ASDの子どもには、二次障害が原因で体の不調があらわれることがあります。 この記事では、その理由と、子どもの不調をぐんと減らすためにママができる具体的な対応のヒントを紹介します。
1.二次障害として、子どもの心のつらさが体の症状に出てきて困っている親御さんへ
自閉症スペクトラム症(ASD)の特性がある子どもは、その特性が周囲に理解されないことで、強いストレスや失敗体験が積み重なり、二次障害が起こることがあります。
たとえば…
・親や先生に特性を理解されず、何度もきつく叱られる
・友達から仲間はずれにされたり、からかわれる
・学校の勉強についていけなくなる
こうした経験が重なると、 「一生懸命やっているのにうまくいかない」 「自分はダメなんだ」 と自信をなくしてしまいます。
その結果、
・頭痛・腹痛・吐き気・食欲不振などの身体症状
・不安やうつなどの心の症状
・不登校やひきこもり
・暴言や暴力
といった形で二次障害が現れることがあります。
この記事では、ASDの特性によって心のつらさが体の不調として表れるのはなぜか?
子どもの体の不調を和らげるため、ママができる対応をお伝えします。

2.息子に二次障害のサインがいくつも出て、毎日心配でした
ASDの傾向がある息子は、入学した頃から登校を嫌がり、家を出る前に大泣きして暴れることもよくありました。
「学校行きたくない」と泣いたり暴れたりする息子に、私は何度も 「なにが嫌なの?先生に話してみるよ」 と声をかけ、理由を聞こうとしました。
でも息子の答えは、多くの場合「分からない。学校が怖い」でした。
私は「そっか、怖いんだね」と受け止めようとしながらも、「学校へ行ってほしい」という気持ちが強く、息子の本当のつらさを深く聞き出すことができませんでした。
励ますつもりで 「そのうち慣れれば、学校も嫌じゃなくなるよ」 と自分の意見を伝えてしまい、息子が安心して気持ちを話せる時間をつくれていなかったのです。
やがて息子は、自分のつらさをうまく言葉にできず、処理しきれないストレスが体にあらわれるようになりました。
息子の症状は、足の痛み、腹痛、頭痛、吐き気、嘔吐、頻尿などでした。
何度も病院に行きましたが、
「心因性頻尿や過敏性腸症候群かもしれません。しばらく様子を見ましょう」
と言われ、なかなか症状はよくなりませんでした。

3.ASDの子どもの二次障害が体の不調としてあらわれるのに考えられる理由とは?
♦不安が強い気質がある
ASDの子の中には、不安が強く、ネガティブな感情を残しやすい子がいます。
脳の内側に扁桃体(脳の感情に関わる部分)があり、主に不安、恐怖、怒り、緊張などのネガティブな感情に関わっています。
そのとなりに、海馬(脳の記憶をする部分)があり、扁桃体で不安などネガティブな感情を感じると、すぐに記憶するようできています。
不安が強い子は、この扁桃体が過剰に反応してしまい、疲れやすかったり、ストレスを溜めやすいのです。
身体症状などの二次障害がでている時は、不安が強く、扁桃体が働きすぎて疲れている状態です。
こんな時は、まず疲れが溜まった脳を落ち着かせてあげることが大切です。
♦︎自分の気持ちを「言葉で伝える力」が未熟なため
ASDの子どもは、不安が強く繊細でありながらも感情を言葉で出すことが苦手なため、その感情を発散できないまま過ごしてしまうことがあるのです。
では、子どもが自分の気持ちをどこにも発散しないまま過ごすとどうなるのでしょう?
本当はつらくても助けを求められず、心の中に不安やストレスがどんどん積み重なっていきます。
「つらい」と言いたくても言葉にできない──そんなとき、代わりに心の声を届けてくれるものがあります。
それは、溜め込んだ不安やストレスなどのつらい気持ちが、体の不調として出てきてしまうことです。
息子は、小さい頃から不安が強く、繊細だと感じていました。
この時は、いつも以上にとても不安が強くストレスが溜まった状態だったと考えられます。

4.ASDの子どもの体の不調がぐんと減った!ママの関わり方
♦スキンシップを増やす
疲れが溜まった脳を落ち着かせるには、”肯定”の声がけや関わりを増やすことが大切です!
その中でも、二次障害の身体症状を落ち着かせるのに効果的だった”肯定”は、スキンシップです。
スキンシップは、感情の脳を落ち着かせる効果があります。
また、スキンシップによって脳内に「オキシトシン」と呼ばれる愛情ホルモンが分泌され、不安やストレスが和らぎ、心身ともにリラックスできるといわれています。
子どもが「お腹が痛い」「頭が痛い」「吐き気がする」など伝えてくれたら、「そうなんだね。お腹痛いの辛いよね」と子どもの辛い気持ちに共感し、お腹や頭の痛い部分をさすってあげました。
また、吐き気を抑えるには、ツボを押してあげると効果がありましたよ。
手のひらを上に向けて、手首のシワから指3本分ひじ側に内関(ないかん)というツボがあります。
子どもが気持ち良いと感じる強さで押してあげると、息子は吐き気が和らぎました。
♦親子の会話を増やす
まずは、親子で一対一の会話を増やしましょう。
不安が強い時は、すぐに会話が弾まないかもしれませんが、子どもの好きなことなら少しずつ話してくれることがあります。
子どもが話してくれたら、ニコニコ笑顔で、ゆっくり待つのがママの聞き方のコツです。
子どもが話してくれたことに、「いいね!」「ママもそう思うよ!」などと肯定や共感をしてあげましょう。
ママがゆっくり話を聞いてあげる時間を大切にしましょう。
それが自分の気持ちを言葉で伝える力を育てることにつながっていきます。
ママと一対一の関わりを増やし、安心できる関係ができ、自分の気持ちを言葉で伝える力が育つと不安な気持ちも上手く伝えられるようになってきます。
また、不安な時や元気がない時に話を聞くときは、正面ではなく横に並んで聞くのがおすすめです。
正面から向き合うと緊張してしまい、「話したくない」と感じる子もいるからです。

5.息子の二次障害による体の不調がぐんと減った!
息子の吐き気、頭痛、腹痛、頻尿などの症状は、スキンシップや会話を増やすことで、約3か月ほどでぐんと減りました。
元気も戻り、不安からママべったりだった息子が、週末にはママと離れてパパと電車でお出かけできるようにもなりました。
体調不良をきっかけに不登校になり、復帰までは時間がかかりましたが、今では 「ずっと家にいても暇だし、学校いこー」 と、得意な授業に合わせて毎日登校しています。
日によっては、学校で嫌なことや不安があると「行きたくない」と荒れる日もあります。
それでも、以前のように「学校怖い」だけで終わらず、私がゆっくり話を聞く時間を作り、すぐに私の意見を言わないことで、息子も本当のつらい気持ちを伝えられるようになりました。
この経験が、二次障害によって子どもの心のつらさが体の症状に出てしまい、対応に悩んでいる親御さんのヒントになれば嬉しいです。

執筆者: 木村 まい
発達科学コミュニケーション アンバサダー