自閉っ子との会話が一方通行で、他の親子のようにコミュニケーションできたら、と、寂しい思いをしているママもいることでしょう。おうち療育することで、自閉っ子とのコミュニケーションを変化させたママのお話をお伝えします。
【目次】
1.自閉症の子どもとのコミュニケーションの難しさ
自閉症のお子さんは、
・相手の気持ちがわからないなど、周りの人との交流が難しい
・言葉を話す時期が遅い
・興味のあることを繰り返したり、自分の行動パターンを持っている
などがあります。
うまく言葉が話せないし、ママとの交流も難しいので、ママは子どもとどうかかわっていけばいいのか、わからなくて悩みも多いことでしょう。
今回、お話を伺ったのは発達科学コミュニケーション(発コミュ)のトレーナーで、自閉症っ子がおしゃべりするようになるメソッドで活動されている桜山尚さんです。
桜山さんご自身も、自閉症のお子さんをお持ちで複数のお子さんのママです。
トレーナーとしての活動内容や発コミュを始めるまでの話などをたくさん伺いました。
こちらの記事は全3回に分けてお伝えするインタビュー記事の第1回目になります。
2.自閉症っ子のおしゃべりメソッドの専門家として
ーーーまずは自己紹介からお願いします。
「\ママ見て/関わりを強く求めてなかった子がみるみる愛着を深める自閉症専用3カ月おしゃべりメソッドの桜山尚です。
言葉が苦手な自閉っこ、目が合わない、要求しか伝えないママとの関わりを強く求めない、こんな様子に寂しい思いをしていませんか?
そこで私は、安心、安全、探索の三つの土台を整えながら、言葉を出しやすくする親子の愛着バロメーターを開発しました。
その結果、会話をしたい、「ママ見て」をいつか言ってほしいと途方もなく待ち続けていたママたちが、三か月二か月一か月、そして今月も、私の生徒さんの元でかなっています。
ママの言葉で、親子愛着バロメーターをじゃんじゃんためちゃおう。
自閉っ子と会話をしたいその夢は、ママが諦めなければ待っています。次はあなたの番ですよ。」
ーーー「愛着」という言葉がキーワードですが、「愛着」とは一体どんなものなのでしょうか?
「愛着は、簡単に言うと親子の絆です。この愛着によって、言葉を話したいコミュニケーション意欲が高まるんですよ。
つまり、子どもの話したい意欲を高めるために親子の愛着深めましょう、絆を深めましょうというふうに、私は教えてます。」
ーーー愛着が深まれば、親子のきずなが深まって言葉が出しやすくなり、コミュニケーションが活発になるということですか?
「言葉って、3つに分解することができるんです。
まず、ママって言う風に言葉で出てくるっていう、出てくる方の言葉。
そしてママを理解している方の言葉
それから、ママと言葉を話したいというコミュニケーション意欲の三つに分けることができるんです。
例えば、水鉄砲をイメージしてください。
水鉄砲の水がママって出てくる言葉。水がタンクに溜まってる状態が『ママ』という理解。それを押し出すエネルギーになるのが、コミュニケーション意欲。つまり愛着なんですよね。
タンクに水がほんの少ししか溜まっていなかったとしても、押し出すエネルギーが強ければ、水は出てきます。
だから、この愛着が自閉っ子にはすごく大事なんです。」
◆ポイント解説
子どもにとっては安心できる関係性が大切で、それができていないとコミュニケーションを取りたいと思ってくれない、というところが重要なところだったと思います。
わが子は、新しい環境や人になれるのに時間がかかるほうのですが、習い事の先生とは1対1と言うこともあって、比較的早い段階で、よく話をするようになった事を思い出しました。
これも、先生と安心できる関係性になれたからこそ、自分から話を始めたり、自分の気持ちを伝えたり、ができるようになったのだと思いました。
3.「愛着バロメーター」とは?
ーーー先程、「愛着バロメーター」を貯めましょう、と言われていましたが、一体どういったものなのでしょうか?
「はい。先程、愛着は親子の絆です、と伝えました。絆って目に見えないですよね。
目に見えないものをどうやって見えるようにするのかと言ったら、やはり愛着行動というところに注目したいんです。
子どもが、ママに対してどんな反応をしてくれるのか、というところです。
三段階のチェック項目があるのですが、それをご自身でチェックしていただくことによって、絆の度合いを簡単に可視化したものなんです。」
ーーーチェックをした後に愛着の度合いが低いとショックだと思います。そこからどうやって愛着をためていくのですか?
「はい。要となるのは肯定の注目ですね。これをすると、子どもの安心感がすごく高まるんです。
そして安心感が満たされると、次は安全欲求が満たされていく。そして安全欲求が満たされると、次は探索欲求が満たされるんです。
だから、まずはこの安心感を高めないことにはコミュニケーション意欲も高まらず言葉も伸びないんです。褒めて安心感を与えるということが大事になるので、ここは絶対に頑張ってもらっています。
度合いが低かったとしても、現在地を知って伸びしろにワクワクしてもらいたいな、その意図でやっているんですよ。」
ーーー「愛着バロメーター」はわかりやすいように数値化されているのでしょうか?
「はい。100%では出しているんですが、百点満点だから一番いいっていうことや、100%を目指しましょうっていうことではないです。
66%以上であればすごくいい状態なんですよ。
100%に近い方が良いんだけれども、完璧な絆なんてありません。
だからこそ現在地を知ってもらいたいって思っています。
私が生徒として発コミュを学んでいたときにちょっと不安だったのが、今自分ってどのくらいのところにいるんだろう?この先どれだけ頑張れば、子どもの言葉が出てくるんだろう?というところでした。
そういう点でも、数値化することによって、お母さんが安心感を得たり、頑張りを認めてもらったりできますし、これだけ伸びてますよって目に見える形で見せてあげられるといいなって、思っていました。
講師としてフォローする場合も、数値化してあるとアドバイスしたり、寄り添いやすいんです。
このお母さん、ここ頑張ったんだなとか、今ちょっとここでちょっとつまずいているのかなっていうのが、こちらとしてもわかりますので。」
ーーー全体と3つの個別に数値が出るということは、一つは66%を超えているのに、あとの二つはまだですね、ということもありえると思います。一つを伸ばす対応と二つを伸ばす対応は変わってくるのでしょうか?
「はい。必ず安心が一番数値が高いんです。探索が一番数値が低い。愛着が育っていく過程は、安心、安全、探索なので。
時々、一番安心が高くないといけないのに安全の方が高いとか、探索が一番低いはずなのに、探索よりも、その真ん中の安全の方が低くなっちゃってる時とかあるんですよ。
そういう時って何が起こってるのかっていうと、やっぱりお母さんがちょっと肯定の注目を忘れちゃってる。
そういった時にその逆転現象が起きちゃうんですよね。なので、このお母さんは大丈夫かな、とこちらも気にかけていきますね。
何をするにも、肯定の注目がなぜ大事なのかというと、安心感は愛着を深めて言葉を伸ばすベースになるからなんです。
突然、明日絆が深まるということがないように、愛着を育むのは時間の経過と比例してくるというか、積み重ねが必要になるんです。
そこで、何をするにも肯定の注目ということになりますね。」
◆ポイント解説
自分でチェックしたものを数値化してグラフでフィードバックしてもらえると、どこを伸ばせばいいのか一目瞭然なので、とても分かりやすいと思いました。
理想のパターンもあるので、もし違っていても目標になりますし、頑張る点も明確になることでしょう。
さて、次回は、桜山さんが発コミュに出会うまでのお話を伺っていきたいと思います。お楽しみに!
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発達が独特な自閉っ子でも、伸びる要素がたくさんあるんです!
執筆者:松尾 歩
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)