ASD傾向の子どものこだわりが強いことを心配していませんか。ASD傾向の子どもは想定外のことへの対応が大の苦手で安心できる状況にこだわっているのです。この記事ではママとの遊びの中で徐々にこだわりを和らげていく方法をお伝えします。
【目次】
1.ASD傾向の子どものこだわりが強い!心配でたまらない幼児期
2.こだわりが強い理由は想定外のことへの対応が苦手だから
3.ママとの遊びの中で楽しくこだわりを和らげる3ステップ練習法
1.ASD傾向の子どものこだわりが強い!心配でたまらない幼児期
子どものこだわりの強さを「このままで大丈夫かな」「もう少し和らげられないだろうか」と心配していませんか?
ASD(自閉スペクトラム症)傾向の子どものこだわりを和らげるポイントは、想定外のことへの対応をスモールステップでママと練習することです。
ASD傾向の子どもは不安が強いために、いつも同じで安心できる人・もの・状況にこだわってしまうのです。
わが家の息子は現在小学校2年生。発達障害の診断はありませんが、ASD傾向があるグレーゾーンの子です。
息子は1歳頃からこだわりが強く、わたしは違和感を抱いていました。
特に対人関係において1対1の関係にこだわる点には困っていました。
・ママと2人で遊んでいる時は、パパは仲間に入れない。
・祖母と会話している時に祖父に話しかけられると無視する。
・支援センターや公園では他の親子と絶対に絡まない。
わが家は、一人っ子・夫は単身赴任という状況でわたしと過ごす時間が長いからママ以外の人に慣れていないだけだと思っていました。
しかし、少し大きくなっても人に慣れるどころか1対1へのこだわりが強くなったのです。
幼稚園で気の合うお友だちができたものの、他の子に話しかけられても無視したり、仲間に入れない素振りをしたりしている姿を見てしまい、ショックを受けました。
わたしはもう息子のこだわりをこのままにはしておけないと思いました。
「このまま大きくなったら対人関係でトラブルだらけになってしまう」と心配でたまらなくなったのです。
原因や対策を調べる中で、発達科学コミュニケーションの記事の中に「ストライクゾーンが狭い」という言葉を見つけました。
「ストライクゾーン=受け容れられる幅が狭い」というASD傾向の特性が、1対1の対人関係にこだわる息子の状態をぴったり表していると感じ、発コミュを学び始めました。
この記事では学んだからこそ分かったASD傾向の子どものこだわりが強い理由とママとの遊びの中でこだわりを和らげられるスモールステップの練習方法をお伝えしていきます。
2.こだわりが強い理由は想定外のことへの対応が苦手だから
ASD傾向の子どものこだわりが強い理由は、不安が強いために想定外のことへの対応が大の苦手ということです。
不安が強い子は、わたしたちが気にしないようなことにも大きな負担を感じています。
そのため、自分が安心できる狭いストライクゾーンの中に閉じこもっているのです。
例えば、次のような場面でのASD傾向の子どもの心理を考えてみましょう。
①幼稚園でいつも遊ぶ友だちAくんと1対1で楽しくブロックを作っていた。
②そこへBくんが近づいてきて「面白そう!ぼくもやりたい!仲間に入れてよ。」と普通に声をかけた。
③たちまち子どもの表情が変わって「ダメ!遊べない!」ときつい言葉でBくんを押し返した。
この場面での子どもの心理は次のように考えられます。
①は1対1の関係で、次に相手がどんなことを言いそうか、どんな動きをしそうか予測できる安心・安全のストライクゾーン。
②ではBくんの登場という子どもの想定外のことが起こり、これからどうなるのか予測できなくなり、安心・安全が脅かされ不安になった。
③ではAくんとの楽しい遊びをこのまま続けるためにBくんを拒絶して、ストライクゾーンの中に居続けようとした。
一見ワガママで、「頼まれたら仲間に入れるのが人間として当たり前でしょう!」と言いたくなるような場面です。
しかし、ASD傾向の子どもの不安の強さから生まれる「Aくんとの楽しい遊びが壊されてしまったらどうしよう」という気持ちは脳の特性によるものなのでワガママではありません。
「誰とでも仲良くしようね」という大人の教えを守りたくても、「みんなで遊ぶのは怖い。楽しくできなかったらどうしよう」という不安な気持ちが小さな胸の中で大きく膨らんでしまうのです。
ASD傾向の子どもは、1対1というストライクゾーンの中に居続けることで必死に自分の心を守っているのですね。
次の項では、ママとの遊びの中で想定外のことへの対応をスモールステップで練習し、ストライクゾーンを広げていく方法をお伝えします。
3.ママとの遊びの中で楽しくこだわりを和らげる3ステップ練習法
ASD傾向の子どもが1対1の対人関係にこだわるのなら、一番安心できるママと1対1でストライクゾーンを広げていく練習をしましょう。
やり方は簡単です。ママが一番の親友になって2人で思い切り楽しく遊ぶのです。
わが家では、遊び方を3つの段階に分けてスモールステップでストライクゾーンを広げていきました。場面は息子が好きなプラレールを使ったごっこ遊びです。
◆ステップ1:ママが子どもに完全に合わせる
子ども:「ぼくは新幹線を走らせるね。ママは山手線を走らせてね。」
ママ:「OK」
これは完全に見通しが立つ状況です。
◆ステップ2:ママも自分の意見を伝えてみる
子ども:「ぼくは新幹線を走らせるね。ママは山手線を走らせてね。」
ママ:「ママは、この赤い特急を走らせてみたいな。息子くんどうかな?」
ここでは少し想定外のことが起きる状況を作ります。
◆ステップ3:3番目の登場人物としてぬいぐるみを登場させる
子ども:「ぼくは新幹線を走らせるね。ママは山手線を走らせてね。」
ママ:「OK!ウサギくんはどこの駅から乗りますか?」
ウサギ(ママの声):「ぼくは東京駅から乗りたいでーす!」
ここではママの声ではありますが、3人目が登場して更に想定外の展開になります。
ステップ1の完全に見通しが立つ状況でたっぷりと遊ぶと子どもに自信がつきます。
徐々にステップ2、ステップ3を試してみます。
ママと1対1の楽しい遊びの中で、想定外のことが起きたり、3人目が登場したりした時の対応を練習していくのです。
ママと1対1とはいえ、子どもは想定外の状況に不安になって不機嫌な態度を取ることもあります。
これはストライクゾーンを広げる練習ですから、子どもの不機嫌な言動も否定せずに受け容れましょう。
「息子くんはやっぱり山の手線がいいんだね。OK!」「ウサギくんはまたの機会にするそうでーす」などサラッと受け流して、遊びを思い切り楽しむことがポイントです。
うまくいったりいかなかったりを繰り返して、息子は今では5体ほどのぬいぐるみが登場して、想定外の状況になっても対応できるようになってきました。また、息子の遊びの展開もわたしの想定を越えてくるようになりました。
ステップ2・3でも不安なく遊べる段階になると、家族でピクニックに行った際に3人全員でのラジコン遊びを楽しむことができるようにもなりました。
ごっこ遊びを通して、実生活でのこだわりが和らいだことを感じました。
ASD傾向の子どものこだわりが強い理由について正しい知識を学ぶことで、子どもの気持ちに寄り添いながらスモールステップでこだわりを和らげていくことができます。
焦らずに楽しく取り組んでいきましょう。
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執筆者:はた まゆ子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)