登校しぶりからの教室復帰。順調に見えたのに、教室の前で立ち止まってしまった…そんな『つまずき』に戸惑っていませんか?焦りを手放し、子どもの心に届く声かけのコツとNG対応を、体験談から具体的にご紹介します。
1.「教室に入れない…」登校しぶりからの復帰で親が直面する『壁』とは?
「ようやく下駄箱まで行けるようになった。別室まで行けるようになった。
でも、教室の前で固まってしまう…」
教室復帰を目指すお子さんに付き添う親御さんの中には、そんな壁にぶつかって悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
一歩進んだと思ったら、また一歩下がってしまう──。
私にもそんな経験があります。
焦る気持ちを抱えながらも、ここで気づいたことがありました。
このページでは、実際に「登校しぶり→母子登校→教室復帰」のプロセスをたどった私の体験をもとに、「どんな励まし方が、子どもに安心感を与えるのか?」 「親が気をつけたいNG対応とは?」を具体的にご紹介します。

2.教室復帰が“逆戻り”…順調だった登校しぶりに起きた突然の変化
わが家の息子が登校しぶりをはじめたのは、小学2年生の春のことでした。
1人では学校に行けなくなり、母子登校をスタート。
まずは親子で学校の近くまで歩き、次は校門まで、そして下駄箱までと、少しずつステップアップしながら教室復帰を目指していた時期です。
登校しぶりが本格化して2週間ほどたったころには、なんとか下駄箱までは到達できるようになっていました。
「よし、順調に前進している!」
「次は教室へ!せめて廊下まで行けたら…」
そんな期待を胸に、私はある朝、息子にこう声をかけました。
「昨日は下駄箱まで行けたね。上履きもスムーズにはけたし、今日は廊下まで行ってみよう!」
私は前向きな気持ちで声をかけたつもりでした。ところがその直後、息子は
「おなかいたい…ドリルでえぐられるみたいに痛い…」
とうずくまり、結局その日は家から一歩も出られないまま欠席することに。
「えっ、どうして…?」
「昨日あんなにスムーズだったのに?」
ショックでした。まるで振り出しに戻ってしまったように感じたのです。
翌朝は少し声かけを控えめにして、
「ゆっくりでもいいから行ってみようか。行けるところまでで大丈夫だよ」
と誘いました。
なんとか家は出られましたが、校門の手前でピタリと足が止まり、
「無理…入れない…」
と涙目で訴えた息子は、Uターン。完全に後退してしまったのです。

3.「次は廊下へ!」がプレッシャーに?“励まし”が逆効果になるとき
実はこの「よし、次へ進もう!」と思った翌日にガクッと後退するという流れ、息子の登校しぶり期には何度も経験しました。
焦らず進もうと心がけていたつもりでも、子どもに変化が見られるとつい嬉しくなって、「次は廊下へ!」「教室まであと一歩だね!」と親が張り切ってしまう。
でも、不安が強く、学校に苦手意識を持っている子にとっては、親が提示する“次のステップ”が高すぎて、かえってプレッシャーになってしまうこともあるのです。
昨日までできていたことが、今日はできなくなる——。
それは決して珍しいことではありません。
不安が強い子は、毎日ギリギリの気持ちで学校へ向かっています。
その状態は、まるでお水がなみなみと入ったコップのよう。
ちょっとでも揺らしたらこぼれてしまうそのコップを、「さあ次の場所へ!」と勢いよく持ち上げれば、水がこぼれてしまうのは当然のことですよね。
そっと、そ〜っと。お水がこぼれないように次の場所へ移すようなイメージで、子どもの背中をそっと押す。
それくらい慎重にステップアップを考えていくことが大切なのだと、私自身何度も身をもって学びました。

4.教室復帰を目指す子への“ベストな励まし方”とは?
不安が強い子への声かけでとくに気をつけたいのは、「次は〇〇してみよう!」という『ステップの提案』が、実はプレッシャーになってしまう場合があるということです。
たとえば、以前の私の声かけがこちら:
【NG例】
「昨日は下駄箱まで行けたね!上履きもすっとはけたよね!だから今日は廊下まで行ってみよう!」
一見、前向きな言葉に見えますが、本人にとってはまだ昨日の経験を消化しきれていない状態。
提案のタイミングが早すぎることはもちろん、急かすことで「自分はもっと頑張らないといけないんだ」「まだ足りないのかも…」と、自信をなくしてしまうこともあります。
一方で、こんな声かけに変えると、反応はまるで違ってきました。
【OK例】
「昨日は下駄箱まで行けたね。上履きも自分ではけたの、すごいよ。
校門までスムーズに行けるようになっただけでもものすごい頑張りだったのに、そこからさらに1歩進めたんだね。お母さんびっくりしちゃった!」
このように、「すでにできていること」「昨日からの変化や成長」をそのまま伝えることで、子ども自身が「自分はがんばってるんだ!前に進めてるんだ!」と実感できるようになります。
不安が強い子は、自分に自信がないことも多いので、自分の頑張りや変化に気づきにくい傾向が見られます。
だからこそ、親が「今できていること」をしっかり言葉にして伝えてあげる。
その積み重ねが、子どもの自己肯定感につながり、自信となって、次の一歩を踏み出すエネルギーになるのです。
教室復帰は、まっすぐな坂道ではありません。
行ったり来たりを繰り返しながらも、確実に前へ進んでいくもの。
「昨日より今日、今日より明日」と焦らず、『できていること』に目を向ける。
それが、子ども自身の力で教室へ戻っていくためのいちばんの応援になります。

▼登校しぶりの対応に悩んだときはこちらの記事も参考に↓
執筆者:永瀬 未歩
発達科学コミュニケーション トレーナー