発達障害・グレーゾーン9歳10歳の時期は、自己肯定感が下がりやすい経験がたくさんあります。親のかかわりで自主的な学習習慣まで身につく家庭支援のポイントを2つに分けて解説します。 |
【目次】
1.9歳10歳ってどんな時期?
子どもの心の発達は、小学校低学年までは「自分」が中心です。
2~3歳には自我が芽生え、親の指示に「いや!」「だめ!」と反抗して自分のやりたいことをどんどん主張できるようになります。
4~5歳では、自分が嫌な気分になったら遊びの途中でも「やーめた!」と放棄したりもします。
幼児期のうちは、自分が相手からどう見えるか?を意識することがまだ難しいからです。
その後もグループでルール遊びなどを経験しながら、小学生になるころには途中で放棄したりはせずに我慢して遊ぶことができるようになっていきます。
そして、9歳10歳になるとそれまでとは違って大きな内面の転機を迎えます。
◆『自分と他人を意識できるようになる』
親しい友達がどんな気持ちなのか?と心の中を想像したり、自分以外の「ほかの人」を考えるようになります。
◆『感情と行動の発達が複雑になる』
「うれしい」けど「かなしい」…など、入り混じった感情を自分自身で認識できるようにもなります。
友達の立場を自分に置き換えることができるので、自分と友達を比べて劣等感を抱えたり、思いっきり行動を起こせなくなるという変化が現れてきます。
◆『考える力が発達』
「見えない」けれどつながりがある、という抽象的な概念に気づき始めるのもこの頃です。
本人の力だけで乗り越えていくことはできませんが、できないことをすべて大人が助けていては本人の力にならないことを大人は知っていますよね。
知恵や手助けをどこまで差し伸べるか?を考えることが、周りにいる大人の役目になります。
2.発達障害×9歳10歳の自己肯定感が下がるとどうなるの?
9歳前後の内面の発達に合わせて、小学校の学習指導要領も変化していきます。
興味・探求心が広がる年齢なので「せいかつ」は「社会と理科」に細分化され、より深い学びにつながるように授業数が組まれます。
また、自主性や主体的な活動が可能になるため選択制の「クラブ活動」が始まり、社会や理科と同等の授業数が設けられます。
「自分のことは深く、コミュニケーションは広く」と求められていることがわかりますね。
ですが発達障害・グレーゾーンの特性がある場合は学校で以下のことにつまずきやすくなります。
・聞くこと、考えることが苦手で文章の意味を理解できない
・話すことが苦手なので筋道を立てて人前で話せない
・計算、推論が苦手で数の表し方や文章題が理解できない
宿題やテストの評価があるので、発達障害・グレーゾーンの子どもたちも自分の苦手なところを「できない!」と認識しています。
問題の間違いや、難しい!!と思う経験が続くと、
・「何をしてもどうせダメだから」と最初からあきらめる癖がつく
・考えても考えてもわからないから、やる気を失ってしまう
ということが起こり、自信を失って自己肯定感が下がってしまいます。
困難に立ち向かう意欲・目標を達成しようというモチベーションが小さくなり、自主性が育たなくなってしまうのです。
3.学習習慣が身につく家庭支援のポイント2つ
「ポジティブであれば自己肯定感が上がる」ということではありません。
子どもたちに本当に必要な自己肯定感は「ダメなところもある自分を受け入れつつも、気持ちを立ち直して困難を何とかしようとする力」です。
そのためには、子どものできない部分も認めながら、励まし支えてくれる存在が必須です。
親は本人のペースにあった学習支援のポイントを押さえて、お子さんが将来自分で活用できる知恵になるようにしていきましょう。
①自信につなげる「客観性」
発達障害・グレーゾーンの子どもは、学習する順序の見通しを自分で立てることが苦手です。
いきなり大きな目標を立ててしまう場合などは、親が目標を小さなステップに切り分けて達成を手伝ってあげましょう。
また時間感覚が希薄なので、学習に取りかかる時間・課題の始まりと終わりを、親が一緒に確認をします。
自分の学習に客観性を持たせるためのポイントは2つです。
・大きな目標は小さなステップに区切り、ステップを達成するごとに必ず褒める
・始める時間やページは指差し、付箋などで一緒に確認、学習中も見えるように視覚化
できた!の経験を増やして自信をつけ、劣等感を減らしましょう。
やること・できたことを視覚化して確認する癖をつければ、自分を客観的に自己評価できて将来自分で計画を立てるときに役立ちます。
②「粘り強さ」を育てよう!
9歳前後になると自分の活動の「結果」に関心が出てきます。
評価される絵を描こう!としたり、テストで正解が出せるか?などを気にするようになります。
特に自閉症スペクトラム(ASD)タイプの子どもは、わからない問題の答えは書こうとしなかったり、渾身の力作が評価されなかったりすると取り乱したりすることがあります。
「○○であるべき!」という価値観にとらわれやすい特性を持っています。
それを軽減していくためにも
・間違いは指摘せず、改善方法を一緒に考えたり教えたりする
・作品などは「最後まで仕上げたんだね!」「これが完成したところが見たいな」など感想を伝える
などの親の対応が必要です。
・問題点はどうやったら改善できるのか?
・どの部分を頑張れば成功できるのか?
という部分を本人の気づきになるよう言語化して、問題解決力や粘り強さの必要性に気づく機会をつくりましょう。
ドリルを穴埋めすることに毎日時間を費やす習慣で主体性は生まれません。
発達障害・グレーゾーンの子ども本人が自分で問題に気づき、取り組んでいく習慣が身につけば、未来につながる「生きる力」になっていきます。
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執筆者:あらいまい
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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