発達障害の子に英語教育は必要?発達を阻害しない英語教育はコミュニケーションがポイント!

「英語教育って早い方がいいの?」と気になっているママへ。実は、発達障害の子の英語教育では、まずコミュニケーションを重視すべきなんです!その理由をバイリンガルの人の脳の研究結果から紐解いてみましょう。
 

【目次】

 

1.発達障害の子の英語教育はいつから?

 
 
小さなお子さんを持つ保護者の方は「いつ頃から英語教育を始めたらいいの?」と考えますよね。これからは、グローバルな人材を育てることが大事だとよく言われています。
 
 
今日は、英語教育について考えてみましょう。
 
 
まず先にお断りしておきたいのは、私は言語学者ではありませんし、英語教育の専門でもありません。
 
 
私が専門とする発達科学からの知見や、脳の言語機能について脳科学研究をした経験に基づいて、英語教育についてお伝えしていきます。
 
 
 
 

2.バイリンガルのア・タ・マ

 
 

◆①バイリンガルを研究!

 
 
「バイリンガル」ってよく聞く言葉ですよね。二言語話者という意味です。私は日本語と英語のバイリンガルについて少しだけ研究したことがあります。
 
 
私が博士課程を過ごした大学のキャンパスには、英語教育の研究者が多く、英語の初級者からバイリンガル(帰国子女の方々)まで揃っていたので、研究に協力して頂いていました。
 
 
「発達障害の子とのコミュニケーションは、相手に分かる言葉で!言葉の選び方1つで子どもの反応が変わります!」でご紹介したような脳科学の実験を、英語と日本語の単語でもやってみました。
 
 
ちなみに、実験の条件によって研究の結果は変わります。
 
 
単語と文を聞かせるのでも変わるでしょうし、被験者に応答をさせるかどうかでも変わります。刺激を長くしたり、被験者に応答させたりして実験すると、脳の反応が大きくなって実験データが得やすくなります。
 
 
世の中の脳科学知見のほとんどが、そういった実験結果を元にしています。
 
 
しかし、実験が複雑になるほど、聞く反応も、書く反応も、読む反応も、考える反応も混ざってしまいます。結果の解釈がより複雑になり、英語能力を反映したピュアな結果と言えるかどうか?判断が難しい研究があるのも事実です。
 
 
私は、よりピュアな実験データを取得することが得意だったので、短い刺激(英単語)で、被験者に応答させずに、ただ単語を聞いただけで脳の言語野の働きがどう違うのか?という実験をしてみました。
 
 
 
 

◆②脳科学実験の結果

 
 
そうすると、英語初級者(日本語を母語として、英語を第二言語として勉強している人で、英語がさほど得意とは言えない、TOEICで500点前後の群)は、英語と日本語を脳の同じ場所で処理して意味を理解していました。
 
 
しかしバイリンガル(発達期を海外で過ごし、TOEICが900点前後の人)は、英語を処理する脳の場所と日本語を処理する脳の場所が重ならず、1〜2cm、ズレていることが分かったのです。
 
 
海外滞在経験はないがTOEICで900点近く取れる英語上級者は、やや重複するがややズレるというちょうど真ん中の結果を示しました。
 
 

◆③実験結果から分かること

 
 
普通に日本で生まれ育って、日本語の言語環境にずっといた人が英語を勉強すると、英語で「apple」と聞いても、頭の中で「あぁ、リンゴね」って意味を理解しますよね。
 
 
でもバイリンガルの人はそうではなく、appleはappleで処理するし、リンゴはリンゴで処理する。いちいち変換しないと言われています。
 
 
それは、バイリンガルは脳で処理する部位がズレている(つまり分化して、専用の脳部位を作り上げたか)、初級者は分化していないから同じ脳部位で日本語も英語も処理する、の違いがあると仮説できます。
 
 
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3.英語の勉強、どうする?

 
 

◆①子どもを多言語環境に置く前に

 
 
バイリンガルは、発達期に多言語環境で過ごしたことによって脳がそれぞれの言語に対応する部位を作り上げたと仮説すると、「じゃあ、うちの子も多言語環境に置こう」と思うかもしれません。
 
 
でも私は(日本で子育てをされているなら)、そのアイデアには即座に賛成できません。
 
 
なぜかというと、子どもを多言語環境で育てたからと言って皆がみんな、バイリンガルになれる訳ではないからです。
 
 

◆②ダブルリミテッド(セミリンガル)?

 
 
「ダブルリミテッド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?以前は「セミリンガル」とも言われていた言葉です。
 
 
ダブルリミテッドとは、母語をきちんと獲得する前に多言語環境に置かれたために、母語も第二言語も年齢レベルに達していないことを示す用語です。
 
 
ダブルリミテッドでも、日常的な会話は両方の言語で可能です。でも、どちらの言語でも、
 
 
・大学生が読む程度のテキストが読めずに大学の勉強に遅れが出たり
 
・仕事上のコミュニケーションが難しくて苦労している
 
 
というレベルの言語能力にとどまってしまっている、ということです。
 
 
言葉というのは、コミュニケーションだけに使うものではありません。思考に使ったり、「○○しなくちゃ」と行動のナビに使ったりします。
 
 
つまり、母国語がきっちり獲得されていない状態というのは、思考や行動に不自由がある状態と言えます。
 
 
ダブルリミテッドは学術的な基準は曖昧ですが、臨床では実際に見かけます。正直、このダブルリミテッドが難しいのは、
 
 
・純粋に多言語環境の影響だけなのか
 
・もともと発達の遅れがあったためなのか
 
 
判断がつきにくいことです。
 
 
 
 

◆③発達障害の子こそ母国語のコミュニケーションを!

 
 
はっきりと言えるのは、発達障害の子ども、発達が気になる子については、とにかく「母国語をしっかり身につける」ことが何より大事です。
 
 
日本に住んでいて、両親とも日本人なのに、インターナショナルスクールに子どもを通わせたいと思われる人も最近では多いようです。しかし、ゆったりと発達している子には、その教育環境は過酷です。
 
 
親子のコミュニケーションも取りづらくなり、言語発達の速度をさらに緩めてしまいかねない、と考えています。
 
 
発達が遅めの子が、家族の都合で海外に滞在し戻ってきて発達の相談を受けることもありますが、色々と難しい問題を1つ1つクリアしていくことになります。
 
 

◆④日本語あっての英語能力

 
 
第二言語の能力が、母国語の言語レベルを超えることは絶対にありません!
 
 
当然のことですが、母国語と第二言語の言語能力は比例します。日本語の言語レベルが安定しなければ、英語をどれだけ勉強させても定着しません。日本語をしっかりマスターさせることが、英語教育の基本になるということを覚えておいてください。
 
 
発達がはやいお子さんでも、ゆったりのお子さんでも、お子さん本人の興味に応じて、どんどん英語を勉強したら良いと思います。
 
 
英語の勉強を早くから始めることには反対ではありません。でも、日本で子育てをしているのであれば、日本語を使う時間と、英語を使う時間の比重を慎重にお決めになってくださいね。
 
 
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4.言語能力よりコミュニケーション能力!

 
 
正直なことを言うと、英語教育については私も迷うところが大きいのです。グローバルな人材を育てることは今後必須でしょうし、だからと言って、発達を阻害するような言語環境には賛成できません。
 
 
でも、間違いなく言えることは、言語能力よりも、コミュニケーション能力を伸ばしておくべきだということ!
 
 
日本語の世界にも、言語能力は高いのに、コミュニケーション能力が低い人はいますよね。
 
 
テストをしたら点は取れる。でも
 
 
・普段の会話や雑談が続かない
 
・嬉しかったことを話しているのに共感性に乏しい
 
・気持ちを察して言葉をかけてくれない
 
・人の気持ちを逆なでするようなことばっかり言う
 
・自分から話しかけて来ない
 
・とにかく、何を考えているのかよく分からない
 
 
こういう人が、例え英語がペラペラだったからと言って、グローバルな人材か?って言われると、ちょっと怪しいかも…と思いませんか?
 
 
確かにこういう人にとっては、1番大事なことを言葉で言わない日本の文化が苦手、ということはあります。
 
 
でも、「人と関わることに積極的かどうか? 楽しいと思えるかどうか?」ということが、大人の世界では、とーーーーーっても大事なのです!
 
 
対人関係が苦手だという理由で医療機関を訪れる人が今はたくさんいます。
 
 
高学歴で、言語能力がずば抜けた人も多いです。しかし、そういった方々の多くは、家族とのコミュニケーションを楽しめていません。そうすると、社会に出ても、コミュニケーションが苦手になりがちです。
 
 
身につけた言葉を使いこなす能力があるかどうか?これが1番大切です。言葉は「使ってナンボ」ですからね。
 
 
英語教育はやりましょう!でも、人と交わることの楽しさはもっと教えましょう!そのために、まず親子のコミュニケーションを楽しめる家庭の教育環境を作ることが何よりの近道です。
 
 

研究発表の出典
Kayoko YOSHINO, Shun ISHIZAKI, Toshinori KATO;
Differences of cerebral oxygen exchange (COE) depending on L1 or L2,
14th Organization of Human Brain Mapping, No.373 W-AM, Melbourne, Australia (2008)
 
 
 
 
執筆者:吉野加容子
(発達科学コミュニケーショントレーナー、学術博士、臨床発達心理士)
 
 
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