発達障害・ADHDの子どもは現在、幼稚園に通う6歳です。着替え中に手が止まる、歯磨き中に遊びはじめるなど集中力が続かず支度が遅いためいつも遅刻ギリギリです。どうしたら早く支度できるでしょうか?
6歳・女の子のママ
いつも遅刻ギリギリとなると、お母さんもつい心配になってイライラしてしまいますよね。発達障害ADHD傾向のお子さんは、一気に短く集中させてあげると支度も早くなったりするんですよ。
発達科学コミュニケーションリサーチャー みずおち梨絵
【目次】
1.発達障害・ADHDの子どもは前もっての準備は難しい
2.遅刻ギリギリ!支度が遅い娘にハラハラ・イライラの日々
3.なぜADHDの子どもは支度が遅いの?
4.「残り10分の集中力」を引き出すママのサポート術
◆①気分を乗せて取り掛かりのハードルを下げる
◆②褒め+指示で集中力を持続させる
◆③時間を意識させる声掛けをする
1.発達障害・ADHDの子どもは前もっての準備は難しい
お子さんは登園や登校前、予定があって出かけなくてはならないとき、時間に余裕を持って事前に準備をしますか?
それとも、いつも遅刻ギリギリで慌てて準備をして、家を出て行きますか?
発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)の、不注意優勢型のお子さんを育てているお母さんは、お子さんのことを考えたときに、後者の場合が多くあるのではないでしょうか?
お母さんからしたら、
毎日のことなのに、どうしてできないの?
いつもギリギリで慌ただしくするんだから、前もってやれば良いでしょ!
とイライラしてしまいますよね。
時間に余裕を持って準備をすること、前もって準備をしておくことが望ましいと考えられているのが、一般的な常識だったりします。
しかし、ADHD不注意優勢型のお子さんにとって、前もっての準備や、時間に余裕をもってするというのは、脳の特性上どうしても苦手な行動の一つと言えるのです。
そこで今回は、気が散りやすくて支度が遅いお子さんが集中して支度を進められるようになる秘訣をお話しします。
2.遅刻ギリギリ!支度が遅い娘にハラハラ・イライラの日々
ここで、我が家の娘の話をさせてください。
娘は現在幼稚園の年長さんです。もともと不安が高く、自閉症スペクトラム(ASD)傾向が強かったのですが、ADHD傾向も混在しています。
前項でお話しした不注意優勢型の特性を強くもっており、朝の登園時は、
着替えの途中で遊びはじめてしまう
話しに夢中になり歯磨きの手が止まる
など、身支度が一向に進まないことが多々ありました。
私は自分で言うのもなんですが、根が真面目すぎる部分がありまして、身支度や何かの準備をする際には、前もってやっておかないと落ち着かない性格です。
そんな私からしたら、これから出かけるというのに、準備をせずに違うことを始める娘の行動は、ハラハラするばかりで到底理解ができません。
前もって行動し余裕のある時間を残す!ということが当たり前だった私は、支度が遅い娘に対して時間に余裕をもって行動するよう、常に声をかけていました。
でも声をかけられるとそのときには、「急がなきゃ遅刻しちゃう〜」などと口にするのですが、行動が伴っていないんですよね。
どこまでもマイペースな娘の姿にイライラが止まらなくなり、
「早くしなさい!」
「まだ終わってないの?!いつまで時間かかってるのよ!」
と、毎朝小言のオンパレード。
でも何回言っても、どのように伝えても、いつも遅刻しそうになっても、娘の行動は一向に変わることがありません。
次第に私は、娘とのペースのギャップにイライラが止まらず、抜け出せない負のループにはまっていきました。
では、どうしてADHDの子どもは、いつも支度が遅くなってしまうのでしょうか?
3.なぜADHDの子どもは支度が遅いの?
発達障害ADHDの子どもの支度が遅くなる理由は主に以下の3つの特性が関係していると言われています。
◆やるべきことを始められない・先延ばしする
やりたいことがあると集中して次々やる一方、やるべきことは先延ばしにしてしまう。
◆時間管理が苦手
時間処理の障害ともいわれ、本人の見積もっている時間と実際にかかる時間との間にずれが生じやすい。
◆最後までやりとげることが苦手
飽きっぽくて一つのことに集中できない。集中力が続かず無意識のうちに他のことに目移りしてしまう。
こんな行動を目にすると、私たちは「やる気がない」と思ってしまいますが、実際は脳の一部の機能の発達がゆっくりでうまく働いていないことが原因です。
つまり、支度が遅いのは生まれ持った脳の特性によるもので、やみくもに本人に努力を求めるだけでは改善しないのです。
また、発達障害の子どもには、行動を改善させようと思って怒鳴ったり叱ったりしても効果がありません。
それどころか、お母さんに叱られたというネガティブな記憶が積み重なり、ますます行動が遅くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
この話を踏まえ、私は娘の行動を観察し、どうしたら良いのかを探るようになりました。
その結果、私自身の視点を少し変えてわが子の特性を味方にする作戦をとることにより、朝の支度が時間通りに、それどころか時間よりも早く終わるようになったのです!
支度が遅いADHDの子どもを動かす作戦とは、
「子どもが集中力を発揮するタイミングで、お母さんがサポートをする」
ことです。どういうことが次項で説明しますね。
4.「残り10分の集中力」を引き出すママのサポート術
わが子を観察して気づいたことが1つありました。それは、
私は、前もって準備して後ろに時間を残し余裕を得る
に対し、
娘は、家を出る残りの10分でものすごい集中力を発揮する
という時間の使い方の違いです。
私なら、ヒヤヒヤするような時間の使い方です。
しかし、余裕を持たせてしまうと集中力が続かない娘にとっては、残りの10分で一気にやるべき準備をする形が合っていたのです。
そこで私は思い切って、わが子の時間の使い方を尊重し、「残り10分の集中力」を最大限に発揮できるようサポートする作戦にシフトチェンジしました。
私が行ったサポートの具体例を3つ紹介しますね。
◆①気分を乗せて取り掛かりのハードルを下げる
まずはお母さんの優しい声と笑顔で
「あと10分で家を出るよ〜!歯磨きと着替え、好きな方からやろうね。」
と声をかけます。
すると、視覚と聴覚の両方からお母さんの肯定的な注目を感じられることで、「早く!」と言われるよりずっと取り掛かりのハードルが下がります。
「30数えるうち着替えちゃおう!」などゲーム感覚で楽しく取り組める工夫があるとさらに行動のスイッチが入りやすくなるでしょう。
◆②褒め+指示で集中力を持続させる
「うわ~!お顔ぴっかぴか!次は歯もピッカピカにしようか」
というように、こまめに褒めて今やるべき行動に注意を向けさせるとともに、他のことに目がいかないよう次の行動を指示します。
これにより、今やるべき支度に集中して取り組むことができるようになります。
◆③時間を意識させる声掛けをする
「時計の針が4になるまでにお着替えを終わらせようね。」
など、子どもに時間を意識させる声掛けをお母さんが工夫しましょう。
続けていくうちに、少しずつ「朝は時間を見ながら準備しなくちゃいけないんだな」という意識が芽生えてきます。
以上の3つのサポートを繰り返し、「自分でできた!」という成功体験を積み重ねた結果、声をかけなくても1人で朝の支度ができるようになりました。
そして今では以前の半分くらいの時間で支度を終え元気に登園しています。
余裕を持たせてしまうと集中力が続かないのに対し、この時間は行動が習慣化され他に目移りすることもなくスムーズに行動できるようになっています。
前もって準備をするという一般的な常識が正解というのならば、娘のこのやり方は不正解なのかもしれません。しかし、自分に合ったやり方で間に合えば良いのです。
私も、娘の集中力を活かすことができる時間軸を理解できたので、笑顔で送り出すことができています。
人間誰でもやる気エンジンがかかるタイミングは、違います。
一般常識やお母さんがやらせたいタイミングに囚われず、子どもに合った方法で柔軟に対応していくことが一番大切なことではないかと、娘から教わりました。
ADHDの特性で支度が遅い・集中力が続かない、と聞くと、とてもネガティブに聞こえます。
でも、いつなら続くのか?どれくらいの時間なら続くのか?をしっかり見極めて、その「短くても深い集中力」を行動につなげるサポートをしてあげれば、特性は強みにもなります。
お母さんの視点を変えれば、お子さんの苦手は強みになる。一緒に強みに変えていきましょう。
子どもの苦手を強みにする秘訣をお伝えしています!
執筆者:みずおち梨絵
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)