子どもにはたくさん運動させた方がいい!と言われますよね。でも「たくさん」って一体どのぐらい…?と疑問に感じたことはありませんか?発達障害の息子を持つ私が、文科省の推奨量と発達科学ラボの推奨量を実践しました。 |
【目次】
1.発達障害の子に運動をさせよ!友達がドン引きした我が家の外遊び作戦とは
2.どうして運動が必要なのか?運動すれば脳全体が発達する
3.1日の運動の目安を大公開~指針があるって知ってました?~
4.グーグルマップを使い倒す!1日に必要な運動を大公開!
1.発達障害の子に運動をさせよ!友達がドン引きした我が家の外遊び作戦とは
発達障害の子どもにしっかり運動させることはとても大切ですよね。発達相談に行ったら、「しっかり外遊びさせましょう!」とアドバイスを受けたという方も多いと思います。
私もそんなアドバイスを受けたお母さんの一人です。
3年半前、当時幼稚園の年少さんだった息子が、発達障害・自閉症スペクトラムの診断を受けたときのことです。
医師から診断を受けて「やっぱりか…」と落ち込む私に、臨床心理士さんが今後の息子への接し方についてアドバイスをくださいました。
視覚支援や短い言葉で指示を出すことに加え、何度も何度も言われたのが「とにかくもっともっと運動させて!」ということでした。
みなさんのお子さんはどれぐらい運動していますか?
実は、このアドバイスを受けたとき、私は内心「これ以上公園に行くの!?」とうんざりしたんです。当時、雨の日以外は毎日公園へ。1時間は外で遊んでいました。
付き合う私も体力勝負!正直大変でしたが、「これだけ外にいるんだから運動量は十分だろう」と思っていたんです。なのにもっと運動して!と言われて、どうしたらいいの?と途方にくれました。
そして、次の日から私がどうしたかというと…「息子が帰りたくなるまで公園にいよう!作戦」を決行したのです。
文字通り、幼稚園からの帰り道にそのまま公園へ。息子が「帰りたい!」と言い出すまで公園で遊ばせてみたのですが…多動気味の息子に対して無謀な作戦だったと気づくのに時間はかかりませんでした。
わが家が公園を出た時間…なんと夜9時!
それも息子が疲れたのではなく、仕事帰りの主人が公園に迎えに来てくれたのです。パパの顔を見た息子は、「肩車~!おうちに帰る~!」。
主人が迎えに来てくれなかったら一体何時まで公園で遊んだことか…
息子が風邪を引くまで続けたので、こんな生活が1か月ぐらい続けたでしょうか。私も相当疲れました。
当時を思い返してみると、周りの友達にはこの作戦をドン引きされました(笑)でも、息子が診断を受けたのに、すぐには療育をスタートできない状態だったため、焦っていたのだと思います。
運動はもちろん大切。でもどうして大切なのでしょうか?そして一体一日どれぐらい運動するのがいいのか、目安はあるのでしょうか?
この記事を最後まで読めば、発達の観点からみる運動の目的が分かり、1日の運動量の目標がはっきりしますよ!
2.どうして運動が必要なのか?運動すれば脳全体が発達する
実は、脳のなかで運動をつかさどる部分は、人間の発達において一番最初に発達する部分です。
脳で運動機能をつかさどる「運動野」。この部分は胎児のときから発達していきます。赤ちゃんは生まれる前から体を動かしていますよね。お母さんには懐かしい、胎動です。
この「運動野」が土台となって認知や感覚が育っていきます。つまり、運動野はすべての脳機能のベースなのです。
運動野の発達が不十分だと認知などの発達にも影響するのです。
これを証明する身近な例があります。「寝たきりになると認知症になる」という話、聞いたことはありませんか?
これは運動野が衰えたことで認知面も衰えてしまったということ。運動と認知は密接な関係があるのです。
発達の遅れのある子どもは、体の発達も十分ではないケースが散見されます。
歩行はできていても、
・ケンケンなど複雑な動きができない
・体幹が弱い、筋肉が少ない
・体力がない、すぐ疲れる
そんな子に、認知面だけにアプローチするような支援をしてもなかなかうまくいきません。
土台が育っていないのですから、上手くいかなくて当たり前なんです。まずは、しっかり体を動かして運動野の発達を加速させることが大切です。
現代の生活は便利です。体を動かさなくても生活が成立してしまいます。
バスや電車で歩かなくてもOK!家庭のなかでは、リモコンを使えば座ったままあらゆるものが操作できます。
最近では、もはやリモコンを探すために歩くことすらしなくてもよくなりました。「アレクサ~!」と話しかけている方、いらっしゃいますよね?
つまり、日常的に体を動かす機会はどんどん失われているんです。だからこそ、以前にも増して意識的に動くことが必要なのです。
3.1日の運動の目安を大公開~指針があるって知ってました?~
私もそうでしたが、「運動すればするほどいい」という考えをされていませんか?
確かにそうなのですが、目安がないと「とにかく子どもに付き合う!」とお母さんも体力勝負になりがち。これ、絶対にしんどいですよね。
ある程度の目安が分かれば、
・公園で遊ぶ時間
・おうちで体を動かす時間
・学校や幼稚園の体育の時間
・水泳や体操などの運動系の習い事の時間
などで目安をクリアしているかどうか検討できます。
では、1日にどれぐらい運動すればいいのか、動けばいいのか?さまざまな指針が出ていますのでご紹介していきます!
◆文部科学省からの指針(平成24年)
日本の文部科学省から平成24年にこちらの指針が出ています。
この指針によると、文科省の調査で
①外遊びの時間が長い子ほど体力が高い傾向にある
②外遊びの時間が1日60分未満の幼児が4割を超えていた
という結果から、屋内も含めて幼児は毎日60分以上運動するという目安を設けています。
◆WHOの推奨
世界保健機関(WHO)では、5歳~17歳の子どもに対して、毎日60分の中強度の運動に取り組むことを推奨しています。
Global recommendations on physical activity for health という2010年に発表された提言があります。
先ほどご紹介した文部科学省の指針は、こちらの提言を元にしたものだと言われています。文部科学省の違いとして押さえておきたいポイントは、
・対象の子どもの年齢幅が広い
・運動の強度を指定している
という2点です。
つまり、WHOは「幼児でも、小学生でも、中高生でも、60分がっつり運動すべし!」と言っているわけですね。
◆2020年7月に発表された国際共同研究
発達障害・グレーゾーンのお母さんにとって注目したいのが、「運動したら認知機能がアップする」という点だと思います。先ほど私も認知症の例を挙げてお伝えしましたね。
実際に本当に運動が認知機能をアップさせると証明したのが、2020年7月に発表されたこちらの論文です。 Baseline Cognitive Performance Moderates the Effects of Physical Activity on Executive Functions in Children
この論文では、毎日60~90分運動することで、認知機能にプラスの効果があったこと、認知機能が低い子ほど効果が大きかったことを証明しました。
いかがですか?まとめると、
・運動時間は60分以上、認知機能の改善を目的とするなら90分毎日行う
・運動は中強度、がっつり行う
という2点を満たすことで、運動による効果を得ることができます。
4.グーグルマップを使い倒す!1日に必要な運動を大公開
1日に60~90分という時間は分かりましたが、子どもの様子を見ていると、ずーっと動き続けているわけではありませんよね。
特に体育の授業や習い事では、どうしても「順番待ち」がありますから、がっつり運動しているか?と言われれば違う気もしてしまいます。
というわけで、わが家ではこのように考えています。
・登下校での歩行:10分(往復)
・習い事での運動:30分(毎日)
・日常的な運動:5分(毎日)
・家族でお散歩:45分(毎日)
これで90分です。
でも、ただ45分を歩き続けるのって大人でもしんどいですよね。そこで、しっかり目的を定めて歩くようにしています。
息子の場合は、大好きなポケモンGOでバトルするために喜んで歩いています。
他にも、いつもバスを使って行く公園をあえて歩いて行ったり、公園やスーパーをこまかくハシゴしたりしています。
初めての場所に子どもを連れて、しかも歩きで行くのはお母さんにとって負担が大きいので、まずはいつもはバスや電車で行く場所にあえて歩きで行ってみるのはとてもおすすめです!
慣れてきたら、どんどん行動範囲を広げていきましょう!私は子どもがうまくノッてくる場所を見つけるために、グーグルマップでのリサーチは欠かせません(笑)
これまでいろいろな場所に歩いていきましたが、年長・年中のお子さんだと4キロでちょうど45分ぐらいかかります。電車の駅でいうと、3駅をまずは目安にしていただいて、詳しい距離を確認するようにしましょう。
グーグルマップのいい点は、距離も分かるし、周囲の情報も分かる点。
お子さんと長時間外に出るとき、トイレが心配だったり、疲れて歩かなくなったりということが心配ですよね。
グーグルマップを使って周辺の情報を併せてリサーチすれば、
ここのコンビニでご褒美のおやつを買おう!
ここのファーストフード店で休憩してトイレも行っちゃおう!
この道沿いなら、イザというときバスに乗れるな!
など、確認できてとっても安心です。
「途中でジュース買って行こう!」
「お菓子を買って、公園で食べよう!」
と声をかけながら歩くと、楽しみができてスムーズに歩いてくれますよ!
この運動量はあくまでも目安です。しっかり運動して子どもの発達を加速していきましょう!
発達支援の方法を続々公開中!
執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)