運動会シーズンになると、毎日の練習がイヤで登校しぶりがひどくなるというお子さんはいませんか?特に発達障害の子どもの中には運動会の練習がつらくて参加できないお子さんが多いです。この記事ではその理由とママが今すぐできるちょっとした工夫をお伝えします。
1.運動会の練習に参加できないお子さんに困っていませんか?
2学期にはたくさんの行事が行われる学校が多いです。
その代表的なイベントが運動会ですよね。
多くの子どもにとっては、年に1度のワクワクして楽しみな行事の一つだと思います。
しかし中には、特に発達障害のあるお子さんには毎日行われる運動会の練習がイヤで、登校しぶりをしていたり、
そんなお子さんの様子を見て、せっかくの行事だし、参加して思い出を作ってほしいのに…とヤキモキされているママもいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、なぜ発達障害の子どもは運動会の練習がつらいのか、その理由と運動会シーズンを乗り切るためにママができるちょっとした工夫をお伝えします。
2.どうして?運動会の練習がイヤで学校に行きたくない
私の息子も、運動会やその練習が苦手なタイプです。
しかし、最初から苦手だったわけではありません。
小さいころから音楽が好きで、物覚えも良い方なので、幼稚園の頃はとても楽しそうにダンスをしたりして運動会を楽しんで参加していました。
だから私も息子は行事ごとが好きなタイプなんだろうと思っていたのです。
しかし小学校に入ってからは、2学期の運動会の練習時期に学校への行き渋りがとても強くなりました。
朝はダラダラしてちっとも用意をしない…
ようやく準備をしたと思ったら玄関で座り込んでなかなか立ち上がれない…
なだめすかして説得したり、力技でなんとか車に乗せて学校へ連れて行っても、車から降りられない…
そんな状態が続きました。
当時、私は母子登校をして1日中息子に付き添っており、運動会の練習の時間になっても体育館やグラウンドへ行きたがらない息子と別室で過ごしていました。
それまでの経験上、練習への参加を無理強いして体育館に引っ張っていっても大泣きしながら拒否するだけだし、仕方ないなと理解しながらも
どうしてこんなに練習を嫌がるんだろう…
去年までは幼稚園の運動会に参加できていたのに…
他の子は、当たり前のように練習して、休み時間も踊ったりして楽しそうなのに…
と練習に参加できない我が子を見て、悲しくなっていました。
3.運動会の練習がつらいワケ!発達障害の息子が感じた難しさとは?
そこで、息子に「運動会の練習はいったいどんな所が嫌なの?」と理由を聞いてみました。
すると、「毎日2時間も運動会の練習があるのがイヤだ。」との返事。
「でも幼稚園の時も毎日練習あったけど、それは嫌じゃなかったの?」と続けて聞いてみると、
「幼稚園の時も毎日練習はあったけど、短時間で毎日同じ内容ではなかった。
組体操をしたり、リレーをしたり、綱引きしたり…
でも小学校の練習はとにかく長いし、毎日同じダンスを何度も練習するし、面白くない…
それに、体育館に全クラスが集まるのも人が多すぎるし、暑いからイヤ」
ということがわかりました。
それを聞いて納得しました。
息子は発達障害グレーゾーンで、中でも自閉スペクトラム症(ASD)です。
この時に息子があげた運動会の練習が嫌だと感じる理由には、ASDの子どもが苦手に感じることがてんこ盛りだったのです。
発達障害の子どもの特性として、
✓感覚の過敏さから人混みや大きな音、光、暑さが苦手
✓自分の興味のないことを繰り返し練習するのが苦手
✓見通しの立たないことが苦手
✓自分が面白そうと思えないことをやるのに、人よりエネルギーがいる
といった事があげられます。
つまり、息子にとって運動会の練習では
・大人数が体育館に集まってやるので、そのザワザワした雰囲気や混雑感が不快
・体育館の暑さやグラウンドの日光がまぶしさがつらい
・「キレイに揃っていない」など何度も出来ていないところを指摘され、同じところを繰り返し練習させられるのがつらい
・練習が長時間で、時計を見てもいったいあとどれくらい練習するのか予想できず、終わりが見えないのがつらい
・そもそも好きな音楽でもなく、踊りたくないので、楽しいと思えずやる気を出せない
というASDの特性から来る苦手なことが詰まっていたということがわかりました。
だから運動会の練習が嫌だなと思い、朝も学校に行きしぶっていたのです。
4.今すぐできる!運動会の練習を乗り切る3つのママの工夫
では、どうすれば少しでも負担を減らし、運動会の練習に参加できるようになるのでしょうか?
私がこの時期を乗り切るために行った工夫を3つをご紹介します。
♦先生と情報を共有し、対応策を相談する
息子が練習のどんなところに辛さを感じているのかを学校の先生とも共有し、
✓大きな音が辛い時はイヤーマフを使ってもOK
✓一緒に踊るのがつらい時は、見学や別室で過ごすのもOK
✓短い時間だけ参加もOK
✓お休みしたときは、自宅で動画を見るなどして動きを確認すればOK
というふうに無理に参加しなくてはいけない!と接するのではなく、できる範囲で参加するようにしました。
♦辛い時には共感、できた時にはしっかり肯定の声かけをする
今日はつらそうだなという日には、何がしんどいのかを聞いて、「そうだよね。話してくれてありがとう」としっかりと受け止めるようにしました。
当時私は母子登校をしていて、練習したり見学したりする姿を直に見ることができたので、逆に何かしら参加出来た時には、
「みんなの練習ちゃんと見ていたね」
「場所も動きも、バッチリだったね」
「長かったけど、よく最後までがんばってたね」
と頑張っていたところ、出来ていたところを具体的に伝えて本人の頑張りを肯定するようにしました。
♦ダンスは『やらなければならないこと』を『楽しいこと』に変換する
ある時、運動会のダンスの曲がちょうど家のTVで流れたのです。
その時に「あ。ダンスの曲だよ」というと「ほんとだ!」と少し興味を示していたので、家でもその曲をかけて一緒に踊ってみたり、弟にも教えてみたりしました。
すると、少しずつ運動会のための『やらなければならない』ダンスが、私や弟と一緒に、『楽しく踊って遊ぶ』ことになっていったようでした。
この様に運動会の練習期間を過ごすことで、息子は自分のペースで参加できるようになりました。
そして、少しずつ自信がついてきて、朝の行き渋りもおさまっていきました。
運動会の練習が苦手な発達障害の子どもには、その子の特性を理解して、気持ちや体調に寄り添いながらサポートすることが大切だと感じています。
運動会の練習は毎年あります。
「今日は参加できた」、「今日はできなかった」と一喜一憂せずに、長い目で見て、
今年の運動会が少しでも『小さなできた!』を積み重ねられる楽しいイベントに変わるようにサポートしていきたいですね。
執筆者:よしみつ りこ
発達科学コミュニケーション リサーチャー