母子分離不安の小学生への対処法に悩むママへ。「ママやって」「ママがいい」が続くのは、甘えではなく不安のサインかもしれません。この記事では、子どもの中にある小さな「できた」を見つけ、ひとりで動き出す力を育てる声かけを紹介します。
【目次】
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.小学生になっても「ママやって」「ママがいい」が続く…このまま様子を見て大丈夫?
小学生になったら、少しずつひとりでできるようになる。
そう思っていたのに、「ママやって」「ママがいい」「ママ一緒に来て」が続いて、悩んでいませんか?
4月は、入学・進級したばかりだから仕方ない。
5月は、連休明けで疲れているのかもしれない。
そう思って様子を見てきたけれど、6月になってもまだ、朝の準備や登校、教室に入る場面でママがいないと動けない。
学校では先生から、「よくできていますよ」と言われるのに、家では「ママやって」が続く。
そんな姿を見ると、
これは甘えなの?
母子分離不安なの?
このまま様子を見ていて大丈夫?
と、不安になりますよね。
けれど、学校でできているから大丈夫、とは限りません。
外で頑張っている子ほど、家では安心できるママに不安を出していることがあります。
つまり、家で出ている「ママやって」「ママがいい」は、見過ごしていい甘えではなく、関わり方を見直すサインかもしれないのです。
実は、「ママやって」「ママがいい」は、単なる甘えやわがままではなく、本当は自分でやってみたいのに、不安が強くなると、ひとりでは一歩を踏み出せなくなるサインなんです。
子どもに力がないのではありません。
不安が強くなったときに、その力を出しにくくなっている状態なのです。
ですから、本当に必要なことは、子どもの不安を無理に止めることでも、「ひとりでやってごらん」と背中を押すことでもありません。
子どもの中にすでにある小さな「できた」を見つけ、「ひとりでできた」の記憶を積み上げていくことなんです。
2.母子分離不安とは?小学生になっても「ママやって」が続く理由
母子分離不安とは、ママや安心できる人と離れることに強い不安を感じる状態です。
母子分離不安が強い子は、初めてのことや、見通しが立たないこと、ママと離れることに不安を感じやすく、
「できなかったらどうしよう」
「失敗したらどうしよう」
「ママがいなかったら困るかもしれない」
という不安が先に立って、動き出せなくなることがあります。
けれども、ここで多くのママがやってしまうのが、子どもの行動を、
「できたか、できなかったか」
「学校に行けたか、行けなかったか」
「ひとりで最後までできたか、できなかったか」
という二択で見てしまうことです。
本当は、半分は自分でやれていた。
途中までは動けていた。
少しだけならママから離れられていた。
それなのに、ママが最後までできなかった部分だけを見てしまうと、子どもには「途中までできていた自分」よりも、「やっぱり最後までできなかった自分」の記憶が残りやすくなります。
つまり、問題は「やる気がないこと」でも、「甘えていること」でもありません。
不安が強くなることで、本当はやってみたい気持ちがあっても、“ひとりでできた自分”をイメージしにくくなっていることなんです。
すると、次に同じ場面が来たときにも、子どもは動き出す前から不安になり、また「ママやって」「ママがいい」と言いやすくなります。
「できない自分」の記憶が増えるほど、不安は強くなり、「ママやって」が長引いてしまうんです。
ここまでが、小学生になっても「ママやって」が続く背景の仕組みです。
子どもをひとりで動かそうとする前に、まず必要なのは、ママが「できなかった結果」ではなく、「途中まで動けていた事実」に気づくことでした。
3.できるようになってほしい想いが、自立を妨げていた私の気づき
私自身も以前は、息子に「ひとりでできるようになってほしい」と強く思っていました。
息子は1歳を過ぎた頃から、私と離れることを極端に嫌がる子でした。
小学校に入ってからも、朝の準備も、着替えも、登校も、ひとりではなかなか進められませんでした。
「ママやって」が当たり前。
小学生になったのだから、少しずつ自分でできるようになってほしい。
そんな思いから、
「なんで自分でやらないの?」
「早くして!」
「少しはひとりでやってよ!」
そんな言葉を言いたいわけではないのに、動けない息子の姿を見るたびに、焦りや不安が先に立っていました。
母子登校を続け、やがて不登校も経験しました。
そんなある日、息子から言われた言葉があります。
「ママ、もう僕は頑張れないよ」
その言葉を聞いたとき、私は、息子のためと思いながら、本当は息子の力を見ていなかったのかもしれないと思うようになりました。
私が見ていたのは、息子ができていないこと。
最後までやり切れなかったこと。
ひとりでできなかった結果ばかりだったんです。
できるようになってほしい。
その想いが強くなるほど、子どもの中にすでにある小さな力を見落としてしまうことがあります。
そう気づいたことが、関わり方を見直すきっかけになりました。
子どもを変える前に、まず私の見る場所を変えることが必要だったのです。
4.母子分離不安の小学生の「ひとりでできた!」を増やす対処法
母子分離不安の小学生の「ひとりでできた!」を増やすために大切なのは、子どもの中にすでにある小さな「できた」を見つけて、ひとりでできた記憶を積み上げていくことです。
発達科学コミュニケーションでは、子どもの行動に注目して肯定することで、脳に「できた」という成功体験の記憶を残していきます。
そのために、家庭で始めたい対応は3つです。
◆①できた/できなかったの二択でジャッジしない
まず大切なのは、子どもの行動を、「できた」「できなかった」の二択で見ないことです。
朝ごはんを全部食べられなかった。
着替えが最後まで終わらなかった。
教室にひとりで入れなかった。
この結果だけを見ると、ママも「またできなかった」と感じやすくなります。
けれど、母子分離不安の子は、最後までできる前に小さな一歩を踏み出していることがあります。
全部できたかどうかではなく、途中まで動けていたことに気づくことが、最初の一歩です。
◆②できないことではなく、できていることに目を向ける
次に、できていないことを直そうとする前に、すでにできていることを見つけます。
「まだ食べ終わっていない」ではなく、「半分は食べられている」
「まだ着替え終わっていない」ではなく、「服に手をかけられている」
「教室に入れなかった」ではなく、「校門までは歩けた」
そんなふうに、子どもの中にある小さな行動を見つけていきます。
できないことをいくら指摘しても、子どもはひとりでできるようにはなりません。
できていることにママが気づくことで、子どもも「自分にもできていることがある」と感じやすくなります。
◆③見つけた「できた」を言葉にして記憶に残す
最後に、見つけた小さな「できた」を、短い言葉で子どもに伝えます。
大げさに褒めなくても大丈夫です。
「もう半分食べたんだね、いい顔してるよ」
「もうあと少しだね。昨日よりも5分も早い、びっくり!」
こんなふうに、見たままを言葉にして、ママのあたたかい気持ちも一緒に伝えます。
その記憶が積み重なることで、次に同じ場面が来たときに、
「ここまでできた」
「ママが見てくれていた」
「次もやってみよう」
と、動き出す土台になっていくのです。
私もこの対応を続けた結果、息子は少しずつ自分で食べ進められるようになり、「もういらない」と言っていた朝ごはんを、ひとりで全部食べられるようになりました。
さらに、母子登校していた息子が、「ママはここでいいから」と言って、後ろを振り返ることなく、ひとりで教室にスッと入れるようにもなりました!
母子分離不安の小学生への対処法は、子どもを無理にママから離すことではありません。
子どもの中にすでにある小さな「できた」を見つけて、ひとりでできた記憶を増やしていくことです。
まずは今日、お子さんが最後までできなかった場面の中で、途中までできていたことを1つ見つけて、言葉にしてみてください。
その小さな声かけが、不安で止まっていた子どもの一歩を育てていきます。
1人で料理に挑戦するようになりました!
母子分離不安障害の小学生へやってはいけない!学校に行くことよりも大切な対応▼▼
母子分離不安に関するよくある質問
Q1.学校ではできているのに、家で「ママやって」「ママ来て」が続くのは甘えですか?
A1:学校で頑張れている姿も、家で「ママやって」と言っている姿も、どちらも本当のお子さんの姿です。母子分離不安が強い小学生は、外では頑張れても、安心できる家で不安を出すことがあります。まずは、家で見せる姿を甘えではなく、不安のサインとして見ることから始めてください。
Q2.「途中まで食べたね」と声をかけても変化がない時のポイントはありますか?
A2:ポイントは、できていることとママのポジティブな感情をセットで伝えることです。
「もうここまで食べたんだね。いい顔してるよ」のように、行動にあたたかい感想を添えます。そうすることで、子どもは「見てもらえた」「ここまではできている」と感じやすくなり、次の一歩につながりやすくなります。
Q3.母子分離不安の小学生への対処法は、まず何から始めればいいですか?
A3:まずは、できた/できなかったの二択で見るのをやめることから始めましょう。全部できなくても、半分できた、校門まで歩けたなど、小さな「できた」はあります。母子分離不安の小学生への対処法は、子どもの中にある「ひとりでできた」の記憶を増やすことです。
執筆者:永岡万侑
発達科学コミュニケーショントレーナー
8歳の息子は小さい頃から私と離れることを嫌がり、公園でも保育園でも私から離れられない子でした。
「そのうち慣れますよ」と言われ続けましたが、成長するほど「ママがやって!」「ママがいい!」と頼る場面は増え、小学校では母子登校を経て不登校を経験しました。
そんな時に出会ったのが、発達科学コミュニケーションです。
ママの会話の「最初の一言」を変えることで、息子は「やってみたい!」「ひとりでやる!」と少しずつ自分で動き出せるようになりました。/p>
長引く「ママやって!」は、ママのせいではありません。
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執筆者:永岡万侑
(発達科学コミュニケーショントレーナー)