発達障害の特性の一つである「不注意」により、いろいろな場面で所定の手順を飛ばしてしまうお子さんに困っていませんか?なかなか本人に自覚させるのは難しく、同じような失敗を繰り返しがちですね。子どもに気づきを与える、さりげないサポートの仕方をお伝えします。
【目次】
1.発達障害の子どもは自分の不注意を自覚できない
2.料理男子の息子がレシピ本を見ながら料理に挑戦
3.不注意が起きないような成功パターンを経験させる方法
①子どもの理解度・情報の把握パターンに合った手順を選ぶ
②レシピの音読によって、しっかりと注意を向けさせる
③横で見守り、さりげなく間違いを指摘する
④「できていること」をしっかり褒めて、子どもの成功パターンを作り出す
1.発達障害の子どもは自分の不注意を自覚できない
「ほら、ちゃんと見てないからそうなるんだよ」「また忘れてるよ」このようにお子さんの不注意を指摘することはありませんか?
例えば、折り紙やブロック遊びなど「作り方」を見ながら遊ぶ場面で、不注意から手順を飛ばしてしまうと失敗作が出来上がることがあります。
このような時、うまくいかずに子どもが癇癪を起こすこともあり、冒頭のような間違いを指摘する会話になりがちです。
この背景にあるお子さんの困りごとは次の2点です。
・目で見たことを理解する力が弱い
・パッと見て分かったつもりになる早合点
さらに、集団行動の中で不注意から手順を飛ばしてしまうと、手順を守らず勝手なことをする困った子どもと見られがちです。
ところが、発達障害の子どもは自分の不注意を自覚できません。なぜなら、本人は適当なことをやっているつもりがないからです。
「ちゃんとやりなさい」と言われても、「ちゃんとやってる」つもりだから何を指摘されているのかすら分からないのです。
頑張っているのに、それを認められないだけでなく間違いとして叱責されると、頑張る気持ちが失せますよね。
このまま放っておくと、お子さんは自信を失って、どんどんつらい思いをするかもしれません。
2.料理男子の息子がレシピ本を見ながら料理に挑戦
私の息子は発達障害があり注意欠如多動性障害(ADHD)です。そのため、不注意から起きる些細なトラブルを挙げると切りがありません。
また、自分の不注意により失敗したらイライラし始め、こちらがダイレクトに間違いを指摘すると癇癪を起こします。
そんな息子は、実は料理男子です。キッチンに立つのが好きで積極的に料理を作るようになりました。そこで私は小学3年生の時にレシピ本をプレゼントしました。
本を見た息子は大喜びで早速「何か作りたい」と意欲的です。冷蔵庫にある材料でできる「肉じゃが」を選び、初めて本格的なメニューの調理を開始しました。
横で様子を見ているとレシピに書いてあることを見ながら、その通りにできているようなので安心していたのですが・・・
・手順の5番の次に7番に取りかかってしまう
・火加減を見落として焦げそうになる
このようなミスが続きました。
初めてだから仕方がないところもあるのですが、日頃から不注意が目立ち気になっていましたし、このままでは料理が完成せず失敗体験に直結してしまうことも気がかりでした。
そこで、本人が気を悪くせずに聞き入れられる方法はないかと考えた結果、次のような関わり方を実践しました。
3.不注意が起きないような成功パターンを経験させる方法
息子へプレゼントしたレシピ本を例に、発達障害の子どもが自分自身の不注意に気づくきっかけをサポートする具体策を紹介します。
◆①子どもの理解度・情報の把握パターンに合った手順を選ぶ
息子にプレゼントしたレシピ本は次のような条件を満たしていました。
・漢字に全てルビが振ってある
・調味料は「さしすせそ」を中心とした一般的なものを使用している
・調理工程が全て写真つきで説明されている
一般的に子ども向けの手順は対象年齢に合わせた書き方になっていますが、例えば「ものの名前」についてのインプットがゆっくりなお子さんには、材料やキッチンツールがベーシックなもので対応できる内容を選ぶのがオススメです。
私たちは見慣れているので気づきにくいですが、キッチンには数多くのアイテムが存在します。子ども目線で選択肢が限定的になると取り組みやすくなります。
また、視覚的に情報を捉えることに長けているお子さんであれば、写真つきのレシピ本を選ぶことで、手順を読んだ時に頭の中でイメージしやすくなります。
お子さんの様子を見ていると、どのように情報をキャッチしているのか、どのような情報を理解しやすいのか、傾向が見えてくると思います。ぜひ、そのような視点でサポートの第一歩を始めてください。
◆②レシピの音読によって、しっかりと注意を向けさせる
お子さんの不注意を抑制するために、一度音読させてから取り組ませるとミスが軽減します。
レシピを例にすると、材料を準備する段階では一つずつ「豚肉200グラム」と声に出して確認してから豚肉を準備する、といったやり方を繰り返していきましょう。
時間は掛かりますが、子どもが一つ一つ丁寧に取り組むことを学べます。
時には、しょうゆボトルのキャップを開閉することから教える場面もあるでしょう。そこまで細かく分解してサポートする必要があることを私たちが理解しておく姿勢が大切です。
◆③横で見守り、さりげなく間違いを指摘する
このように丁寧に進めていても子どもは順番を飛ばしてしまったり、書いてある内容と違うことを行ってしまうことがあります。
それに気づいた時は(ケガのリスクがあるなど緊急性がある場合を除き)、一呼吸置いてからゆったりした気持ちで優しい声かけにより指摘することで、子どもが間違いに気づくきっかけを作りましょう。
「あれ?さっき読んでくれたのって、そういうことだっけ?」
「火加減は合ってるかなあ。もう一度、レシピでチェックしてみてくれる?」
このように、確認して教えて欲しい、というスタンスで気づきを与えると、お子さんの反発を避けやすくなります。
◆④「できていること」をしっかり褒めて、子どもの成功パターンを作り出す
上記③のサポートと合わせて行っていただきたいのが、子どもができている部分をしっかりと認めて褒めることです。
「ニンジン切るの難しいよね。よく頑張ってるね。」
「ここまでバッチリだよ。」
このように工程の途中で、こまめに褒めていきましょう。
すると、子どもは一つ一つの行動を成功体験としてインプットしていきます。
これらが最終的に一連の流れでの成功体験としてストーリーになり、「こうすれば上手くいく」という成功パターンとして子どもが認識できるようになるのです。
発達障害の子どもたちの不注意は、行動をパターン化してあげることで目立ちにくくなることがあります。
ただ間違いを指摘するのではなく、親子で一緒に成功体験を作ることで子どもをグンと成長させていきましょう。
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執筆者:中村莉彩子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)