただし、ここでさらに大切なことがひとつ。
「数値だけでその子を見ない」ことです!
検査の結果は確かに信頼できるものですが、その時の子どもの体調や周りの環境、ひいては検査官との相性によっても多少の違いが出るものです。
また、「この子はこの指標が低いからここがこんなにダメなんだ」、「こんなにIQが高いんだからこのぐらいは簡単なはずでしょ!」と、お母さんが数値にとらわれすぎてしまうと、親子ともに追い詰められ、苦しくなってしまいます。
これはギフテッドに限ったことではありませんが、数値だけではなく、いつでも「その時の、その子」をまっすぐしっかりと見てあげてください。
お子さんは、どんなときに心から笑顔になりますか?
何をしているとき、生き生きと輝いて見えますか?
ギフテッド・発達凸凹の子育てに役立つ情報を多数ご紹介しています!
執筆者:片山 さち
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)