何回指示を出しても理解している様子が見られない、話を聞いていないように見えるというお子さんにお困りではありませんか?おうちで指示理解力を伸ばす方法をご紹介します!
【目次】
1.人の話を聞いていないように見える発達障害の子ども
2.口頭の指示が苦手な理由
①注意欠陥多動性障害(ADHD)
②自閉症スペクトラム障害(ASD)
③聴覚情報処理障害(APD)
3.おうちでできる!指示理解力を伸ばす方法とは?
1.人の話を聞いていないように見える発達障害の子ども
何度指示を出しても伝わらない、話を聞いていないように見えるお子さんいますよね。ちゃんと指示を聞いてほしい、話を聞いてほしいと思い悩んでいませんか?
発達障害の子どもは口頭での指示を理解することが難しく、指示を聞いてもらうためには「指示の出し方」にポイントがあります。
指示を出すとき、どんな風に声をかけていますか?
「○○を△△して夕方頃に□□さんに渡してくれる?」
「もうちょっと待っててね」
「あそこにしまっておいて」
こんな指示の出し方をしていませんか?
このような口頭での指示は、発達障害の子どもには理解することが難しいのです。
わたしの息子は注意欠陥多動性障害(ADHD)です。
口頭の指示を聞いていないように見られたり、理解できずに困っていることがあります。
ちゃんと指示を聞いて行動しようねと伝えても、 なかなかその指示通りに行動することができなかったり、 そもそも話を聞いていないこともあります。
この時の声のかけ方がよくなかったんですね。
じゃあ、どんな声かけをすれば口頭の指示を聞けるようになるのか?
おうちでできる方法をお伝えしますね。
2.口頭の指示が理解できない理由
ADHDやASDといった発達障害のある子どもに限らず、口頭での指示を聞いて理解することが苦手な人は、実は定型発達の子どもや大人でも多いんです。
その理由がわかれば、口頭の指示への苦手意識や対応する方法を身につけることができます。
◆①注意欠陥多動性障害(ADHD)
ADHDの特性に「不注意」「多動・衝動性」があります。
見られる特性は以下のとおりです。
・集中力が続かない(気が散りやすい)
・時間の管理や整理整頓が苦手
・細かいところに注意を払うことが難しい
・話しかけられているのに気づかない、聞いていないように見られる
・忘れものや失くしものが多い
・好きなことや興味のあることに対して過度に集中してしまう(過集中)
・大事な予定を忘れてしまう
・マルチタスクが苦手
・ワーキングメモリが弱い
・他のことに気をとられやすい
この中の「ワーキングメモリの弱さ」が口頭の指示が聞けない一因となっています。
ワーキングメモリとは、入ってきた情報を数秒から数十秒の間一時的に記憶し、物事を処理する脳の働きです。
会話をしたり計算をしたり、日常生活のさまざまな活動に関わっています。
短期記憶を保持することが難しいこと、マルチタスクが苦手といった特性から、耳から入ってきた情報を集中して覚えておくことが難しいのです。
また、他のことに気を取られやすい特性もあるため、人の話を集中して聞くことが難しく、口頭での指示を聞き逃してしまうことも多いのです。
◆②自閉症スペクトラム障害(ASD)
ASDの場合、「共感能力の低さ」があります。
他者と共感することが苦手なので、相手の言葉から指示を理解することが難しいのです。
また、「曖昧な言葉」を理解することが苦手という特性もあるため、
・もうちょっと
・あと少し
・適当に
といった指示を理解できず、困ってしまうことが多くなってしまいます。
対人のコミュニケーションが苦手という特性もあり、相手と目を合わせることが苦手なため、口頭での指示がとおりにくいこともあります。
◆③聴覚情報処理障害(APD)
聴覚情報処理障害(APD)とは、
・聞こえているのに言葉を聴き取れない
・言葉の聞き間違いが多い
・言葉の内容を理解するのに時間がかかってしまう
・聞き返しが多い
・長い話を注意して聞き続けることが難しい
という状態にあることをいいます。
難聴や聴覚障害とは違い、聴覚検査での異常がないのに音声の聞き取りが難しく、発達障害や脳機能の障害、心理的影響が原因で発症することがあります。
口頭での指示を理解するのに時間がかかってしまうため、 話を聞いていないように見られてしまうことがあります。
指示を聞きなおすことも多いため、
・聞いていない
・理解していない
・やる気がない
と思われがちです。
そんなつもりはないのに…と自分を責めてしまい、うつなどの二次障害につながることもあるので、早めの対応が必要と言われています。
3.おうちでできる!指示理解力を伸ばす方法とは?
では、口頭の指示を理解することが難しい人は、どのようにすればいいのでしょうか?
理解力を伸ばすことは難しいように感じますが、おうちで理解力を伸ばす方法があるんです!
それは「マンガを読むこと」なんです。
小さいお子さんなら、絵本がいいですね。
なぜマンガを読むことが理解力を伸ばすことにつながるのかというと、 マンガは「絵」と「文字(会話)」で成り立っています。
マンガは複数のコマが多数組み合わさって構成されており、文法や登場人物の表情・アクションなどを読み解きながら読み進めていく必要があります。
たとえば「登場人物の泣き顔」と「会いたかった」というセリフから 「久しぶりの再会」という情景を読み取ることができます。
同じ泣き顔でも、「ひどい…」というセリフであれば「ひどいことをされて悲しい気持ち」という情景に変わります。
マンガを読み進めるためには、登場人物の表情や会話の内容、物語の意図を読み解く理解力が必要となるため、マンガを読むことで理解力が鍛えられるのです。
また、マンガで物語を読み進めることで語彙力がアップするので、たくさんの文法を学ぶことができ理解力があがります。
マンガを読みなれているお子さんであれば、小説にチャレンジするのもおすすめです。
マンガと違い、文脈から登場人物の気持ちや背景を読み取る必要があるため、「こういうことじゃないかな?」と感情を推測することで、共感力を高めていくことが期待できます。
好きなジャンルや興味のあるストーリーなら、集中して読むことができるのでオススメですよ。
口頭の指示が理解できない子どもの多くは、
・何を言っているかわからない(言葉の意味がわからない)
・指示そのものが何を指すのかがわからない(経験したことがないなど)
ということがほとんどです。
指示を出す側も、抽象的な言葉や難しい言葉を使うのではなく、
・端的に
・わかりやすい言葉で
・短い時間で
指示を出すといいでしょう。
耳からの情報を覚えておくことが苦手な場合は、メモを取るなど工夫することも必要です。
その際は、指示を出す側の人へあらかじめ事情を説明しておくとよいでしょう。
苦手なことを克服するためには、周りの人の理解と協力も必要です。
口頭の指示が理解できない原因が何なのか?困っている子どもから話を聞いて、対応してあげてくださいね。
指示が通らない子どもに困ったらこちらをチェックしてくださいね!
執筆者:村上 惠子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)