自転車に乗れない発達障害の子に、どう教えればいいのか心配になりますよね。乗れない原因は運動神経だけではなく、不器用さや不安の強さが関係していることも。補助輪を怖がる小学生が3日で自転車に乗れるようになった、親の関わり方と練習法を紹介します。
1.自転車に乗れない発達障害の子|補助輪を外すのを怖がっていませんか?
2.発達障害の子が自転車に乗れないのはなぜ?考えられる2つの理由
3.自転車練習で親がやりがちなNG対応|教えるほど怒る理由
4.補助輪を怖がる小学生が3日で乗れた練習法
◆ステップ1 本人が「やってみたい」と思うタイミングを待つ
◆ステップ2 最初にスモールステップで伝える
◆ステップ3 できている動きを細かく見つけて肯定する
5.運動が苦手でも、自信が育つと子どもは動き出す
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.自転車に乗れない発達障害の子|補助輪を外すのを怖がっていませんか?
小学生になっても自転車に乗れない、補助輪を外すのを怖がる、練習しようとすると怒ってしまう…。
そんな姿を見ると、「このまま乗れないままだったらどうしよう」「発達障害の特性が関係しているのかな」と心配になりますよね。
わが家の息子も、補助輪つきの自転車には乗れていたのに、補助輪を外した途端にバランスが取れなくなり、「怖い!」「もうやらない!」と練習を嫌がるようになりました。
まわりの子が自転車に乗れるようになっていく中で、小学生になっても補助輪を外せない姿を見ると、親の方が焦ってしまいます。
けれど、自転車に乗れない原因は、運動神経だけとは限りません。
発達障害やグレーゾーンの特性がある子の場合、不器用さ、不安の強さ、こだわりの強さが重なり、「やりたいのに怖くて動けない」状態になっていることがあります。
この記事では、自転車に乗れない発達障害の子が苦手な理由と、補助輪を怖がる小学生が3日で乗れるようになった親の関わり方と練習法を紹介します。
2.発達障害の子が自転車に乗れないのはなぜ?考えられる2つの理由
発達障害の特性がある子が自転車に乗れないとき、単に「運動が苦手だから」と片づけてしまうと、子どもの困りごとが見えにくくなります。
一つ目の理由は、体の動かし方を調整することの苦手さです。
自転車に乗るには、ハンドルを持つ、前を見る、ペダルをこぐ、バランスを取る、ブレーキを使うなど、いくつもの動きを同時に行う必要があります。
発達性協調運動障害、いわゆるDCD傾向がある子は、こうした複数の動きを組み合わせることに苦手さが出ることがあります。
そのため、本人は一生懸命やっているつもりでも、体の使い方が分からず、バランスが崩れたり、ペダルをこぐタイミングが合わなかったりすることがあるのです。
二つ目の理由は、不安の強さです。
一度「転びそうで怖い」「転んで痛かった」という記憶が残ると、次に挑戦するときもその怖さが強く出てしまいます。
「頑張ってやってみよう」よりも、「また転ぶかもしれない」「痛いかもしれない」という不安が先に立つと、練習を始める前から行動にブレーキがかかります。
特に、初めてのことや失敗した経験があることには、慎重になりやすい子もいます。
つまり、自転車に乗れない発達障害の子には、「できない」のではなく、「どう体を使えばいいか分からない」「怖さが勝って動き出せない」という状態が隠れていることがあるのです。
外ではいい子なのに
家では癇癪に悩むママへ
指示出しゼロの子育てで
癇癪がみるみる落ち着く!
↓↓

3.自転車練習で親がやりがちなNG対応|教えるほど怒る理由
自転車に乗れるようになってほしいと思うと、親はつい一生懸命教えたくなります。
「前を見て!」 「もっとこいで!」 「ハンドルをまっすぐ!」 「怖がらなくて大丈夫!」
けれど、発達障害やグレーゾーンの子には、この声かけが逆効果になることがあります。
なぜなら、子どもは自転車に乗るだけで、すでにたくさんの情報を処理しているからです。
バランスを取る、ペダルをこぐ、転ばないようにする、怖さをこらえる。
そこに親のアドバイスが次々と入ると、何を意識すればいいのか分からなくなり、脳がいっぱいいっぱいになってしまいます。
その結果、「うるさい!」「もういい!」と怒ったり、練習そのものをやめてしまったりするのです。
これは、やる気がないからではありません。
子どもにとっては、自分を守るための反応でもあります。
つまり、自転車練習で大切なのは、親がたくさん教えることではなく、子どもが安心して試せる状態をつくることなのです。
4.自転車練習で親がやりがちなNG対応|教えるほど怒る理由
わが家で自転車に乗れない発達障害の息子が3日で乗れるようになった実践の結果をご紹介しますね。
◆ステップ1 本人が「やってみたい」と思うタイミングを待つ
まず大切なのは、親のタイミングで練習を始めないことです。
怖がりで不安が強い子にとって、「やらされる練習」は不安を強めます。
わが家では、息子がまわりの子や姉が自転車に乗る姿を見て、「いいな」「あの子うまいね」と言ったタイミングを逃さないようにしました。
その言葉が出たときに、「挑戦するのってかっこいいね」と気持ちを受け止めました。
無理に背中を押すのではなく、本人の中に出てきた「やってみたい」を大切にすることが、最初の一歩になります。
ステップ2 最初にスモールステップで伝える
次に意識したのは、練習中のアドバイスを減らすことです。
途中で何度も声をかけると、子どもは混乱したり、反発したりしやすくなります。
そこで、ポイントは最初に短く伝えました。
・背筋を伸ばして前を見る
・後ろの足をペダルに乗せたらすぐにこぐ
・ブレーキに手をかけて、いつでも止まれるようにする
このように、大きな目標ではなく、小さな動きに分けて伝えることで、子どもは「何をすればいいか」が分かりやすくなります。
実際にお手本を見せたり、動画で確認したりするのも、イメージを持ちやすくする助けになります。
◆ステップ3 できている動きを細かく見つけて肯定する
練習中に意識したのは、できていないところを直すのではなく、できている動きを細かく伝えることです。
「ペダルをいい位置に持ってこられたね」
「今、ちゃんと前を見ていたね」
「足を乗せられたね」
「半周こげたね」
「今度は1周回ったね」
このように、できたことを一つずつ言葉にしていきました。
さらに、「もうそんなことできたの!?」と驚いた表情で伝えると、子どもは自分の変化に気づきやすくなります。
その積み重ねで、息子は日にちを空けて3日間、合計2〜3時間ほどの練習で、補助輪なしで自転車に乗れるようになったのです。
4.運動が苦手でも、自信が育つと子どもは動き出す
自転車に乗れない発達障害の子に必要なのは、根性で練習させることではありません。
まずは、本人が「やってみたい」と思えるタイミングを待つこと。
そして、親がアドバイスをしすぎず、スモールステップで伝え、できていることを細かく肯定することです。
運動が苦手でも、怖がりでも、子どもは「できた」という感覚が育つと、自分から次の一歩を出せるようになります。
自転車の練習は、ただ乗れるようになるための時間ではありません。
子どもが難しいことやったことないことにも「自分にもできるかもしれない」と感じる経験を積み重ねる時間です。
補助輪を怖がる小学生でも、親の関わり方を少し変えることで、安心して挑戦できる状態に近づいていきます。
Q1.発達障害の子が自転車に乗れないのは、発達性協調運動障害(DCD)が原因ですか?
A1.発達性協調運動障害(DCD)傾向が関係していることもありますが、それだけが原因とは限りません。
自転車は、バランスを取る、ペダルをこぐ、前を見る、ブレーキを使うなど、複数の動きを同時に行う必要があります。発達障害やグレーゾーンの子は、体の使い方の苦手さに加えて、不安の強さや過去の失敗の記憶が重なり、練習に踏み出しにくくなることがあります。
Q2.自転車を怖がる子は、どんな練習から始めるといいですか?
A2.まずは、本人が「やってみたい」と思えるタイミングを待つことが大切です。
怖がっている状態で無理に進めるよりも、最初に短くポイントを伝え、小さな動きに分けて練習すると取り組みやすくなります。ペダルに足を乗せる、前を見る、少しこぐなど、できたことを一つずつ積み重ねることが自信につながります。
Q3.自転車の練習中、親はどんな声かけをすればいいですか?
A3.練習中に「前を見て」「もっとこいで」と次々に指示をすると、子どもは情報が多すぎて混乱し、怒ったり練習をやめたりすることがあります。
ポイントは最初に短く伝え、練習中はできている動きを細かく見つけて肯定することです。「今、前を見ていたね」「足を乗せられたね」など、できたことを言葉にすると、自信につながりやすくなります。
子どもに身につけさせたい自転車の交通ルールはこちらの記事をご覧ください▼
気になるあの方法は?子育てに役立つ情報が満載です!
執筆者:林 花寿美
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)