注意欠陥多動性症候群(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)を併発する子どもを育てるのは本当に大変ですよね。「今日こそ怒らない」と誓ってもイライラして辛い!そんなお母さんが無理なくできる、怒らずに混合型の子を伸ばす対応法をご紹介します。
【目次】
1.ADHD・ASD両方の特性がある息子にイライラして辛い!
2.ADHDと自閉症を併発する子どもの特徴と育てにくい理由
3. 大事なのは二次障害を防ぐ対応!
4.怒らない子育てが叶う2つのコツ
1. ADHD・ASD両方の特性がある息子にイライラして辛い!
注意欠陥多動性症候群(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)両方の特性が強い子どもを育てるお母さん、毎日の対応にイライラして、辛くなっていませんか?
・一方的なおしゃべりが止まらない
・落ち着きがない一方、こだわりが強くて切り替えが苦手
・不安が強いけど、好奇心旺盛でがまんできない
私の息子はASDの診断とADHD傾向を併せ持つ混合型の子どもです。上記のような息子の様子に、私はしょっちゅうイライラしていました。
病院で診断を受けた時は「これで解決する!」と思ったのですが、具体的な対応策は教えてもらえませんでした。
本を読んで勉強してみても、実際に使える対応法が見つかりませんでした。
ASDはルーティンが得意と言われるのでお支度ボードを作ったのに、ADHDの特性もある息子は注意散漫で全然効果がありませんでした。
「何をどこから手を付ければいいの?」
「混合型の子って、大変さが2倍なの?」
「将来が心配!」
不安と焦りが募り、つい子どもに厳しく指摘してしまい、自己嫌悪に陥りました。
それでも、諦めないでよかった!
なぜなら、声かけと対応を変えることでイライラが抑えられ、子どもの困りごとが減り、素直に行動できるようになったからです。
今では大変さが2倍というより、才能が2倍と捉えられるほど、子どもの見方が変わりました。
どのように変われたのか、そのコツをお伝えしたいと思います。
2. ADHD・ASD混合型の子どもの特徴と育てにくい理由︎
発達特性が複数組み合わさることを「併発」と言います。
特に、ADHDとASDの特性が強く併発している混合型の子どもを育てるのは、一筋縄ではいかない難しさがあります。
それぞれの特性が同時に現れるため、どのように対応するべきか見極めが難しいのです。
ADHDとASDには、下記のような特性があります。
<ADHDの特性>
・注意力が続かず、遅刻や忘れ物が多い(不注意)
・じっと座っていられず、動き回ってしまう(多動性)
・順番やルールを守れず、衝動的に行動してしまう(衝動性)
<ASDの特性>
・コミュニケーションが苦手で、相手の気持ちを読み取るのが難しい
・特定の物事に強くこだわり、変化に柔軟に対応できない
たとえば、息子が一方的に話し続けるのは、相手の気持ちが読めないASDの社会性の特性、がまんする力が弱く思いついたことを口に出してしまうADHDの衝動性、多弁(口の多動性)が関わっています。
また、「好きな図工の材料はしっかり持っていくのに、体育の体操服は忘れてしまう」という行動は、ADHDの不注意とASDのこだわりが絡んでいます。
特定の物事にこだわるASD気質と気持ちにブレーキをかけるのが苦手なADHDの特性が相まって、大好きなレゴで制作したこだわりの作品に友達が触れようとしたことに怒り出すこともありました。
このように、混合型の子どもは、日常的にさまざまな種類の困りごとに直面します。
その原因が見えづらいため、教科書通りの対応が通用しないことが多く、親としてどう対処すれば良いのか悩んでしまうのです。
3.大事なのは二次障害を防ぐ対応!
ADHDとASDを併発する子どもは理解されにくいため、叱られやすく、集団で孤立しやすい傾向があります。
子どもが自信を失うと、鬱々としたり、暴言や暴力、不登校につながったり、二次的な障害が出る可能性が高まります。
二次障害とは、もともとの発達障害に加えて、環境や対応によって新たに生じる精神的な問題のことです。
二次障害を引き起こさないためには、何といっても家庭でのお母さんの対応とポジティブな声かけが重要です。
お母さんが困りごとにばかり囚われていると、どうしても子どものできていないことに目が行きがちです。
すると、子どもの脳内で、「お母さん」=「口を開けば怒る人」というイメージが定着します。
お母さんが声をかけても子どもは聞きたくないのでスルーしてしまい、正しい行動に導くことができません。
脳は、行動することで発達します。
行動すると、刺激によって脳の各エリアをつなぐ神経ネットワークが強化され、脳全体が発達するからです。
だからこそ、まずはお母さんが、子どもの自信を失わせる対応をやめて、ポジティブな声かけに変えていってほしいのです!
実はお母さんがニコニコして声をかける、それだけで子どもにとっては大きなご褒美になると、ご存じですか?
お母さんが怒らず、笑顔でいれば、子どもは丸ごと肯定されて「自分は大丈夫」と感じ、安心して成長できます。
すると、学校や外でもチャレンジする意欲が生まれ、発達につながっていくのです。
発達障害の子は見て理解するのが得意なタイプも多いです。お母さんの笑顔は非常に重要なポイントです。
4.怒らない子育てが叶う2つのコツ
朝からイライラし通しだった私が、実際に笑顔でいられるようになった方法があります!
この対応を実践するだけで、息子の落ち着きがない・がまんできないという行動面の困りごとが和らぎ、穏やかに接することができるようになりました。
◆怒らない時間帯を決める
一日のうち、「ここだけは怒らない時間」を設定します。
私の場合、「朝は叱らずに送り出す」と決めることで、継続しやすくなりました。
放課後や夕飯から寝る前など、特定の時間帯を区切ることがポイントです。
自分ができそうなことを目標達成して自信がつけば、習慣化ができます。習慣化できれば、少しずつ他の時にもできるようになっていきます。
◆できていることだけ褒める!
その時間帯は、子どもができていることにのみ注目して肯定します。
私の朝のイライラは、子どもの支度が全然進まないことが原因でした。
怒らないように我慢するだけではいずれ限界が来ますし、支度も進みません。
そこで、
・起きてきたね〜!
・朝ごはん食べてるね!
・ズボンはけたね!
このように、できて当たり前のことをそのまま言語化して褒めていきます。
お母さんが子どもの行動をただ認めるだけで、子どもはやる気になります。
特に飽きっぽい子は、間をあけず実況中継していくと調子が出ます!
合わせて、苦手なことは手伝って支度を進めます。
脱ぎっぱなしのパジャマはお母さんが洗濯カゴに入れる、歯磨きし忘れたら洗面所に連れて行く、上着を着せる、とにかく笑顔で送り出せれば全てはOKです!
「当然のことを褒めるだなんて馬鹿らしい。甘やかしたら何もできない子になりそう」と感じますか?
実は逆なのです。
とにかく笑顔で送り出すことを続けると、息子はどんどん素直になり、自ら進んで朝の支度をするようになりました。
私自身も「今日もできた!」という達成感を感じ、続けることができました。
すると、指示だらけだった親子の会話が豊かになり、少しずつ一日のうちで穏やかに過ごせる時間が増えたのです。
子どもがお母さんの話を聞けると、指示がスムーズに入るようになり、
・切り替えが早くなる
・会話のやり取りがうまくなる
といった、こだわり・コミュニケーションに関わる社会性の力も徐々に伸びていきます。
現在4年生の息子は、日常生活に支障をきたすほど大きな悩みはありません。
むしろ、自分が好きなことにこだわれるASDと、行動力の高いADHDの両方の良さを感じる機会も多いです!
困りごとが多いADHD・ASD混合型タイプのお子さんには、まずは時間帯を決めて、できているところだけを褒めてあげてください。
発達特性はうまく伸ばせば個性となり、子どもの生きる支えになります。
声かけと対応を変えて、ADHDと自閉症スペクトラムを併発する子の個性豊かな力を育てていきませんか?
お母さんの小さな一歩が、親子の大きな笑顔の実を結びますように。
混合型タイプの子育ての辛さから抜け出して笑顔になれる!お役立ち情報をお届けします。
執筆者:小川陽子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)