幼稚園時の息子は、いろいろなことで「1番」になるのが好きです。競争心があって負けず嫌いというよりも、「1番」に何かができるというところが、息子の中でのこだわりのようです。これから、集団生活でうまくやっていけるかが不安です。
5歳・男の子のママ
息子が幼稚園の時に同じような悩みを持っていました。新しい生活に慣れるのは時間がかかるとは思いますが、周りのお友達とうまくいってほしいとも、親としては思いますよね。同じような体験をした私が子どもにどう対応していったのかの経験をお話しします。
発達科学コミュニケーションリサーチャー 松尾歩
【目次】
1.競争することが好きではない息子。だけど「1番」が好きなんです。
2.なぜ「一番」が好きなのでしょうか?
3.息子の「1番」へのこだわりにつきあうことにしました
4.息子と二人のゲームをたくさん経験したその後のお話
1.競争することが好きではない息子。だけど「1番」が好きなんです。
わが家の息子が年少のころの話です。
そのころ、息子には「1番」にこだわりを見せていた時期がありました。
例えば、
・園バスに乗る順番で最初になろうとする
・かけっこで1番になろうとする
・先生から「〇〇しましょう」と言われたら1番に取り掛かり、終わらせようとする
・お弁当は早く食べ終わろうとする
家では、
・1番にお風呂に入りたがる
・すごろくなど簡単なゲームでも1番になれないと怒ってぐちゃぐちゃにする
などです。
幼稚園に入園してから1学期も終わるころ、先生との懇談会がありました。
学期の中で大きな問題もなく過ごせていることと、ただ、息子が「1番」になろうとしていることが多いようなので気になります、と言われました。
息子は走るのが速くなかったため、1番になれず涙がでてしまったり、先生の話が終わったら早く取り掛かりたいため、最後まできちんと話が聞けておらず、やるべきことが雑になって終わってしまうことがあったようです。
教室での活動が終わって片付けが終わった子から並ぶなど、特に並ぶ順番が決まっていない場合、1番になれなかった場合はすっと割り込みして、他のお友達から指摘されたりもしたようです。
そんなときは、他のお子さんとちょっとしたトラブルになることが時々あった、と聞きました。
本人には悪気はなく、単純に早い順番がいい、という彼のこだわりからの行動でした。
順番に並ぶ、というルールを守ることができなかった点で問題行動になってしまったようです。
家では融通をきかせることができますが、ルールを守ることが大切な集団生活では、同じようにしていくのは難しいですよね。
2.なぜ「一番」が好きなのでしょうか?
発達障害のお子さんは、脳の発達に偏りがあるため、脳の働きも凸凹になりがちです。
脳の特性から、
・その場の雰囲気を感じ取ったり、人とのコミュニケーションが苦手
・特定の物事にこだわりをもつ
・落ち着きがなかったり、場に合わない発言をしたりする
・集中できるものとできないものがはっきりしている
などあります。
また、本人にとって、嬉しかったり楽しかったりのいい記憶や、嫌な思い出などの悪い記憶がはっきりとしていることもあります。
息子の場合は、以前に何かで「1番」だったときに、
・「すごいね!」の言葉をかけてもらえた
・親や周りの人の嬉しそうな顔を見た
・自分もいい気分になれた
など、いい記憶として残っていたのかもしれません。
そして、逆に1番になれなかったときは、周りの反応のいまいちだし、なんだか自分もモヤモヤするし、むしろ嫌な感じがするなど、よくない記憶となってしまったのでしょう。
小さい子どものころは、なんでも1番になりたい時期があると思います。その時期と特性ゆえ、「1番」になることに対して、息子はこだわるようになった可能性があります。
では、ずっとこのままなのでしょうか?
次項で、わが家で対応したことをお話ししますね。
3.息子の「1番」へのこだわりにつきあうことにしました
親としては、わが子のこだわりも理解できているので、家ではそれをかなえてあげることにしました。
簡単ですが、息子が何かをしたいときに「1番」になれる状況なら、1番にさせてあげることにしました。
日常生活では、お風呂に入ったり、複数の中から一つ選ぶこと、などです。
丁度そのころ、簡単な絵合わせやすごろくのゲームに興味を持っていたので、「1番」をかなえるいい機会だと思って、幼稚園から帰った後などにすることにしました。
どちらも付録にあったようなもので、短い時間で終わることができます。
絵合わせのときは、息子に有利になるように、「うーん、この辺りだったかな?」などいいながら、わざと間違ったカードをとってみたりしました。
すごろくはさいころの目で進むのでコントロールは難しいですが、ゴールにぴったり止まれないときは元に引き返したり、と勝手にルールを変えたりもしました。
お母さんとのゲームなので、「二人でするときだけの特別ルール」を作って、例えば、ヒントを3回まで出せるや、自分の駒と相手の駒の位置を変更するなど、いろいろ一緒に考えてみるのもいいと思います。
息子は特別ルールを作ったこともあって、ゲームする前から楽しそうにしていました。
息子が負けることがあっても、もう1度トライしたり違うゲームにしたりして、最後のゲームは息子が勝って終わりにして、楽しい思い出になるようにしました。
こちらが負けるときは、「あー、負けて残念だった!」と悲しい気持ちを伝え、でも「負けても楽しかったから、またしようね」と、負けを受け入れる気持ちも伝えるようにしました。
4.息子と二人でのゲームをたくさん経験したその後のお話
その後、特別ルールを取り入れつつのゲームも回数を重ねていくと、二人でするときは息子も負けることをだんだん受け入れられるようになっていきました。
そして数人でゲームをするときにも、以前よりかは負けても怒ることが少なくなり変化を感じることができるようになりました。
園での生活では先生のサポートもあり、かけっこは苦手のままでしたが、1番になれなくても涙は出なくなりましたし、割り込みして指摘されることも少なくなったようでした。
子どもの精神的な成長もあるのかもしれませんが、気になっていたことが少し落ち着いてきたことは嬉しかったです。
皆さんの親子の時間が、ぜひ「ゲームは楽しい!」の成功体験になりますように。
「1番」へのこだわりを否定しないであげてくださいね。
執筆者:松尾歩
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)