我が子に発達障害の診断が下ったら本人への告知ってどうしよう?と悩んでいる親御さんも多いと思います。前向きな告知にするためには告知をする、しない、いつするかで悩む前に、苦手に対処したこと・相談できたという経験を積むことが大切です。
【目次】
1.我が子に発達障害の診断がついた!告知はいつ?誰が?必要?
2.子どもに発達障害という言葉を見られることに抵抗を感じていた自分
3.診断名の告知をする目的とメリットを考える
4.注意!告知をすること=困りごとの解決になるわけではない
5.大事なのは告知前の状態!対応・相談して上手くいったことを貯めよう
1.我が子に発達障害の診断がついた!告知はいつ?誰が?必要?
我が子に発達障害の診断がついた場合、告知についてどのように考えますか?
非常にデリケートな課題ですよね。
この記事を読んでくださる方の中には、お子さんがすでに医療機関で発達障害の診断を受けているという方も、診断は下りていないけれど発達凸凹がありいつかはそのことを子どもに伝える日がくるかもと思われている方など、様々だと思います。
大前提として、診断が下りた人全てに告知をした方がいいと言うつもりはありません。
なぜなら、発達障害の程度はグラデーションのように特性の強さや傾向は人によりけり。
発達科学コミュニケーション(発コミュ)で証明されている通り、脳を育てることで特性が和らいだり、得意を伸ばして活躍したり、成長とともに困り感なく適応している人も沢山います。
成長とともに特性がほとんど表れなくなる人もいますので、あえて告知をする必要がないと考える人もいます。
では、告知のタイミングとなると、こちらも一概に何歳になってからとか、小学生になったらなど、とは言えないですよね。
なぜならば、発達障害の特性が誰とも被らないのと同様に、その子その子の発達段階も環境もさまざまであり、理解力も違えば、周りとの違いを気にするかどうかなども異なるからです。
入学したら…〇年生になったら…と子どもの気持ちや発達を置き去りにした決め方はではなく、本人の状況を見ながらの判断になります。
また、誰が告知するの?という点においても、これが正解であるとは言い難いです。
かかりつけの医師、福祉関係の方、カウンセラーなどと親が連携して、専門家から本人に伝えるというケースもあるでしょうが、告知の実態は、全体の8割が親(特に母親)がしているというデータもあります。
このように告知をするしない、誰が、いつ、という正解はない、だから迷う、悩むのです。
しかし、本人がどこかで「発達障害」という言葉に触れて気になりだしたり、他の人から何か指摘を受けたりする前に、一番身近な存在である親が告知に対してどう対応するかの方向性を持っておくだけでも、子どもへの対応や迷いが軽減すると考えられませんか?
2.子どもに発達障害という言葉を見られることに抵抗を感じていた自分
少し我が家のことをお話しさせてください。
我が家には小学3年生の自閉症スペクトラム症(ASD)の男の子がいます。
幼稚園で集団行動の苦手さがみられたため、療育を受けながら発達医療センターで受診をしていく中で、年長のときにASDの診断がおりました。
当時はまだ幼稚園児でしたので、理解力の面からいって本人への告知については全く考えていませんでした。
就学相談を経て小学校では支援級に在籍すると決めたときも、本人に発達障害について伝えることはしませんでした。
支援級は困ったときや嫌なときに過ごせる場所、いつ行ってもいい安心できる場所だという伝え方をしました。
こうして小学校生活をスタートしたのですが、もともと読みが得意だった息子。
漢字が読めるようになってきて、家に置いてある発達関連の本やパソコンで閲覧しているページの内容を気にするようになってきました。
まだ発達障害というフレーズには辿り着いてはいないものの、その時はやんわりとページを閉じたり、子どもの脳のことについて勉強してるんだと何となくごまかして言ってみたり。
どこかで本人にまだ知られたくないと思う自分がいました。
しかし、そのうちに息子に対してごまかすような態度を取る自分、発コミュで学びたいし発達関連の本も読みたいけれど子どもには隠れてやろうとしている自分に違和感を感じるようになりました。
悪いことをしているわけではない、子どものことを理解するためにやっていることを隠すのっておかしいなと。
また、子どもは親が思う以上に敏感で、何かをごまかしたり隠したりするのをすぐに感じ取ると言われますよね。
ましてや自分のことについて親がごまかしているというのはすごく嫌なことだと思うのです。
それと同時に、年齢的に言ってもそのうちに自分の不得意なところや周りと比べ違うと感じたときに息子から「なぜ?」という問いかけがきてもおかしくないと思いました。
もし息子からの「なぜ?」が出てきたときに、迷わずに対応できるようになろうと考えました。
3.診断名の告知をする目的とメリットを考える
ここで、発達障害であると告知をすることの目的とメリットを考えてみたいと思います。
◆①自分のことを理解する
告知をする最大の目的と目指すところとして「自分のことをより良く理解して、前向きに特性と付き合っていく」ことと言えるのではないでしょうか。
そして、自分は人と違うから行動を変えないといけないと思うのではなく、脳の作りが少数派なので対応と相談の技術を学ぶことが大切なんだと認識してもらうことも目的と言えますよね。
◆➁「苦手なのは自分が悪いから」という考えからの解放
自分の努力不足、能力不足でできないこと、苦手なことがあるのではないか?というような自分が悪いんだという否定的な考えをもし持っているならば、それから解放されることにも繋がります。
◆➂周りからあらぬ指摘を受ける前に正しい知識を授けられる
学校でからかい程度で発達障害の特性のことを面白おかしく言われたり、間違った知識を話してくる子もいるかもしれません。
親(専門家でも)が発達障害について正しく伝えることが、本人の心を傷つけないお守りになります。
◆④自分と同じような人がいることを知るきっかけになる
ある程度の年齢になれば、診断名をキーワードにして自ら発達障害の本を読んで知識を深めたり、自分と似たような感覚を持つ人が他にも沢山いるんだということを知ることもできます。
後々、発達障害の当事者のコミュニティに入って、趣味の話しをしたり交流を持てたりするきっかけになるかもしれません。
このように、よりよく自分のことが理解できること、これから先自分の特性がもとで困難なことが起きても、周りに協力を求めたり自分で対応を工夫しようとするための必要な情報という捉え方をすると、本人に告知をするメリットがあると思えます。
4.注意!告知をすること=困りごとの解決になるわけではない
告知をすることで一発逆転!本人の意識が変わり困りごとがなくなるのでは?と期待している方がいるのならば、それは要注意です。
もし、発達の特性が絡んでのトラブルが頻発しており、本人が自信を失っているときに「あなたは発達障害なんだよ。だからこんなことができなくてもそれは仕方のないことなんだよ。」と伝えたとします。
そこで、「そうか、僕は発達障害だからできないんだ、だったらどうしたらいいか考えよう」と前向きになれるでしょうか?
そんなことは考えにくいですよね。
なぜなら、「どうせぼくなんか何をやってもダメなんだ…」と思っていたのが「どうせ発達障害なんだから…」に言い方が変わるだけになるからです。
また、自分に発達障害の特性があると知ったことで努力をしなくなるのでは?と心配になる方もいるかもしれません。
これについては、それまでに困りごとに対して相談したり環境調整や周りの対応を変えるなどの支援が足りていないことの表れと言えるのではないでしょうか?
例えば、初めての場所が苦手なASDタイプが入学式に出ることを例にあげてみます。
先生に相談する、事前に式場を見学させてもらう、途中退場できるよう並び順を変えるなどの配慮を受けて、やってみたらできた!という経験があれば、次に新しい行事に参加するときにも相談してやってみように繋がりやすいですよね。
僕は発達障害なんだ、だから人より苦手なこと、できないことがあるんだ、ショック…、もうやりたくない、なんていう残念な結果はあってはならないこと。
告知は前向きなものであって、決して本人にとってデメリットになってはならないことです。
5.大事なのは告知前の状態!対応・相談して上手くいったことを貯めよう
これまで述べてきたことをまとめますと、前向きな告知をするにはその前の状態が大事だということです。
本人がこれまで困難さに上手く対応して乗り越えることができた実績がないと発達障害の特性を理由に努力する気がなくなってしまう。
逆に、周りに相談して対応を変えてもらったり、工夫して困りごとに対応してきた実績があれば、告知を前向きに捉え特性と上手く付き合おうと思えるのです。
いつか本人に発達障害のことや診断名を告知をする日がくるかもしれない、そう思っている親御さんが今できることは、
苦手に対し上手く対応してきた実績、誰かに相談して助けてもらった実績をどんどん貯めていく、そしてそれを忘れないように記録する
ことです。
発達障害がどういったものか特性うんぬんを説明するよりも成功体験の実績をもとに話しをする方が子どもにとっても分かりやすい、伝わりやすい、そして前向きな告知を迎えることに繋がるのではないでしょうか。
例えばですが、次のように具体的な体験をもとに話をすると分かりやすいですよね。
「小学校が始まった頃は、体育の授業に参加していなかったよね。
自分は運動が苦手と思っていたり、全然できないって思っていたからだよね。
それは、脳が特別な作りでなかなか運動のことが簡単に頭の中で整理できないことが原因なんだよ。
でも家族でハイキングをして体を鍛えたり先生に細かく動きを教えてもらったりして2学期からは授業に出て今では体育が楽しくなっているよね。
だから、体育が苦手だと思っていても自分が楽しいと思うことをやったり周りの人に助けてもらうことでできるようになることは沢山あるんだよ。
もう少し特別な脳みそのこと説明するね…」
こんな風に伝えられると子どもも分かりやすいですよね。
ASDの診断がおりてから3年が経ちますが、今は本当にASDなの?と思うほど息子は驚くほどの成長を遂げています。
支援級でスタートした小学校でしたが、自ら普通級へ移籍することを決めました。
不器用さやコミュニケーションの苦手さも見えますが、持ち前の素直さで周りから温かく見守ってもらえているようです。
しかし、成長とともに新たな困りごとが出てくるかもしれません。
我が家ではまだ本人へ発達障害について告知はしていませんが、自分のことをよりよく理解するために、特性を知りその対応策を考えて上手く付き合っていけるようにいつかは告知をする日がくると考えています。
現在、私は息子の前で発コミュの仕事をしたり、発達関連の本を読んだりすることに抵抗がなくなっています。
それは少しずつ本人も発達障害について知ってもいいと思っている、いつ聞かれても大丈夫と思っている、つまり告知への心の準備が整ったことの表れであると思います。
子どもに沢山の成功体験を積ませてあげることが、本人にとってメリットとなる告知を迎えることができる!
一緒に前向きな告知に向けて、発達障害の子の成長を促し見守りましょう!
発達障害・凸凹キッズの脳を育てて困りごとを解決し、さらに非凡な才能を開花させる!
執筆者:菅美結
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)