発達障害の子どもを持つお母さんに目指してほしいのは感謝の気持ちを上手に発信する「ポジティブクレーマー」になること。その第一歩として、年賀状を利用して、先生が持つネガティブな記憶をポジティブな感情のオンパレードで上書きしちゃう方法を教えます。
発達障害・グレーゾーンの子どもと先生、昨年までの相性は?
あけましておめでとうございます。新しい年が明けましたね。今年はどんな1年にしようかな?今年こそはいい年にしたい!と考えているお母さんも多いと思います。
昨年はどんな1年でしたか?発達障害の子どものことでたくさん悩んだ1年だったなあ、と振り返る方もいらっしゃるでしょう。
お子さんが園や学校に通っている方は、お子さんのことで先生からいろいろ指摘されたり、電話連絡がくることにしんどさを感じた一年だったかもしれません。
せっかくお母さんがおうちで一生懸命子どもに肯定的に関わっているのに、園や学校ではできていないことに注目されて叱られてばかり。
親も子どもも、先生との相性が悪いなあ、先生にいい印象が与えられていないんじゃないかな、と感じていらっしゃるかもしれませんね。
でも、お正月が終わればまた日常が戻ってきますし、先生とのお付き合いもまだまだ続きます。
先生が持っている、お子さんに関するネガティブな印象をポジティブに上書きしたい、って思いませんか?
先生に上手にお願いをするために、「ポジティブクレーマー」を目指してみませんか?
ここで、先生の立場に立って考えてみましょう。先生が子どもを叱ったり、子どもの良くない点をお母さんに指摘するということは、先生の中に、お子さんについてのネガティブな記憶があるということ。
そして先生が子どもを叱れば叱るほど、そのネガティブな記憶が脳に定着してしまうことになります。
更にわが子に肯定的に関わってほしい、発達障害や特性について理解してほしい、という気持ちを先生に伝えようとするあまり、お母さんからは「○○してください」「○○はしないでください」という要求ばかりになってしまう場合があります。
先生から見れば、子どもに対してネガティブな記憶を持った状態では、お母さんの言う通りに子どもに肯定的に関わる、ということに無理が生じてしまいます。
その結果、先生が「自分の指導方法が気に入らないんだ」、と感じてしまい、お母さんからのお願いをクレームだと受け取ってしまうこともあるんです。
いわゆる「クレーマー」「モンスターペアレント」とみなされて、シャットアウトされてしまう場合もあります。
そうならないためには、先生の、子どもに対するネガティブな記憶を書き換えてしまうのが手っ取り早いですよね。果たしてそんなことができるのでしょうか?
人間の記憶には、すぐに消える「短期記憶」と、長く記憶にとどめておく「長期記憶」があります。
新しい情報が頭にインプットされると、その情報はまず、脳の中の海馬というエリアに短期記憶として記憶されます。このエリアは一時的に情報を保存するだけで、しかも容量が小さいのです。
そこで、脳は重要な情報だけを大脳皮質という長期的な記憶をつかさどるエリアへと運び、保存します。この大脳皮質に保存された情報は、長期記憶として残ることになるのです。
つらい・いやな出来事は強い印象を伴いますし、人間の防衛本能からいやな記憶は残りやすいため、ネガティブな記憶は長期記憶として定着してしまうことが多いというわけです。
では、ネガティブな記憶を消すためにはどうしたらいいのか?最近の研究で、いやな記憶を消すために、ポジティブな感情を伴う記憶で新たに上書きする、という方法が可能であると分かってきました。
この脳のメカニズムを利用して、先生の中にある、お子さんに対するネガティブな記憶を、ポジティブな記憶で上書きしちゃえばよいのです。
そのために、お母さんに目指してほしいのが、「ポジティブクレーマー」です。
「ポジティブクレーマー」とは、クレーマーはクレーマーでも、感謝の気持ち・ほめの言葉を伝えるありがとうの伝道師です。
普段の先生の対応の中で、子どもを思ってしてくれたこと、子どものためになったことを探し、それを感謝の言葉とともに具体的に伝えるのです。
そう!先生に「発コミュ」しちゃう、ってことなんです。
例えば、「子ども同士のけんかをこのように仲裁していただいたおかげで、友達といい関係が築けています」や、「いつも子どもの学習意欲をかきたてるサポートをしていただき助かっています」
など、先生のいい指導を具体的に取り上げて、お礼の言葉とあわせて伝えるようにすると、先生がお母さんに対して、「自分のことをよくわかってもらえている」と感じます。
その結果、先生の中にある子どもさんに対する記憶をよりポジティブなものにすり替えることができるんです。
年賀状を利用して先生の記憶をポジティブに上書きしちゃう方法とは?
「ポジティブクレーマー」になるためには、普段から先生に感謝の気持ちを具体的に伝えることが大切です。直接面と向かって言葉にして伝えるだけでなく、手紙にして伝えると更に効果が上がります。
我が家でも、発達凸凹の長男が学校でうまくいかなかったとき、担任の先生が心を砕いていろいろな方法を考えてくださったことがありました。
そのとき、一度改めて、普段熱心に関わってくださっていることへの感謝と、そのおかげで子どもが改善した点、こうしてもらえたらありがたいというお願いをしたためたお手紙を先生に届けたことがあります。
それがきっかけかどうかはわかりませんが、先生の長男への対応がさらに肯定的なものとなり、今では先生大好き、学校大好きな長男になりました。
でも、普段先生とのやりとりは連絡帳が主で、改めて手紙を書くなんて仰々しい、と思うお母さん。今の時期だから気軽に書けるお手紙があるではないですか!
そう、年賀状です。
最近は年賀状を出すご家庭も少なくなってきているのですが、1年の初めに、感謝の気持ちをしたためた年賀状を受け取ることは、先生の記憶をポジティブに上書きすることに絶大な効果があります。
年賀状を書くポイントは2つあります。
1つ目は、子どもとお母さんが、直筆でコメントを書くこと。お父さんがコメントしてもよいでしょう。
このとき、実際にあった具体的なエピソードを入れると更にポジティブな印象が高まります。
また、「○○していただいてうれしかったです」「いつも子どもを見ていてくださりありがとうございます」など、子どもやお母さんのポジティブな気持ちを表す言葉を入れると、さらに感謝の気持ちが伝わりやすくなります。
2つ目は、子どもの笑顔の写真を添えること。先生が年賀状を見るのは新学期が始まる前になる場合が多いので、直接会う前に、笑顔の子どもを目にすることで、さらにポジティブな印象が高まります。
ただ、子どもと先生との相性がいまひとつよくない場合、先生に対するネガティブな記憶は親子の中にもあるはずですので、メッセージから皮肉や嫌味が伝わってしまわないように気をつけましょう。
メッセージの中に入れるエピソードは、社交辞令ではなく、心から思っていることを取り上げる方がよいので、まず親子で先生とのエピソードについて話し合い、感謝の気持ちを高めてから年賀状を書く方がよいでしょう。
先生に対して子どもさんがどうしても感謝の気持ちを感じられない場合は、お母さんだけがメッセージを書いてもよいかもしれませんね。
年賀状書いてないよ!という皆さんも大丈夫!今から年賀状を書き、園や学校の郵便受けに直接入れちゃえばよいのです。
冬休みは終わっていませんので、まだ間に合います!
たとえ届くのが遅くなっても、子どもやお母さんが年賀状で感謝の気持ちを伝えてくれた、という事実は十分先生に届くと思います。
お正月だからこそできる年賀状大作戦、みなさんもぜひ試してみてください。
そして、新しい年に家族も先生も一緒になってチームで子どもさんをサポートできるように、お母さんが「ポジティブクレーマー」を目指してみませんか?
お母さんが先生に「発コミュ」できる方法、たくさんご紹介しています。
執筆者:森中博子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)