人一倍不安を感じやすく、初めての事やいつもと違う場面が苦手な分離不安っ子。この不安の大きさは、分離不安の子が持つ特性からくるものです。ママとの毎日の会話の中で、親子の“報連相”を徹底することによって、子どもの不安を安心に変えていきましょう。
1.毎日が不安でいっぱいの我が子
うちの息子は母子分離不安があり、繊細で初めてのことが苦手です。
例えば、新しく始めたい習い事があり、その体験会に行ってみても、その場に一緒に私がいても体験会場に入れなかったり、他の子と一緒に並べなかったり。
自分で「やりたい!」と言ったことでも、いざその場になると緊張して怖くなってしまい、一歩踏み出すことができなくなってしまうのです。
また、いつもと違うことに対しても人一倍不安を感じやすく、学校の行事や急な時間割の変更なども苦手で、素早く対応することができません。
そんな息子の毎日には、不安がいっぱいです。
「ママがいなくなったらどうしよう」
「大きな地震がきたらどうしよう」
「ミサイルが飛んできたらどうしよう」
色んなことを心配しながら生活しています。
私は、息子の特性を理解するまで、このような息子の言動が不思議で仕方がありませんでした。
「自分でやりたいと言った習い事なのに、どうして踏み出せないんだろう」
「私はいなくならないのに、何がそんなに心配なんだろう」
そんなふうに思っていました。
2.分離不安っ子の“不安感”には理由があった
息子の困りごとを、私の手で何とかしてあげたい。
私が息子の発達の専門家になりたい!
そんな想いから発達について学んでいくと、息子の様々な行動の理由がよく分かるようになりました。
息子が毎日色々なことに不安を感じてしまうのには、理由があったのです。
それは、発達の特性によるものでした。
息子が持つ、母子分離不安について少し説明をします。
母子分離不安とは、子どもが母親など愛着対象から離れることに対し、不安を感じることです。
発達段階で誰でも経験するものですが、不安が長期間続き、腹痛・頭痛などの身体的症状や、精神的症状、さらに通園・通学拒否などが見られる場合、「分離不安症」と診断されることがあります。
母子分離不安の子の特性として、他の子に比べて過度な不安を感じやすいことがあります。
その特性から、日常生活において様々なことが大きな壁となっているのです。
・初めてのことが苦手
・急な予定変更が苦手
・見通しが立たないことが苦手
・大人数が苦手
・人前で何かをすることが苦手
・過去のネガティブな記憶を引きずりやすい
・感覚が過敏
・繊細で小さなことでも気になる
・人の目を過度に気にしてしまう
このような場面に遭遇すると、途端に大きな不安を感じてしまい、いつもならできていることでも、怖くなりできなくなってしまいます。
息子は、その特性と本人の気質から、初めての習い事や学校の行事、先が見えない未来を「こわい」と感じていたのです。
3.ママとの“報連相”で分離不安っ子に安心を
ママとしては、我が子にはやりたいことに思い切り飛び込んで欲しいし、毎日を安心して過ごして欲しいですよね。
分離不安っ子が、必要以上に不安を感じることなく、のびのびと自分らしく過ごせるようにするには、ママとの会話がとても大切です。
そこで重要になるのが、親子での“報連相”。
仕事の場面で良く使われる言葉ですが、これを分離不安っ子とのコミュニケーションにも活かすことができます。
親子での報連相のポイントについてお伝えします。
◆報告
学校から帰ったら、その日の出来事や先生が言っていたことなど、親子でゆっくり話す時間をとりましょう。
子どもからあまり話をしないようなら、ママの方から
「今日は〇〇があった日だよね!どうだった?」
といった質問や、
「先生が、あなたのこと褒めていたよ!頑張っているね」
というように他者からの言葉を伝えるなどして、子どもが話しやすい雰囲気を作ってあげましょう。
また、ママから先に
「今日はママは買い物に行ったよ。そこで〇〇をしたよ。」
と今日の出来事を話してあげると、子どもも色々と話をしてくれると思います。
分離不安っ子はネガティブな記憶を引きずりやすいところがあるので、話の中でママが
「今日はそんなにすごいことができたんだね!」
「一日頑張ったね」
「そっか〜そう思うんだね」
など、肯定の言葉、共感の気持ちを現してあげることで、子どもの記憶がポジティブで楽しいもになります。
ぜひ話を聞くときは、会話の中でたくさん子どもを褒めてあげてくださいね。
◆連絡
「明日は学校から帰ってきたら歯医者さんに行くよ。歯医者では、虫歯にならないように薬を歯に塗るからね。注射とかはないから、心配しなくていいよ!」
このように、予定がある場合などは事前にしっかり子どもに伝えるようにしましょう。
ただ「どこに行く」「何がある」だけではなくて、『そこでは何をして、それはどれくらい時間がかかるのか』など、わかる範囲で詳しく話してあげると、子どもは安心してくれます。
これは学校行事などにおいても同じです。
プログラムを親子で確認し、当日の流れを把握しておくことで、不安感が軽減されます。
新しい習い事などの場合は、事前に習い事の先生に子どもの特性を伝えておくのもおすすめです。
その上で子どもと、「体験会ではどんなことをするのか、何人くらいいるのか」などの情報を共有し、「不安だったら無理して参加しなくて良いんだよ。ママと一緒に見学でも大丈夫だよ」ということをしっかり伝えてあげると、子どもの安心感が増します。
分離不安っ子は見通しが立つことで安心できるので、事前の連絡は必須です。
少しでも不安なことがあったら、事前に親子で確認して、ひとつひとつの不安を安心に変えていきましょう。
◆相談
これも大切なポイントです。
子どもに関して何か決める際には、親が勝手に判断するのではなく、必ず本人と相談するようにしましょう。
例えば、こだわりが強い子に買う洋服、初めての場所が苦手な子と行く旅行先、学校の行事への参加の有無など、本人の意志を尊重して決めるためにも、相談することは必須です。
習い事の内容や時間、曜日なども、本人が納得したものでないと通えません。
子どもとしっかり相談して決めることで、子どもは
「自分は大事にされている。尊重されている」
と感じることができ、これが自己肯定感にもつながります。
何かを決める際には、子どもと相談して決める、ということも意識してみてください。
以上が、分離不安っ子とのコミュニケーションで大切になる報連相のポイントです。
ママから見ると、「そんなこと気にしなくても良いのに〜」ということでも、心配になってしまうのが分離不安っ子。
そんな気持ちを理解して共感し、日々の会話をしっかりしていくことで、子どもの不安はひとつずつ解消されていきます。
親子の報連相、ぜひ実践してみてください。
執筆者:
発達科学コミュニケーション トレーナー
長谷川まこ