発達障害・自閉症スペクトラムの診断が出ている4歳の息子のことで相談です。自分の欲求が通らないと、癇癪や暴言などが激しくなり対応に困っています。叱ったり、お菓子で誤魔化したりすると、その場は落ち着くこともありますが、また毎回同じ結果になります。どう対応すればよいのでしょうか。
4歳・男の子のママ
息子さんの癇癪や暴言、暴力。お母さんとしては辛いですよね。私の息子も自閉症スペクトラムで4歳頃はかなり暴言、暴力に悩まされましたが、今は癇癪や攻撃的な行動は殆どなくなりました!どんな対応が効果があったかご紹介します。
発達科学コミュニケーション
リサーチャー 瀬名香織
【目次】
1.発達障害・自閉症スペクトラムの子どもの癇癪・暴言・暴力に悩んでいませんか?
発達障害・グレーゾーンのお子さんのママからは、「癇癪」「暴力」「暴言」のご相談がとても多いです。
何を隠そう、私もこの3つにはかなり悩まされた1人です。
息子は自閉症スペクトラム(ASD)の診断が出ていて、様々な発達特性があります。
癇癪、保育園の行きしぶりから始まり、とにかく手が出まくって、あまりの攻撃性に保育園では1人個室に隔離された経験もあります。 (もちろん先生は1人必ずついてくださいました)
当時は、私も謝罪の毎日。息子に「どうして叩いちゃったのかな?」と何とか寄り添い、気持ちを理解しようと必死でした。
そして、人好き、お友達好きの息子が、周りを攻撃して孤立する姿を見るのが何より辛かったです。
そして「今日も1人のお部屋なの?」と毎朝悲しそうに聞いてくる息子にかける言葉も見つからず、毎日2人で泣きながら通園していたことを思い出します。
2.癇癪・暴言・暴力の原因は何?
今なら息子の攻撃性の理由ははっきりと分かります。
原因は、欲求が通らないときに湧き上がる感情を言葉で伝えられず、暴力や癇癪で伝えるということを誤って学んでしまっていたからなのです。
そして、自分の感情が相手に伝わらないことで、さらに不安・不満が強くなってしまったということでした。
息子のように、発達障害の自閉症スペクトラムの子は特に、自分の中の感情に気付きにくいという特性もあります。気付いていても言葉で表現できないことが多々あるのです。
息子の場合は、言葉も遅く日常会話もぎこちないところがあり、言いたいことが言えずイライラして泣くということも多々ありました。
相手に何か要求を伝えたいとき、暴言・暴力ではなく適切な方法で伝えるということは集団生活に必要なソーシャルスキルの1つです。
幼児期の早いうちに、遅くとも小学生の低学年のうちにしっかりと対応しておくことが大事です。
3.癇癪・暴言・暴力への対応でやってはいけないこと
発達障害でなくても、特に幼児期の間は自分の欲求が制限されたときに、激しい癇癪を起すことが多々あります。
最終的に親やきょうだい、お友達に対して暴力を振るってしまう…振るわれた方も振るった本人の中にも不快感が残るものです。長引かないように何とか対応しておきたいですね。
子どもの要求に従うと、その行動は一旦は止まります。元々の要求には従えなくても「じゃあ、これをあげるから」などと言って別のものを渡して収まるかもしれません。
暴力を暴力で返すこと以外であれば、場当たり的な一次凌ぎの対応が絶対ダメだとは思いません。けれど、この繰り返しでは根本的な解決や成長にはつながりません。
以前の私もとにかくその場を収めたくて、本人の要求を叶えることで回避しようとしていた時期がありました。先回りして対応しようと気持ちを常に張り詰めていたので、疲れ切っていたように思います。
後々気付いたことは、毎回子どもの要求や言動に付き合うのは、丁寧な接し方とは言えず、ただ振り回されているだけ…ということ。
本人にとっても、私自身にとっても良い対応ではなかったのです。
4.正しい対応「スルー&定着」
子どもは、癇癪や暴力・暴言のたびに親から要求に応えてもらえるという経験を積むと、本来は止めて欲しい行動(癇癪や暴力・暴言)を繰り返すようになってしまうことがあります。
怒ったり、叩けば、思い通りになるというご褒美がもらえていることになるのです。
叱ることも然りで、叱られる=かまってもらえる、というご褒美になることもあります。
また、共感として「〇〇が欲しいんだね。分かるよ~」など、本人の気持ちに寄り添った言葉をかけることも大切ではあります。
しかし、癇癪がひどくなり暴力をふるうまでに興奮している状況では、耳に届きません。
そんなときの解決法の1つの方法として試して欲しいのが「スルー(無視)+定着」です。
例えばこんなとき…
夕飯を作っているときに、子どもが一緒に遊びぼうとキッチンまで言いに来ます。できるだけ一緒に遊んであげたいとは思うものの、どうしても手が離せないときってありますよね。
「あと5分待ってね」「これを洗い終わるまで待ってね」
で待ってくれるときは良いのですが…
「やだ!今遊びたい!もうお料理やめて!」
と怒り出すときもあると思います。
私の息子は少し前までは、私が相手をするまで叫び続けたり、蹴ったりしてくることが多かったです。
繰り返し注意するものの、それでも止めない場合に試して欲しいのがこの「スルー」なんです。
どんなに怒って攻撃してきたとしても、怒った表情や視線を送らず「いつも通り」「普通」の態度でいることが大事です。
スルーすると言っても、子どもが横で泣き喚いているとどうしても感情が巻き込まれてしまうものです。
ですので、スルーするときに感情が巻き込まれないよう、その間やることを決めておくのがオススメです。
例えば、キッチンにいるのなら「引き出しを片付ける」「シンクを磨く」「お皿を洗う」など。
ただし、そのことに夢中になるのではなく、安全のためにも本人に気付かれないように、必ず目の片隅で様子は見ておいてくださいね。
そんな冷たい対応ちょっぴり可哀想・・・と心配されるママもいらっしゃるかもしれません。少し別の視点で考えてみましょう。
例えば、野球の試合で監督が審判に激しく抗議するシーン。
あんなに大声で怒鳴りあっているのに、監督と審判の身体は、ギリギリ触れるか触れないかの近さ。ほんの少しでも審判に触れたら退場!なぐるそぶりを見せても退場。
激怒しても絶対に手を出さない、ということは可能なのです。
怒る気持ちは自然と湧き出てくるものなので、それを否定はしないで欲しいです。怒りたい気持ち、思いや意見を相手に伝えることは大事なことです。
しかし、暴言や暴力では何も解決しないのだ、ということはわかってもらいたいですよね。そして、怒ったら手が出る、というパターンはできるだけ早いうちに断ち切っておきたいですね。
子どもは、怒っても、泣き喚いてもお母さんが反応してくれないと悟ると、時間の経過とともに落ち着いてきます。
そして、必ず、落ち着いたらしっかりと褒めてあげてください。
「我慢できてかっこよかったよ!」
「ママ嬉しかったよ!」
「ママ嬉しかったよ!」
スルーの途中でイライラしたり、構ってあげたくなることも出てくるかもしれませんが、一度スルーすると決めたら、落ち着くまでスルーし続けてください。お子さんを信じて待つ、という気持ちで挑戦してみて欲しいなと思います。
泣き喚いてもお母さんは反応しないけれど、落ち着いたら褒めてくれる。
これを繰り返していくうちに、怒らずに落ち着いている状態が定着していくことになります。
大人がドン!と構えて、子どもの暴言や暴力に振り回されず主導権を持つ姿勢が大事です。
とても大事なポイントですが、どんな効果的な対応だったとしても、お互いの信頼関係がないと成り立ちません。日ごろからお母さんが肯定的なコミュニケーションを取っているからこそ子どもが変われるのです。
今でも自分の欲求に正直な6歳の息子ですが、怒っても暴言や暴力で訴えてくるようなことは殆どなくなりました。
しかも、先日とても嬉しいことが!
キッチンで食事の後片付けをしていたら、「ママー、遊ぼう」と誘いに来ました。私が片付けをしている様子を見た息子は、「それ終わってからでいいから遊ぼうね」と言ったんです!
成長を感じるとても嬉しい瞬間でした。「待っててくれる?ありがとう。終わったらすぐそっちに行くね!」と伝えると満面の笑みです。
そして、終わって遊び始めるときにも「さっきはお片付け終わるまで待ってくれてありがとう。かっこよかったよ!」としっかり褒めて肯定します。
我慢した先に楽しいことがある、お約束を守れると気持ちがいい、とここでしっかり学べることになります。
焦らず、じっくりと。肯定的なコミュニケーションが良い行動を定着させていくという意識で、一緒にがんばりましょう!
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執筆者:瀬名香織
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)