つま先歩きはASD(自閉スペクトラム症)の子どもに見られる特徴のひとつですが、必ずしも発達障害とは限りません。感覚過敏や常同行動が原因となることがあり、遊びを通じた支援が効果的です。記事では実体験を交え、改善に役立つ運動遊びを紹介しています。
1.つま先歩きをする子どもの様子が心配…。
「うちの子、よくつま先で歩いているけれど大丈夫かな…?」
そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。
成長過程で一時的につま先歩きをすることは珍しくありませんが、2歳を過ぎても頻繁に見られる場合、発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)傾向の可能性もあるとされています。
ただし、つま先歩き=発達障害と断定することはできません。
大切なのは、その子の全体的な発達の様子をよく観察し、親が子どもの発達特性について理解することです。
この記事では、つま先歩きの背景にある発達特性と、日常で取り入れられる運動遊びについて解説します。

2.幼い頃からつま先歩きをしていたASD傾向のある息子の話。
わが家の長男は、1歳半頃から歩き始めましたが、よく見るといつもかかとを浮かせ、つま先だけで歩いていました。
最初は「ちょっと変わっているけれど、そのうち治るだろう」と楽観視していました。
しかし、3歳になってもその歩き方は変わらず、さらにこだわり行動や感覚過敏も見られるようになりました。
3歳児健診で指摘を受け、発達支援センターで相談したところ、ASDの傾向があることがわかりました。
専門家からは「つま先歩きもASDに見られる特徴のひとつ」と説明を受け、理学療法士による運動遊びの指導を始めました。
その後、楽しみながら体の使い方を学ぶことで、少しずつかかとをつけて歩けるようになり、現在ではほぼ自然な歩き方になっています。

3.ASD傾向のある子どもがつま先歩きになる理由。
ASDの子どもがつま先歩きをする理由はいくつかありますが、主に以下のような点が挙げられます。
① 感覚過敏・感覚鈍麻
ASDの子どもは、足の裏の感覚に対して過敏または鈍感なことがあります。
床の感触が不快でかかとをつけたくない、または逆に刺激が欲しくてつま先に重心を置くといった行動に表れます。
② ボディイメージの不安定さ
自分の体の動かし方や重心のとり方がうまくつかめず、無意識につま先に力が入る子もいます。
これは筋力や姿勢の発達にも関連しており、理学療法などのアプローチが有効とされています。
③ 常同行動の一種
つま先歩きが「同じ動きを繰り返す」ことで安心感を得る常同行動のひとつとして現れる場合もあります。
この場合、無理にやめさせるのではなく、安心感を得られる他の方法や環境調整が大切です。

4.子どものつま先歩きを改善するおすすめの運動あそび〜3選〜
つま先歩きをやめさせようとするのではなく、「自然と正しい歩き方に近づける」ことがポイントです。
そのためには、遊びを通じて身体の感覚やバランス感覚を育むのが効果的です。
ここでは、自宅や保育の場でも簡単に取り入れられる運動遊びを3つご紹介します。
◆① バランスストーン遊び
カラフルなバランスストーン(または厚手のクッションや座布団)を床にランダムに置いて、その上を歩く遊びです。
でこぼこの感触を足裏で感じながら、自然にかかとをつける動きを誘導できます。
遊びの中でバランスを取る力も育ちます。
◆② 動物歩きごっこ
「くまさん歩き(四つん這い)」「カニさん歩き(横歩き)」「ペンギン歩き(足をそろえて)」など、いろいろな動物になりきって体を動かします。
楽しく全身を使うことで、姿勢や重心の取り方の練習になります。
とくにペンギン歩きは、かかとをつける動きを自然に促します。
◆③ 壁沿いかかとタッチゲーム
壁に背中をつけて立ち、かかと・お尻・背中・頭を壁につけて「壁ピタ体操」をすることで、正しい姿勢を体で覚える練習になります。
「10秒キープできたらシール!」など、ゲーム感覚で取り組むと楽しく続けられます。
つま先歩きは、ASDの子どもに見られる特徴のひとつですが、それ自体が問題行動とは限りません。
大切なのは、子どもの体や心の発達を理解し、その子に合ったサポートを行うことです。
運動遊びは、子どもが「楽しい」と感じながら体を育てる最良の手段です。
無理に直そうとするのではなく、少しずつ自然な動きを促すことが、子どもの自信にもつながります。
気になる場合は、地域の発達相談窓口やかかりつけ医などにも相談してみましょう。
保護者が一人で悩まず、専門家と協力して支援することが、子どものより良い成長への第一歩となります。
