子どもが「かさぶたをはがす癖」を繰り返すのは、皮膚むしり症(スキンピッキング症)かもしれません。単なる癖ではなく、ストレスや感覚過敏が原因となることも。この記事では、その背景や家庭でできる具体的な対応方法を紹介し、子どもと無理なく向き合うヒントをお伝えします。
1.子どもの『かさぶたをはがす癖』に困っているママはいませんか?
「やっと治りかけてたのに、またかさぶたをはがしてしまった…」
そんな子どもの姿に、がっかりした経験はありませんか?
転んでできたすり傷や虫刺されのあと、せっかくかさぶたができていたのに、気づけば子どもがそれを指でいじってしまい、また出血してしまう。
そんなことが何度も続くと「なんで我慢できないの?」「どうしたらこの癖をやめてくれるの?」と悩んでしまう親御さんも少なくありません。
実はこの「かさぶたをはがす癖」、「皮膚むしり症(スキンピッキング症)」と呼ばれる行動の一種かもしれません。
まずは、私自身の中学生の時の体験を少しお話しさせてください。

2.ストレスや不安を感じると頭皮のかさぶたをはがすことが癖になっていた…。
私は中学生の頃、頭皮のかさぶたを無意識に指でいじる癖がありました。
気づけば手が頭に伸びて、かさぶたを探してしまう。
そして、少しめくれた部分を見つけると、どうしてもはがしたくなってしまい、ダメだとはわかっていてもはがしてしまうのです。
特に受験勉強の時はこの行動がエスカレートして、頭から血が出てしまうこともありました。
かさぶたをはがして血が出る。そこがかさぶたになると、またはがす。
このようなことを続け、頭皮の一部が脱毛状態になってしまった程でした。
自分でもどうにかやめたいと思うのですが、なかなか癖は治らず…。
なぜそんなことをしていたのか?
今になって思うと、受験へのプレッシャーや人間関係へのストレスが重なっていた時期だったので、当時の私はかさぶたをはがすことで不安やストレスを紛らわせていたのかもしれません。
当時のことを振り返ると「かさぶたをはがす癖」は単なる「悪い癖」と片付けてはいけない、と感じています。

3.皮膚むしり症って知ってる?
「皮膚むしり症(スキンピッキング症)」は、医学的には、強迫症スペクトラム障害の一種とされていて、2013年からはDSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)にも正式に登録された精神疾患の一つです。
かさぶたやにきび、虫刺されなどの皮膚を繰り返し触ったり、むしったりする。
その行動を自分でコントロールできない。
皮膚に傷ができたり、感染したりするほど繰り返される。
やめたいと思っても、無意識にやってしまう。
この症状は大人だけでなく、子どもにも見られることがあり、周囲が「癖」として見過ごしてしまいがちです。
しかし、背景には不安や感覚の問題など、さまざまな要因が隠れていることも多いのです。

4.皮膚むしり症はなぜ起こる?
①自己刺激行動の一つである。
皮膚をむしる行為は、「自己刺激行動(セルフスティミュレーション)」の一種と考えられています。
これは、自分の体を刺激することで落ち着いたり、快感を得たりする行動で、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性を持つ子どもによく見られることがあります。
指先で皮膚をむしるという動きは単調で、一定のリズムがあります。
その行動を繰り返すことで、本人にとっては「安心感」や「集中力の補助」として機能している場合もあるのです。
②感覚過敏によって痛みやかゆみに敏感になっている。
発達特性のある子どもには、「感覚過敏(あるいは鈍麻)」という特徴が見られることがあります。
傷口のかさぶたが「チクチクして気持ち悪い」
皮膚が引っ張られる感じが「不快で耐えられない」
治りかけの皮膚が「ムズムズして我慢できない」
このような感覚の違いから、かさぶたを意図的に「はがしてしまう」行動につながることもあります。
つまり、子どもがかさぶたをはがしてしまうのは、意思が弱いからでも、悪気があるからでもありません。
むしろ、「どうにも我慢できない」「無意識にやってしまう」からこそ、困っているのは本人自身かもしれないのです。

5.皮膚むしり症の対応方法
では、子どもが「かさぶたをはがす癖」をやめられないとき、親としてどのように対応すればよいのでしょうか?
以下に、家庭でできる対処法をご紹介します。
①どのような場面で皮膚むしりが起こるかを観察する。
まず大切なのは、「どんなときにその行動が出ているのか」を把握することです。
宿題の時間?
テレビを見ているとき?
寝る前や朝起きたとき?
タイミングや環境を記録することで、「ストレスがかかるときに多い」「手が空いているときにやっている」などの傾向が見えてくるかもしれません。
無理に「やめさせよう」と注意するよりも、「行動の背景を知る」ことが第一歩です。
②他の感覚刺激を与えてあげる。
冷やしてあげることをおすすめします!
皮膚をむしる行動が、感覚の問題に関係している場合は、「別の感覚刺激を与える」ことで落ち着くことがあります。
例えば…
傷口やかさぶた部分に冷たいタオルや保冷ジェルを当ててみる
指先で触れる代わりにセンサリートイや柔らかい布を握らせる
爪を短く切ることで、無意識のひっかきを防ぐ
冷却には、かゆみや違和感を軽減する効果があり、「触らずにいられる」助けになることがあります。
③皮膚むしりをやめることより、うまく付き合っていくことを目指す
完全に「やめさせる」ことを目標にすると、親も子もストレスがたまりやすくなります。
大切なのは、「今の状況より少しでもよくなること」を目指すこと。
1日に何度もむしっていたのが、2回になった
1か所だけになった
自分で冷やすなどの工夫ができるようになった
こうした小さな変化を認めていくことが、長い目で見て改善につながります。
おわりに:『癖』の裏には、子どもなりのSOSが隠れているかもしれない
子どもがかさぶたをはがす行為は、親から見れば「ただの癖」かもしれません。
しかし、その行動の裏には、子どもなりの「ストレス」や「不安」、「感覚の過敏さ」などが隠れていることがあります。
まずは怒らず、責めず、観察してみましょう。
そして、子どもが安心して自分の気持ちを話せるような環境づくりを心がけてください。
「うちの子、なんだか変な癖がある…」 そんなふうに感じたときこそ、子どもの心と体の声に耳を傾けるチャンスです。
