発達障害・学習障害グレーゾーンのお子さんの「勉強の苦手」は特性の1つ、不器用さからきています。その不器用さには、様々な要因が影響しています。タイプ別の解説と、お子さんの勉強嫌いをこじらせないために、親が意識すべき接し方をお伝えします! |
【目次】
1.発達障害・学習障害グレーゾーンの子の「勉強の苦手3つのタイプ」
◆タイプ1:見るチカラに苦手があるタイプ
◆タイプ2:書く作業な苦手なタイプ
◆タイプ3:情報を整理できずに結果的にアウトプットが雑になる(ワーキングメモリの弱さ)
2.勉強の苦手が気になった時の対応例
◆サポートの先生の協力を借りる
◆ICT(タブレットなどのIT機器)の利用
3.勉強嫌いや困りごとをこじらせないために大切なのは「勉強への意欲を失わせないこと」
1.発達障害グレーゾーンの子の「勉強の苦手3つのタイプ」
発達障害グレーゾーンのお子さんのお母さんから聞く「勉強の苦手」の中で多いものの1つが「字が汚い」 「ノートを綺麗に書かない」という不器用さのお悩み。
今日は不器用さからくる、グレーゾーンのお子さんの”苦労”のお話です。学習時の不器用さが気になる子には、いくつかのタイプがあります。
◆タイプ1:見るチカラに苦手があるタイプ
例)字や数字の形を覚えるのが苦手
例)字が枠からはみ出してしまう
文字の形を見て覚えること、空間や枠を把握するチカラに苦手さがあったり、焦点を移す”目の動き”に苦手さがあったりします。目の動きに苦手さがあると、板書(黒板とノートを交互に見ること)が不得意になることもあります。
◆タイプ2:書く作業が苦手なタイプ
例)揃えて文字を書くのが苦手
例)筆圧の調整が難しい
このようなタイプのお子さんは、手を使うこと自体に苦手さがあります。運動(スポーツではなく、体の動きのことを指します)の中でも「微細運動」(指先などの細かい動き) が苦手なタイプは、学習時の動作にも苦手さが出ることがあります。
◆タイプ3:情報を整理できずに結果的にアウトプットが雑になる(ワーキングメモリの弱さ)
例)板書が苦手
ワーキングメモリとは一時的に情報を記憶したり、整理する脳の働きのことです。
例えば、板書なら黒板を見る、一時的に記憶する、頭で整理して、ノートに書く、この一連の流れを行うのですが、こういった複数の処理を同時に行うのが苦手なので、結果的にノートをグチャっと書いてしまう。
つまり、ワーキングメモリ(作動記憶)が弱いと、聞きながら書く、読みながら意味を考える、など一度に複数の処理をすることに対して苦手さがでてきます。
グレーゾーンのお子さんの書くことの不器用さには、こういった様々な要因が影響しています。
話させたら流暢に話すのに書かせると雑。こんな様子をみた大人は「やればできるのにやらない」「努力不足」と勘違いして、子どもを叱ったり注意したりしがちです。これが勉強嫌いのパステルキッズが、やる気を失っていく理由でもあります。
2.勉強の苦手が気になった時の対応例
もし、お子さんの勉強面での不器用さが気になったら、その苦手を克服するトレーニングだけにとらわれず、こんな対応をしてみてください!
例えば… 教室でICT(タブレットなどのIT機器)の利用を許可してもらい、書かずにノート代わりの記録を取れるよう学校と交渉してみてもいいでしょう。
書くことができるけど、空間把握が苦手で適切なサイズの文字をかけない。というようなお子さんは、大きい文字でかけるのであればそういったノートを用意してあげるなど、その子にあった道具や環境を整えてあげるのも一つの方法です。
勉強の苦手さに対して、工夫をされたお母さんたちの事例がありますので、少しご紹介しますね。
◆サポートの先生の協力をお借りする
まずは、小学校4年生女の子のママからのレポートです。
板書の量が増えて、次第にノートを取ることについていけなくなってしまい、その時サポートの先生がついてくれ、先生がノートを書いてくれたそうです。先生が書いている間、娘さんは何をしていたかというと、黒板の読み上げ係。
読むことに苦手がない子なら、こんな形で授業にも参加しながら、サポートを受けて勉強する方法もありますね。…とはいっても、現状、加配(サポートの先生を増やす)が可能な学校は多くはありません。教員の数が足りていないからです。
私も、スクールカウンセラーを通じて加配のお願いをしたこともあります。PTAから教育委員会に働きかけたこともあります。しかしながら、グレーゾーンのお子さんたちの困り感は、なかなか理解されません。
加配するほどではない、と誤解されやすいのでそこまでの配慮はしてもらえませんでした。そうなると、今度は今いる先生方の協力を得ながらやっていく、という方法になりますよね。
その場合のポイントは、お母さんがお子さんの特性をしっかり理解して、先生にわかりやすく伝える!ということです。
◆苦手をカバーする環境を整える
次に小学校3年生男の子のママからのレポートです。
息子さんは、連絡帳を書くのに時間がかかり、帰りの会で書くと雑になるので昼休みにゆっくり書いたり、連絡帳には書かずに、口頭で説明したことは付箋で個別にメモをもらうことにしたそう。
そのようにして聞き忘れた、書き忘れた、をガミガミいわなくていい環境を整えることに注力したそうです。
◆ ICT(タブレットなどのIT機器)の利用
最後に小学校5年生男の子の例です。
頭の中ではしっかり考えていたり、会話はスムーズにいっているのに作文や漢字、読書感想文など、書くスキルだけがレベルが低く、ここまでくると、トレーニングだけでどうかなるものでもないと思い、持参したiPadを使わせてもらうよう交渉したそうです。
時間はかかりましたが、6年になってからは許可をもらい、iPadのカメラで黒板を撮ったり、音声入力で文書を書く、などの方法に切り替えたそうです。
最近は、学習アプリなども充実しています。お子さんが興味を持って楽しく取り組めるものがあれば、取り入れてみてはいかがでしょうか?
3.学習障害や勉強嫌いの子の困りごとをこじらせないために大切なのは「勉強への意欲を失わせないこと」
上記の例のように学校の理解、協力を得られればラッキーです。とてもラッキーです!ですが現実の学校生活はそう甘くありません。
「●●君だけ特別扱いをすることはできません」
「やる気がない子にはそういったサポートはできません」(やる気がないわけじゃないんですけどね)
中学に上がれば 「教科ごとに担当が違うのでそういった対応は無理です」 などなど…これでもか!というくらい、個別対応を拒否する先生もいらっしゃいます。でも、それって当然なのです。
中学の担任を持つ先生は「学級全体をいかにスムーズに運営するか」 「いい進路にどれだけ多くの生徒を進めさせることができるか」 これが最重要事項です。
発達支援の知識を持っている先生もまだまだ少ないですし、どう対応していいかもわからない。それまで学んできた「集団で子どもたちをみる」というやり方を変えるのが難しいので結局、グレーゾーンの子どもたちを、集団の中へなんとか収めようとしたくなるのです。
「個別に対応する」という発想もないし、どう対応したらいいかという知識も、残念ながらお持ちでない先生が多い。だからこそお母さんがしっかり知識をもって学校の先生を「育てていく」コミュニケーションをとってほしいのです。
先生にお子さんのことを理解していただくために、お子さんについての詳しい情報を伝えましょう。
例えば得意・不得意、好きなこと・嫌いなこと、お子さんの特性や、感覚の過敏性の有無、また、日頃のお子さんとのコミュニケーションの中で見つけた、関わり方のヒントなど、についてお伝えいただくといいですね。
万が一、先生が協力してくれなくてもそれはそれで仕方がありません。そんな時は、家での対応を整えておけば安心です。
学習のこと、成績のこと、学校のこと、となるとつい学校ばかりを頼りにしたくなりますが、実は「学校」だけでなく「家」での対応を整えておいてほしいのです。その対応を誤らなければ、子どもたちが今よりも勉強嫌いや、困りごとをこじらせるリスクは減ります。
学年が大きくなればなるほど「学習」を理由に子どもたちが不登校になる人数は増えていきます。発達の特性があって、勉強の苦手のある子に
「もっと勉強しろ」
「なんとか成績をあげろ」
と言い続けるだけでは、子どもたちが学習を理由に学校にいけなくなるのも無理はありません。
上記の経験談のように、その子の苦手をカバーできるiPadや教育アプリなどの道具を活用したり、先生にお子さんについての詳しい情報をお伝えして、学校と家庭の連携がとれるような環境を整えるなど、学習への意欲を失わせないこと。
学年が上がればあがるほどこれを意識して接してほしいと思います。
発達障害グレーゾーンのお子さんの勉強嫌いをこじらせない!「苦手」の原因と、お母さんがするべき対応をお伝えします!
執筆者:清水畑亜希子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)