発達障害の子は自分の気持ちを伝えることが難しく、親子で困ってしまいがちです。今回、不登校で不安が強く、繊細な発達障害、自閉症スペクトラム(ASD)の小学生のお母さんに、子どもの気持ちを引き出す工夫をうかがいました。 |
【目次】
1.発達障害・ASDでアスペルガータイプの子が不登校になった原因とは?
発達科学ラボのトレーナーとして活動している川本さんの息子さんは現在小学4年生。自閉症スペクトラム(ASD)でアスペルガーの孤立型と言われています。
知的遅れはないものの、保育園から登園拒否がすごく強い子で、不登校になるだろうと予測していたそうです。
入学前に教育相談で相談し1年生から支援級に在籍しています。
その息子さんは3年生の11月頃から不安症状が強くなり、4年生に進級した時の環境の変化でしんどさが増し、GW明けから不登校になりました。
そのときの様子を川本さんにお聞きしました。
――お子さんが不登校になった時の様子を教えてください。
「本人の話だと最初から(1年生)我慢していて、ちょっとした我慢で行けていたのが3年生の11月まで。
その頃から不安症状が強くなってきました。
4年生の4月に入り支援級のメンバーが増え、交流級のメンバ―も変わるという中でしんどさがあって、GWの10連休のあとから行けなくなってきました。
子どもが私に本心を言える関係になるのに時間がかかっていました。
実際には3年生の頃から少しずつ話せるようになってきましたが、それまでは子どもも打ち明けることができず辛かったと思います。
ちょうど親子の間で話ができるようになったタイミングで、本人が『辛かった。本当は行きたくなかった』と打ち明けたことがありました。
そのときに、私が『辛かったね』『そんなに頑張らなくていいよ』と理解して言ってあげられるようになったのも大きかったと思います。」
――不登校になった時に、お母さんが気を使ってケアしたことや、工夫したことはどんなことですか?
「息子とちゃんと話がしたいというのはずっとありました。
寝る前、部屋の電気を消して刺激を少なくした状態で、ゆっくり話を聞くことを試みました。
漠然とした質問に対して、答えるのが苦手で、本人が気持ちをまとめるのが難しかったようです。
なので、例えば『ママが小学校の時、結構怒られていたよ』とか『結構やんちゃなことやっていたよ』とか、失敗談や、私の苦手だったこと、得意だったことなどの話をするようにしました。
そうしたらそこから『俺は学校ではこうだよ』とか、『実際にこういうこともあるんだよね』ってぽろぽろでてくるようになりました。」
◆ポイント解説
お子さんが少しずつ気持ちを話してくれるようになって、それを受け止められるようになってきたという川本さん。
次からは「学校に行かなくても大丈夫」とお母さんの気持ちが切り替わり、お子さんを見る視点が変わった理由に迫っていきます!
2.息子さんとお家で過ごす選択に至った経緯は?
「最初から、基本的には行かなくていいよっていう気持ちでいたつもりでした。
それでも学校に行くチャンスがあるならと思い、まずは週3日行って2日休んでいいよということにしました。
それは、学校で人と接する機会を持つことを1番大事にしたいという考えもあって、学校に行くチャンスを少しでも残しておきたかったのです。
ただ、3日にしたら今度は1日しか行かなくなって、1日でもいいよというと1日も行けなくなりました。
そうすると息子の特性や不登校の原因と向き合わざるをえなくなり、色々と調べました。
その中で『まじめで、ちょっと繊細で精神的には少し大人な感じの子がなりやすくて、その子の心を守るには』いうフレーズを見た時に、自分の子どもにも当てはまると感じました。
そして、はじめて『気持ちを切り替えよう』と考えることができました。
その後、2019年6月の中頃から発達科学コミュニケーション(以下発コミュ)の講座を受けて、私の子どもとの関わり方もさらに変わりました。
『肯定的な言葉かけ』の大切さは知っていましたが、実際に不登校になってあらためて『肯定的な言葉かけによる成功体験』をつくってあげられていないことに気づきました。
静かにたたずんでいる長男に対して、私から怒ることはないですが、肯定的な言葉かけが足りなさすぎてこの子は自信を失っているということがわかりました。」
――知識としてはわかっていたけど、自分のことになったという感じですか?
「家でできることが何かを本気で考えたら、子どもとの関り方を見直すきっかけにもなりました。
徐々に家で元気を取り戻す子どもを見て、学校のことがあまり気にならなくなりました。」
3.不登校の子を受け入れるためにお母さんにまずやってほしいこと
川本さんは発コミュで気づきがあり、お母さんが子どもを見る視点が変わっていきました。
不登校になる子には、
学校に行きたいけど、本人もなぜかわからずに行けない子。
学校に行けずに、休むことに罪悪感を抱く子。
感じ方は様々です。
子どもは、親が学校に行ってほしいと願っている気持ちはわかっています。でも、どうしても行けず、自信も低下しています。
そして、発達障害の子の中には特性に感覚過敏があり、学校で過ごすことがとても難しい子もいます。
また、自分の気持ちを言葉にして伝えることが苦手で、苦しい気持ちを抱えている子もいます。
でも、このような状態の時に
「学校に行きなさい!」
「甘えるんじゃないの」
「休み癖がつく」
などと言うと子どもはどうなるでしょうか?
ただでさえ苦しんでいるのにさらに辛くなってしまいますよね。
まず、お母さんは子どもがリラックスできる環境で、子どもの気持ちを引き出す工夫と、自信回復の声かけをしていくことが大事です。
決して、根掘り葉掘り気持ちを聞く姿勢ではなく、子どものペースを大事にすること。そして、肯定の言葉かけをしてほしいと思います。
そうすることによって、子どもは安心して家庭で過ごせるようになり、良い親子関係を築くことができます。
また、親子関係が築けるとますます色々な話ができるので、徐々に自信も回復していきます。
気持ちが話せるように工夫をした結果、自信が回復してき川本さんの息子さん。
息子さんの不登校を受け入れた川本さんが、今度は自宅で子どもの発達を加速する工夫を始めました。
次の記事では、ご自宅で実際に行っている、息子さんへの発達支援の様々な方法をご紹介します!どうぞお楽しみに!
次の記事はこちらです!
執筆者:山田さとみ
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)