~発達障害・ADHD傾向の小学生入学体験記~子どものストレスの元が問題解決のカギ

入学後、子どもがストレスを感じちゃうかもしれないな、と不安なお母さん。発達障害・ADHD傾向の子どものストレスへの対応は素早く・丁寧に、が基本なんです。実際に小学校入学後、子どものストレスに直面したお母さんの声をお伝えします。
 
 

発達障害・ADHD傾向の子どものストレスには素早いフットワークと丁寧な対応が必須!!

 
 
発達科学ラボのM.Aさんは、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向の小学校1年生男子のお母さんです。
 
 
支援級への進学も検討したものの、学校の情報・学校でのサポートを得て、普通級での小学校生活スタートとなりました。
 
 
M.Aさんの就学準備と、小学校の先生やスクールカウンセラーとの連携についてうかがった前編はこちらをご参照ください。
 
 
 
さて、入学後、お子さんのストレスを感じたM.Aさん。後編では、お子さんのストレスに対するM.Aさんの対応と、放課後の居場所づくりについてさらにお話を伺いました。
 
 
――入学してからのお子さんの様子について教えてください。
 
 
「入学後は、本人がストレスを抱えて生活しているという意識を持って、いつも以上に発達科学コミュニケーション(発コミュ)を心がけていました。
 
あとは、本人が話さないのに根掘り葉掘り学校生活について聞かないようにしていました。登校自体は問題ありませんでしたが、当初は先生の対応等、慣れない環境にストレスを感じていたようです。
 
学校生活の中での特性として、クラスでの全体挨拶や合唱などで耳を塞ぐ行為等、聴覚過敏な部分がでてきました。
 
これは入学前には全く気にかけていなかった点でもあり、幼稚園では平気だったから学校も問題ないというわけじゃないのだと気づきました。」
 
 
――お子さんがストレスを感じていたとのことですが、どのような変化からそれを感じ取っておられましたか?
 
 
「祖父母と電話をしている時に『学校は楽しくない』と話したり、『放課後クラブは楽しかったけど学校は楽しくなかった』などの発言がありました。
 
話を聞くと、先生の注意の仕方が嫌いだと言ったり、『他のクラスがいい』と言うようになりました。
 
学校の話を聞くとイライラしている様子で、『注意をされるのが一番キライ』ということをしきりに言っていました。注意をされること自体に敏感だったのかもしれません。」
 
 
このような息子さんのストレスに対し、どのような対応をしたのでしょうか?
 
 
――そのストレスに対し、学校側の対応等はいかがでしたか?
 
 
「本人が全体指示でも注意を過度に受け止めてしまっていること、幼稚園の先生の対応と、小学校でのメリハリのある指導との、対応の差に戸惑っていたのかもしれません。
 
本人の家庭での様子をそのままカウンセラーさんに伝え、担任へも伝えてもらいました。
 
担任の先生もベテランで、普通級で発達特性のある子どもを見てきた経験もあるそうで、通常の指示でうまくいかないときは柔軟にやり方を変えてくださっています。」
 
 
――聴覚過敏の症状が少し出ているとのことですが、特に対応などはされましたか?
 
 
「先生が試行錯誤して、クラスでの全体挨拶や合唱などの声のボリュームを小さくするように全体に指示してくれたり、全体挨拶も無言で会釈をしてみたりなど、どれをやれば耳を塞がない方法でできるかを考えてくださいました。
 
その甲斐あって、授業開始等の全体挨拶では無言での礼を採用していただいたようで、本人もそれが一番好きだと話しています。」
 
 
◆ポイント解説
 
入学後に子どものストレスを感じたM.Aさん。お子さんへの細やかな対応と同時に、担任の先生との環境調整に動いたとのことでした。
 
 
入学してすぐの時期は担任の先生にも気をつかってしまい、なかなか支援をお願いしにくい、と思っているお母さんもいるでしょうが、子どものストレスには素早く、丁寧に対応することが重要ですね。
 
 
また、直接担任の先生に言いづらいことでも、スクールカウンセラーをはさむことで言いやすくなります。このような連携をとることもできるのがスクールカウンセラーのいい点ですね。
 
 
 
 
続いて、学校でのお子さんのストレスの原因にもなる学習面のつまづきや、放課後の居場所づくりについてもお話を伺っています。
 
 

発達障害・ADHD傾向の小学生が勉強でストレスをためないためには。学習面での課題発見はお母さんの観察力がカギ

 
 
――M.Aさんは入学前、学習面での心配もお持ちだったんですよね?
 
 
「そうですね、でも1年生の段階では学習面も親のサポートでカバーできている状況なので安心しています。」
 
 
――おうちでお子さんにどんな学習面のサポートをされていらっしゃいますか?
 
 
「家では算数の宿題のフォローが多いです。○を書かせたり玉そろばんを使ったり、視覚的に数字がわかるように工夫をしています。
 
特に、算数の文章問題の抽象的な言葉が難しいようで、数字を見て自分の中で問題を勝手に作って答えてしまうという場面が見られました。
 
抽象的な言葉は大人だと当たり前の言葉だったりするので、何が抽象的なのか、本人がどんな言葉ならわかるのかを探っていく必要があり、そこが課題かなと思っています。」
 
 
――今後、学習面で一番心配なことは何ですか?
 
 
「学習面で苦手な部分も出てきているので、今後どこまでついていけるかが心配ですね。
 
授業中にドリルなどをやって先生に添削をしてもらう場面があるようで、ドリルをみたら一度間違ってからの○がついていることが多かったんです。
 
『勉強わからない?』と聞いてみたら算数がわからないんだよ、と話していました。
 
先生の丸をもらうために並ぶ際に、みんなが並びだすと焦ってしまい、そこで集中力が切れるようです。
 
算数も足し算まではいいのですが、引き算の問題で出てくる、『残りは・違いはいくつでしょう』『どちらが多いでしょう』、といった抽象的な言葉や、どちらがいくつ、という2つの要素が入ってくると分かりづらいようです。
 
こういう問題は繰り返しやっていくしかないという思いがあるのと、今後もっと成功体験を増やせるようなやり方を探っていきたいと、先生とも話しているところです。
 
 
 ――お子さんの苦手な部分に対して、例えば宿題を減らしてもらうなど個別の配慮はされていますか? また、お子さんの苦手感に対して、おうちでできるサポートなど工夫されていることがあれば教えてください。 
 
 
「1年生のこの時期だと学校も勉強よりも学校生活に重きをおいているようで、宿題自体のボリュームも多くはなく、特に個別の配慮はお願いしていません。
 
家庭でもできるだけ視覚的に伝わるように気を付けていますが、苦手意識が出てくるとそもそもやりたがらなくなるので、ストレスのないよう少しずつほめながらやれそうなときに進めています
 
今後、家庭内での学習教材等も検討していきたいと思っています。」
 
 
ポイント解説
 
学習面での課題は入学してすぐはわからないことが多いもの。
 
 
M.Aさんのようにお家での声かけや、子どもが宿題に向かう様子をしっかり観察することで、苦手な部分を早めに見つけられると、その後の対応がうまくいきやすいですね。
 
 
また、学習面でストレスをためると、のちのち響いてきます。ほめるテクニックも使いつつ、すべてやらせるのではなくやれそうなところをやれるときに進めていく、という方法も参考になりますね。
 
 
 
 
続いて、放課後の居場所づくりについてもお話をお聞きしました。
 

放課後の居場所づくりは子ども目線で選択!! 放課後時間のヒントとは?

 
 
――放課後はどのように過ごされていますか?
 
 
「学校敷地内の放課後クラブへ時間を決めて都度預けています。
 
放課後クラブに行かない日は近所のお友達と遊んだり、自宅でテレビを見たり、習いごとをしています。」
 
 
――家と学校以外の居場所について、今後一番心配なことはありますか? 
 
 
「今一緒に遊んでいるお友達は幼馴染の子ども達ばかりなので、その子ども達の遊びかた、交友関係が変わったときに孤独に感じることがあるのではないかという点が少し心配ですね。」
 
 
――お子さんの放課後の居場所づくりに関して伝えたいことはありますか?
 
 
「まず、子どもにとって家庭での安心感は絶対だと思います。
 
 
我が家では現在、居場所づくりについて、本人が人間関係にストレスを感じている場面は見られないので、放課後は本人の希望を優先に、ほとんど毎日放課後クラブへ通って、学年に関わらずいろんなお子さんと交流している状態です。
 
本人が自ら作るコミュニティも大切なので、本人が行きたがる様子なら、まずは放課後クラブのような見守りのある環境下でのコミュニティ作りの機会を積極的に利用するのも、子どもにとっての選択肢になるかなと思います。」
 
 
――放課後クラブはいろんな学年のいろんなお子さんがいらっしゃると思うのですが、その中でトラブルや心配していることなどはありませんか?
 
 
「利用3日目くらいで2年生とケンカをして帰ってきましたが、結局その2年生とは2日後くらいに仲直りをして、逆に呼び捨てで呼び合うくらい仲良くなりました。
 
あとは6年生に殴られたこともあるそうで、それも怒っていましたが、下級生なりに、先生に報告にいくなどの対応がとれている様子なので、現段階では特に心配はしていません
 
本当に嫌なことがあれば翌日以降行かない選択をするだろうな、という思いで多少のトラブルはあるあるだろうなと思って見守っています
 
本人には怒っても暴力をする側にはなってはいけないことだけは話しています。」
 
 
――小学校生活について、最後に伝え残したことはありますか?
 
 
「本人には楽しい学校生活を送って欲しいとは思っていますが、学校は絶対に行かなければならないところ、学校は楽しいところだよとは伝えていません
 
本人にも、『これからお勉強とかに困ったら担任以外の先生や、支援級の先生たちが助けてくれる方法もあるから困ったらいつでも話してね』と伝え、子どもが学校の話をするときにはしっかりと聞いてあげてポジティブな会話を心がけています。
 
入学してみると、親が思っている以上に子どもはストレスを抱えて学校生活を送っているものだと気づきます。
 
不安定になりがちで、それは特性等に関係なく新1年生によく起こることでもあるので、あまり問題視しない親御さんもいるかと思いますが、入学直後や長期連休明けの家での様子は特に気にかけてあげたい点かなと思います。」
 
 
 ――M.Aさん、ありがとうございました!!
 
 
◆ポイント解説
 
放課後の居場所づくりについては子どもさんの希望を優先されているM.Aさん。
 
 
放課後クラブでは他学年との交流もあり、楽しい一方でトラブルも心配です。
 
 
発達凸凹の子どもさんを心配するあまり、介入しすぎて過干渉になってしまうお母さんもいますが、M.Aさんのようにトラブルもひっくるめて想定し、あくまでも子どもを信じて見守る姿勢を持つことの大切さがわかります。
 
 
M.Aさんのお話にもあるように、発達障害・ADHD傾向のお子さんでは入学後のストレスは大なり小なり必発です。
 
 
 
 
しかし、そのストレスをしっかり受け止め、親子のコミュニケーションでネガティブな気持ちを減らすと同時に、学校との連携や環境調整を素早く行うことで、そのストレスを少しでも早く軽減させることができるのだということがわかりました。
 
 
M.Aさんのお話が、支援級を検討しつつも普通級に進学されることを選択された皆さんの参考になればと思います。
 
 
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執筆者:森中博子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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