フリースクールってどんなところ?教科書もない、好きなことを追求できる環境…でもその後どうなるの?実際に小学5年から転校した発達グレーゾーンのお子さんのフリースクール卒業後の進路とお話で明らかになった子どもを伸ばす関わりについてお話します! |
【目次】
1.フリースクールってどんなところ?
フリースクールとは、何らかの理由で地元の学校に行くことができなかったり、行きたくなかったりする子どもたちが学校の代わりに過ごす民間が運営する場所のひとつです。
カリキュラムやプログラムにも決まりがないのでそれぞれのフリースクールの理念や教育方針によって形態はさまざまです。不登校に特化したフリースクールもあります。
中学までの義務教育の間は、地元の学校に籍を置いたままフリースクールに通うことがで きます。活動内容や学習内容はさまざまです。
しかし、どのフリースクールも子どもたちの意志を尊重したり、個性をつぶさないよう、個々に合わせた関わりをするという点では共通しています。
この記事は、小学4年時の担任に発達障害の診断がないことを理由に配慮をしてもらえず、フリースクールに転校することを決断した親子(Iさん)のお話の続きです。15年前の話です。
発達グレーゾーンの息子さんは小学校5年生から中学3年生までフリースクールに通いました。 このフリースクールは、得意を伸ばす教育方針のフリースクールでした。
息子さんは、このフリースクールに毎日楽しく通っていたそうです。
Part1、2では、地元小学校での親子の苦悩や当時の息子さんの変化や成長、お母さんの子育ての軸などについてお話を伺い記事にしています。
今回は、好きなことをとことん追求できる得意を伸ばす教育方針のフリースクール卒業後から現在の仕事に就くまで、息子さんがどんな道を歩んでいったのか聞いていきます。
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2.フリースクールに転校した発達グレーの子!卒業後の進路はどうなる!?
Iさんの息子さんは、小学5年生よりフリースクールに転校しました。小学校では叱られてばかりだったそうですが、フリースクールで毎日褒められるようになりました。
小学5、6年の2年間、そして中学の3年間をフリースクールでとことん好きなことを追究しながら楽しく過ごしました。
さて、楽しく過ごした5年間が終わり、卒業後の進路はどうなったのでしょうか?
ーーーフリースクール卒業後の進路を教えてください。
「高校は、広域通信制の高校(※1)の全日制普通科を選びました。いくつか見学に行き、最終的には本人が決めました。」
※1 通信制高校には「広域」と「狭域」のふたつあります。
広域通信制高校は、3つ以上の都道府県から生徒を募集する通信制高校のこと。 狭域高校は、学校のある地域と隣接するひとつの都道府県のみ生徒を募集している通信制高校のこと。
広域通信制高校は、基本的に私立校で、狭域通信制高校の多くは公立となっています。
こちらの記事もご覧ください。
ーーーフリースクールから高校に進学するにあたって何か心配などはありましたか?
「特にありませんでした。メリットでもあると思いますが、この学校は、教科書、テスト、通知表がなかったんです。もし行きたい高校が、内申書が必要であれば進路が制限されることもあるかと思います。」
◆ポイント解説
教科書、テスト、通知表がなかったのですね。 テストがないのは、子どもにとっては嬉しいことかもしれませんね。
Iさんの息子さんが通っていたフリースクールでは、ペーパーテストでの点数による成績評価は行っていません。
テストでの相対評価によって苦手意識ができてしまい、本来の能力の発揮ができなくなる弊害があるからだそうです。
テストを行わないことで、子どもたちに苦手意識ができず、学習意欲を保ち、のびのびと学力を伸ばせるということです。
特に卒業後の進路に不安がなかったというIさん。息子さんは内申書のいらない学校を選んだんですね。
では、息子さんの進学した学校についてお話を伺っていきましょう!
ーーーどんな学校だったのでしょうか?
息子の選んだ学校は、通信制ではありましたが、自宅で学習するタイプではなく、全日制で通学型でした。毎日通っていたんですよ。
この学校には体験学習がありました。体験学習では、沖縄、オーストラリアに行ったのですが、それがとても楽しかったようです。
1年生の夏休みの1ヶ月間は沖縄でホテルの就業体験があり、ホテルのプライベートビーチでお仕事したようです。2年生はオーストラリアに3ヶ月ホームステイをしました。 3年生では、またオーストラリアに半年いてほとんど家にいなかったような感じでした。」
ーーー凄いですね!息子さんは初めてのところに対して不安などなかったのでしょうか?
「息子はそういうのは大丈夫でした。体験型の学習が彼には合っていたんだと思います。 なぜか、根拠のない自信が息子にはありました。親元を離れたいという気持ちもあったようなので、不安などはなかったようです。」
ーーー高校の進路選びでなにかアドバイスがあれば教えてください。
「内申書はなかったので、内申書が必要な高校にはいけませんが、今はいろいろな高校があります。
そういう意味では、選択肢は大きく広がるので、親子で相談し足を運んで気に入るところを選べばいいと思います。まったく不安に感じる必要はありませんよ。」
◆ポイント解説
高校になると選択肢が大きく広がるという言葉に安心しました。
現在不登校の子どもをもつ親御さんは、中学までは義務教育だけど、高校からどうしようと悩んでいる方も少なくないと思います。
不登校で勉強が遅れていたり、内申書がない子どもでも希望が持てますね! お子さんに合っていそうな学校を事前に調べていくつか見学するといいと思います。
通信制の高校も、時代とともに変化しています。 当たり前のように「中学を卒業したら全日制の高校に進む」というスタイルも多様性を認めつつある時代の変化の中、少しずつ変わりつつあります。
だから、心配することはありません!
自分の好きなことや興味のあることが特にない、将来どんなふうになりたい、どんな仕事をしたいなどまだ、わからない子ども。
そのような子どもは、いわゆる全日制でもいいかもしれません。まんべんなく必要であろう知識を学ぶことはできます。そんな中で好きなことや興味あることを見つけていくのも一つです。
でも、発達凸凹やグレーゾーンのお子さんにも多いですが、すでに自分の好きや得意分野がわかっている、こんな仕事をしたい、また興味のないことはしたくないなどはっきりとしている子ども。
そのような場合は、通信制高校を選択することによって、本人にとっての無駄な時間を過ごすことなく、専門性を高めることもできるのです。
また、全日制よりも拘束時間も少ないので、好きな活動をする時間や体を休める時間も確保できると思います。
このように、疲れやすいお子さんや集団生活が苦手、朝が苦手など、自分の体調や苦手な部分をよりカバーでき、なおかつ専門性を高められるのが通信制のメリットでもあります。
決して全日制を批判しているのではないですが、必ずしも全日制に行かなくてはならない、そうでないと大学の進路がせばまる…また、通信制は全日制に行けない子どもが行くところだ…というようなネガティブな思い込みは、この際捨ててしまいましょう。
実際、Iさんの息子さんも通信制の全日制高校に入っています。通信制でもいろいろな学校があるんですよ。
時代はどんどん変化していっています。 好きなことや興味あること、得意なことに力をいれて自分の強みにするには、高校に自分を合わせるのではなく、自分に合った学び方を選択するほうがいいのではないでしょうか?
万が一何かの事情で高校に行かなかったり、途中でやめたとしても「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)」があります。
合格すると、国立・公立・私立の大学や短大、専門学校の受験資格を得ることができます。 各種国家試験や就職などの採用試験などの受験資格を得ることもでき、進路の選択肢もさらに広がります!
次に、広域通信制高校卒業後どういった進路をたどって現在の職についたのか聞いてみました。
お話を伺う中で、Iさんのお子さんへの関わり方がやはりカギになると思いました。 子どもには、「○○○な関わり」が大切です!
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3.不登校、発達障害あるなし関係なく子どもには、「○○○な関わり」が大切!
ーーー大学はどうされましたか?
「息子は下宿したかったので、高校の就業体験で気に入った沖縄か北海道の大学がいいなと言っていました。私は、『そんな遠くにいかなくても近くでも下宿できる』と言いました。
そして、どんな大学がいいかなと考えたとき、『芸大がいいかな?』となって、自分でオープンスクールに行きました。いくつかの芸大を悩んでいたようです。
結局、AO入試で悩んでいたうちのひとつの芸大にいきました。作文みたいなのはあったようですが、教授と何回か話をして決まったようです。その芸大には映像関係学科があって、そこに行きました。
本人は、『勉強せずに大学に入る』といっていましたが、その通りになりました。芸大だったからかもしれませんが…
私は、大学は社会人になる前の猶予期間の4年間と思っていたので息子の行きたいところに行くことができてよかったと思います。」
ーーー芸大に進んだきっかけは、何だと思いますか?
「息子の通っていたフリースクールのサマースクールのプログラムが『映画作り』だったのでそれがきっかけになったのかもしれません。その後写真、映像に興味を持つようになったと思います。
ユニークな子が多かったので、お友達との関わりの中で『ラジオドラマ』に興味をもつようになり、毎週楽しみに聞くようになりました。その台本が発売されていて欲しいというので購入しました。
辞書みたいに分厚い本だったのですが…読んでました!」
◆ポイント解説
なるほど、Iさんは、お子さんの好きなこと、興味のあることを応援していたのですね!
インタビューする中でもIさんは、
「子育てをする中で、発達障害であるかどうかではなく『こどもが困っていることは何か?』『子どもの本当の望みは何か?』という2つのことを子どもに寄り添い、わかってあげることが大切。
子どもが毎日楽しいと感じながら、明日もきっと楽しいと希望をもって過ごしてほしいという望みをみつけてからぶれることはありません。」
と笑顔で力強く語って下さり、とても印象的でした。
Iさんは、息子さんに対して毎日楽しく過ごせることを願っていました。そして「肯定的な関わり」をずっと続けていたんです。
そんなⅠさんに見守られながら、息子さんは、安心してのびのびと自分の好きなことに没頭することができたのでしょう。
そして息子さんは現在、イベント企画会社に勤務し、立派に親元離れて楽しく暮らしているのです。
「肯定的な関わり」は、子どもに自信をつけさせることができます。そして自信がつけば子どもは、いろいろなことにチャレンジしてみたくなるのです。
Iさんのお子さんは、家庭でも学校でも「肯定的な関わり」をされていたので、自己肯定感、だけでなくやる気や行動する力も備わったのでしょう。
発達科学コミュニケーションでは、このIさんと同じように、発達障害あるなし関係なくどんな子どもにも使える肯定的な関り方をお母さん達にお伝えしています。
肯定的に関わり、子どもを認めていくことで、自己肯定感も備わってきます。
親は、先回りしすぎずに子どもを見守ることが大切です。しかし、子どもが本当に困っていることがあれば、なんとしてでも子どもが困らないように対策したり環境づくりをする。
そして、子どもの本当の望みを見極め、子どもを心から信じ寄り添い応援することが大切だとIさん親子から学ばせていただきました。
そのためには、日頃の親子のコミュニケーションがやはり大事です。
どうしても、子どものできていないことや、親心で将来のためを思ってガミガミ言ってしまいがちですが、否定的な関わりでいいことは何もありません。
子どもに寄り添いながら肯定的に関わることで、親子コミュニケーションも円滑になり、思春期になっても色々なことを話し合えたり、困っていることや悩みに気付ける親子になれるんだと思います。
いくつになってもお互い話し合える関係を築いておきたいですね。
子どもの未来は明るいです!
できるだけ、楽しい日々を重ねていきましょう!
こちらの記事で、フリースクールを選ぶコツがわかります。
これが知りたい!不登校の子どもが進む進路について公開中
執筆者:愛川 まいこ
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)