中一ギャップ対策には、家庭でのポジティブな関わり方が重要です。二学期になり「中学校に行きたくない」と言うASD中一男子には、まずは心を満たし安定させてあげることが第一優先です。我が子が学校に足がむくようになった対応法をお伝えします。
【目次】
1.中学校に行きたくない!と言い出したASD中1男子
2.中学校が辛い…不登校になってしまう理由
①中1ギャップ
②ASD発達特性
3.中1ギャップ対策!中学校に登校できるようになる家庭での関わり方
①ママは家族のムードメーカー!楽しい家庭環境作り
②肯定的な関わり
③春からの成功体験の振り返り
1.中学校に行きたくない!と言い出したASD中1男子
我が家には、現在中学校1年生の自閉症(ASD)傾向の繊細な息子がいます。
1学期も辛そうな様子は見られたものの登校できていたのですが、夏み明けの2学期、息子の口から「中学校、辛い。行きたくない」という言葉が出始めたのでした。
それは、中1ギャップの中での1学期からの溜まったストレスに加え、2学期になり勉強が難しくなったり、より一層主体性を強要される厳しい中学校生活でのストレスで、心身ともに疲弊し自信がなくなってしまった現れなのです。
息子は、不安症で怖がりな面もありましたが、子どもらしく園庭をかけまわったり元気印の男の子でした。
小学校に入学してからも、何もかも初めてという新しい環境の中、お友達を作り授業にも問題なく参加できていました。
また、小学校高学年になると、ただ自分のことだけをやっていればよい低学年とは異なり、学校で任せられるお仕事や責任が増えてきます。
そんな中でも、息子は担任の先生の勧めやご支援があり、苦手なリーダー役にも手を上げて苦戦はしていましたが、やり切ることができました。
息子も自分で「あの時の経験が自信になっている。だから、中学校に行っても様々なことにチャレンジするんだ」と意欲的な発言をしていました。
息子は自閉傾向で意思表示が苦手だったり、コミュニケーションにも課題はありますが、このように向上心を持てているし、中学校も大丈夫だろうと思い、私は特に心配をしていませんでした。
しかし、中学校生活がスタートしてみると様子は一変!毎朝面倒くさそうに支度をして、浮かない顔で家を出ていく様子に不安がよぎりました。
他の子は、新しい学ランを着て希望に満ちた表情で、お友達と楽しく会話をしながら登校しているのに…
我が子の生活記録ノートを見ると、「今日もなんとかやりきることができた」の一言だけ。
楽しかったことや良かったことを聞いても、「ない…」と答えるばかり。
環境ががらりと変わり、中学校生活に慣れるのに精一杯なんだろう。いつか慣れるだろう。と思っていました。
しかし、1学期終わり頃でも一向に慣れる様子はなく、だんだん朝も起きられなくなってしまいました。
息子のように、1学期から中学校生活にうまく適応できなかった子どもは、夏休み明けの2学期に、さらに学校が辛くなり不登校又は隠れ不登校の状態になることが多くなると言われています。
2.中学校が辛い…不登校になってしまう理由
我が子のように、小学校は普通に通えていたのに、中学生になったとたん学校生活にストレスを抱え元気がなくなったり不登校になってしまうのはなぜなのでしょうか。
それは、中学校入学時にほとんどの子どもが経験する「中1ギャップ」と、息子のように発達グレーゾーンの子どもは、その発達特性による困りごとがある為、中学校生活が辛くなり不登校につながってしまう可能性があるのです。
詳細について、お伝えします。
◆①中1ギャップ
さて、「中1ギャップ」という言葉を知っていますか?
中1ギャップとは、小学生から中学生になる際に環境が大きく変化することです。
その新しい環境に馴染めず、ストレスや不安を抱えてしまったり、不登校になってしまうことを言います。
中学校入学時の環境の変化は、小学校入学時とは比較にならないほど大きな変化が生じます。
・授業時間が長くなり、勉強の難易度があがる
・新しい友人関係のストレス
・教科担任制
・部活動の厳しい上下関係 等
これらの環境の変化が、つい最近まで小学生だった子どもに、急にのしかかるのです。
小学生の時は、担任の先生が子ども一人一人に手厚く対応して下さっていたかもしれません。
しかし、中学生には「主体性」が重んじられる為、困ったことがあったら自分から助けを求めないと誰も気づいてはくれません。
何もかもが初めての中学校生活で不安やストレスでいっぱいになった子どもたちは、
・朝起きれなくなる
・元気がなくなって、無気力状態
・一人で家にいる時間が増えた
・家庭学習を全くしなくなった
等の症状が出てきて、次第に元気がなくなってしまうのです。
◆②ASD発達特性
また、我が息子のようにASD等の発達特性が関係している場合もあります。
特にASD傾向の子どもには、感覚過敏の特性があることが多く、その特性によりストレスを感じやすく、中学校生活が辛いものになってしまうのです。
感覚過敏があると、学校のザワザワした物音や、先生やお友達の表情や声色を過敏に感じてしまい、疲れてしまいます。
また、授業内容も難しくなる上、授業時間も長くなります。
授業中じっと座っていないといけないという状況が辛く、「1時間ももつだろうか」と不安にもなってしまうこともあります。
このように、小学校から中学校になる際の大きな環境の変化や、ASD発達特性により、不安やストレスを多く感じてしまうことで、中学校生活が辛くなってしまうのです。
そして、2学期頃には、春から必死で頑張ってきたストレスや不安が、子どもの心では対処できないくらいに溜まってしまい、不登校へとつながっていくのです。
よって、何となく子どもが辛そうだなと感じたら、子どもの不登校を長引かせない為にも、すぐに家庭での関わり方を見直す必要があるのです。
我が家で取り組んだ対応をお伝えしますね。
3.中1ギャップ対策!中学校に登校できるようになる家庭での関わり方
2学期に突入して、さらに中学校生活が辛くなり心身ともに疲れてしまった中1男子に、早く元気を取り戻してあげたいですよね。
子どもの落ち込んだ心を元気に回復させてあげるためには、ポジティブな環境で満たしてあげること、そして自信を取り戻してあげることが重要です。
では、実際に我が家で行った具体的な対応法をお伝えしますね。
◆①ママは家族のムードメーカー!楽しい家庭環境作り
どんなに心が沈んでいても、周囲に明るいムードメーカーがいると、自然と元気をもらい笑顔になった経験はありませんか?
逆に、一緒に落ち込まれると、さらに不安が強化されたりすることもありますよね。
そうなのです。感情は伝染するのです。
ですから、ママは「家族のムードメーカー」になりましょう!
ママも人間なので、疲弊して無気力になってしまった子どもを見ていると、不安になるかと思いますが、ここはどーんと構えましょう。
とにかく明るく鼻歌を歌いながら楽しそうに、自分のことや家事をして過ごしましょう。
ポジティブな情報は、自然と空気を伝わり子どもの感情に届きます。
ママが明るく笑顔でいるだけで、自然と子どもの心にポジティブな感情が届きますよ。
◆②肯定的な関わり
心が沈んでいる時に、できていないことを指摘されたり注意されたりすると、子どもは必要以上に反発したり、心の状態が悪化し「どうせ自分なんて…」とさらに自信を喪失してしまいます。
なので、とにかく子どもには肯定的に関わり、「大丈夫!今のままでOK!できているよ」を伝えてあげましょう!
自信を取り戻してあげることが重要です。
子どもが学校から帰宅後、すぐにゲームやYouTube三昧だったり、無気力な子どもの様子をみていると、心配になったりイライラしたりしますよね。
しかし、家庭は、中学校で疲れた心身を癒す安全地帯としてあげましょう。
子どもは中学校で1日必死が頑張って帰ってきます。
それなのに、「宿題は?」「お便りあったら早く出してね」等と矢継ぎ早に言われては、子どもは気が休まりません。
とにかく指示出しは厳禁です!
できていないところはスルーして、できているところや行っている行動をそのまま言語化して、褒めてあげましょう。
・お、着替えたんだね。
・〇〇ゲーム、上手になったんじゃない?!
・いい顔しているね
何気ないことでも肯定されると、自分に自信をもつことができ心も安定していきます。
心が安定すれば、学校での刺激を受け取りすぎることを防ぎ、疲れを和らげることもできるのです。
◆③春からの成功体験の振り返り
2学期に入り、必死に毎日を過ごしていると忘れがちなのが、入学してからの子どもの頑張りです。
子どもの頑張りを戦略的に振り返り、成功体験の記憶として刻んであげましょう。
自信を回復してあげることで、2学期のパワーにつながります。
子どもは、中学校に入学してから、何もかも初めての環境で緊張や不安の中、毎日頑張ってきました。
しかし、2学期に入り心は辛い気持ちで覆われ自信をなくし、自分の頑張りや成功体験は遠い記憶の彼方で、思い出すことなんてできません。
そこで、私が実践したのは、ソファーでゲームをしている子どもの横に座り、携帯の写真を見せながらの会話です。
「夏の合宿だけど、2泊もしたんだよね~」
「部活場所に、自転車で行けるようになったよね~」
「この体育際のダンス、上手だったよね~」等
会話をしながら、その時の状況や感情を思い出させてあげましょう。
そうすることで、「あ、自分結構頑張っているじゃん」と再確認することができます。
そして、「学校もがんばってみようかな」と少しずつ前向きな気持ちも生まれてきます。
このように、家庭では1日学校を頑張って疲れた心と体を癒す楽しい空間になるようにしました。
すると、子どもの心が少しずつほぐれ、ストレス耐性も高まり、中学校生活の負担が少しずつ減ってきているように感じます。
いつか、「学校嫌だな」が「学校別に嫌じゃない」に変わってくれるように、今後も見守っていきたいと思っています。
焦らず、子どもの心を安定させてあげることから始めましょう。
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執筆者:松あき子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)