「母子登校はいつまで続くの…?」毎朝の付き添いが限界になっていませんか?母子登校がつらい自分の心を守りつつ、子どもの気持ちや気質に寄り添い、親子の安心を守りつつ少しずつ卒業へ進むコツをやさしく解説します。
毎朝、子どもと一緒に学校へ行く「母子登校」。
「少しの間だけ」と思っていたのに、気がつけば日常になってしまっている…。
「いつまで続くんだろう?」「私だって疲れているのに…」
そう感じるママは、決してあなただけではありません。
疲れた、もうやめたい――そう思うのは自然なこと。
それはむしろ、毎日必死にがんばっている証拠なのです。
1.母子登校とは?「ママと一緒じゃなきゃ行けない」子どもの気持ち
母子登校とは、親の付き添いがなければ学校に通えない状態のことを指します。
■ 母子登校のよくある形
・家から校門まで一緒に登校する
・教室まで一緒に入り、朝の会まで見守る
・授業中に親が別室で待機する
・ほぼ一日中、教室で一緒に過ごす
ひと口に母子登校といっても形式はさまざまです。
ほぼ1日中付き添うとなれば、家庭や仕事への影響も大きくなります。
そもそも母子登校は、子どもが「学校に行きたくない」と訴え、親が「不登校になるよりは…」と必死に付き添うことで始まるケースが多いのです。
段階的に通常登校へ戻ることを願って続けているものの、日常化してしまうと家族の負担はとても大きくなります。
私自身も、そんな「母子登校」に深く悩んだひとりです。
小学校入学当初から行きしぶりをしていた長男は、小4の春、母子分離不安が強くなり、校門の前で「ママも一緒にいて!」と泣いて離れられなくなりました。
最初は「私が付き添えば、そのうち落ち着くだろう」と軽く考えていました。
しかし実際には、1年間、毎日教室にまで付き添う母子登校が続きました。
私がそばにいれば、息子は授業を受けられる。
だから「私が頑張れば大丈夫」と思っていたのです。
けれども、母子登校の日々は抜け出せるどころか、どんどん深みにはまっていきました。
息子の不安は大きくなり、荒れる日も増え、暴言や暴力に私も心が折れそうに…。
精神的にも体力的にも限界で、「母子登校、いつまで続くの?」「このままでは親子ともにつぶれてしまう…」と不安で仕方ありませんでした。

2.母子登校はいつまで続く?
「母子登校はいつまで?」という疑問に、明確な「◯年生まで」という答えはありません。
一般的に、母子登校は 子どもの気質や発達特性、学校環境、親子の関わり方 など、さまざまな要因が重なって続いていきます。
研究や支援の現場でも「1〜2年で落ち着く子もいれば、3〜4年続く場合もある」と言われており、成長のペースは本当にそれぞれです。
■受講生さんのケースから
発達科学コミュニケーション(発コミュ)の受講生たちの声を紹介します。
・1年生から毎日授業に付き添っていたけれど、1年かけて環境に慣れ、2年生からは徐々に離れられるようになった。
・付き添い登校から不登校も経験したが、今は毎朝一人で通えるようになった。
・授業も付き添ったり、別室で待機、送迎のみなど形を変えながら何年も続いていた。
同じ「母子登校」でも、形も期間も人によってまったく違うのです。
■私の体験から気づいたこと
私自身も「一体いつまで続くの?」と不安で仕方なかった時期がありました。
しかし振り返ると、ある日突然終わるのでもなく、まっすぐな道でもなく、山あり谷あり。
「今日はここまでできた!」という小さな一歩の積み重ねが、母子登校から卒業する道につながっていました。
だからこそ「期限」を求めすぎるよりも、
✔ 子どもの小さな成長を見逃さないこと
✔ 親がいる安心感から少しずつ『自分で安心できる力』を育てていくこと
が大切だと今は思います。

3.母子登校が続くのはなぜ?
母子登校が長く続くのは、決して親の努力不足や子どものわがままが原因ではありません。
母子登校が長く続く背景には、子どもの生まれ持った気質や発達特性、環境への不安が大きく関係しています。
例えば、発達障害グレーゾーンの子どもは、学校生活でさまざまな苦手さを抱えています。
集団での学習のペースが合わなかったり、不注意で一斉指示を聞き逃してしまったり、急な予定変更への対応が難しかったりすることがあります。
また、敏感な気質(HSC:ひといちばい敏感な子)の子は、教室のざわざわした音や人の動きが強い刺激になったり、他の子が叱られている様子を自分のことのように受け止めてしまったりすることもあります。
※発達障害グレーゾーンの子どもでも、HSCの気質を持つ場合もあります。
このように、特性や気質によっては、学校で過ごすこと自体が大きなストレスになることがあります。
さらに、クラス替えや担任の先生との相性が変わると、不安や緊張が増してしまうことも少なくありません。
受講生さんのケースでも、
・1年かけて新しい環境に慣れ、徐々に教室に一人で入れるようになった例
・3カ月で一人で登校できるようになった例
・クラス替えや担任の変化で一時的に母子登校が復活した例
など、子どもそれぞれに「安心できる環境」が整うまでの時間には差があります。
私自身も、長男が小4のときに母子分離不安が強くなった経験を通して、子どもの安心を尊重しつつ少しずつ自立を促す関わり方の大切さを学びました。
次の章では、母子登校を少しずつ卒業するために、親が日常でできる工夫や具体的な対応策についてご紹介します。

4.母子登校から一歩進むために…親ができる小さな工夫
母子登校は「やめよう」と思ってすぐに終わるものではありません。
「安心のよりどころ」である親の存在があるからこそ成り立っているからです。
そのため、「いきなり手を離す」のではなく、安心感を保ちながら少しずつ自立のステップを踏むことが大切です。
■親ができる工夫のポイント
ポイント1:小さな一歩を目標にする
いきなり「明日から一人で教室に行こうね」と伝えても、子どもの不安は大きすぎます。
まずは「教室まで一緒に行くけど、朝の会が始まったら廊下で待つ」など、子どもが挑戦できそうな一歩を設定しましょう。
ポイント2:安心できる合図を作る
「ママはここにいるよ」と伝えるメッセージや、ちょっとしたしるしやお守りがあると、子どもは安心して過ごせることがあります。
実際に「親子でプロミスリングを作り、お守り代わりにしたことで子どもが安心できた」というママの体験談もあります。
ポイント3:先生や学校と連携する
担任や支援員の先生と共有し、「ここまでできたら先生にバトンタッチ」という流れを作ると、子どもがスムーズに移行しやすくなります。
ポイント4:できたことを一緒に喜ぶ
小さな一歩を積み重ねることが大切です。
「今日は廊下で待てたね」「10分一人で過ごせたね」と一緒に喜ぶことで、子どもの自己効力感が育ちます。
■私が母子登校を卒業できたきっかけ
私自身も長く母子登校に悩んできました。
そんな中で大きな転機となったのは、発達科学コミュニケーションで「子どもとのコミュニケーションの取り方」を学び、毎日の関わり方を180度変えたことでした。
それまでは「ちゃんとできたら褒める」ことばかりを意識していましたが、そこから一歩踏み出し、
・小さなことでも出来たらすぐに褒める
・うまくいったときだけではなく、「やろうとした瞬間」を認めて声をかける
・子どもの“推し活”を一緒に応援する
・「ご飯にする?パンにする?」など小さな選択を日常の中で委ねる
こうした関わりを繰り返すことで、少しずつ息子の表情が変わっていきました。
「どうせ自分はダメだ…」と自己肯定感を下げていた息子が、徐々に自信と素直さを取り戻していったのです。
そして、小学5年生の新年度を迎えるとき、私はある決断をしました。
それは―― 「新学期から教室には付き添わない」 ということ。
同時に、息子にこう伝えました。
「本当はママも辛かったの。だからあなたも、もしも辛かったら無理して学校に行かなくてもいいんだよ」
息子がどんな反応をするのか、正直とても心配でした。
けれども驚いたことに、その次の日から息子は一人で教室に入れるようになったのです。
その姿を見て、私は心から気づきました。
学校に行くかどうかを決めるのは子ども自身。
その答えがどちらであっても、子どもの意見を尊重し、ありのままを認めることが何より大切なのだと。

5.母子登校に向き合う親へ…心を守るためのヒント
母子登校が続くと、子どもの不安だけでなく、親自身の心もすり減ってしまいます。
「私が頑張らなきゃ」と思えば思うほど、疲れや孤独感が積み重なり、気づけば限界に近づいてしまうことも…。
でも、子どもを支えるには、まず親の心のエネルギーが満たされていることが大切です。
■親の心を守るためのヒント
・一人で抱え込まない
信頼できる人や同じ経験をした仲間とつながり、話すだけで、気持ちがぐっと軽くなることがあります。
・自分の気持ちを認める
「もう疲れた」「辛い」と思うのは弱さではなく、頑張っている証拠。
まずはその気持ちを否定せずに受け止めましょう。
・相談先を探す
学校の先生、スクールカウンセラー、地域の子育て支援センターなど、外の力を借りることで安心につながることもあります。
母子登校が長く続いても、それは決して「親の努力不足」ではありません。
それだけ子どもが「親の安心」を必要としている時期なのだと捉えてみてください。
そして、少しずつでも「手を放す日」はやってきます。
その時まで、無理をせず、焦らず、親子のペースで歩んでいきましょう。

執筆者:いたがき ひまり
発達科学コミュニケーション マスタートレーナー