朝の「間に合わない」が、吃音のある子もママも追い詰める
朝起きてしばらくしてから、「宿題やってなかった」と言われたことはありませんか?
起きてきた時間はいつも通り。
家を出るまで残り20分。
そんな切羽詰まった状況では、「急がないと間に合わない」という焦りが一気に強くなります。

同時に、「なんで今言うの?」「早くやるしかない」 そんな気持ちが湧いてきて、子どもを動かそうとしたくなることもあります。
まだ小学生の我が子が、毎回完璧に宿題を終えられないことは、頭では分かっているはずなのに。
それでも、時間に追われる朝は、気持ちが追い詰められ、焦りが一気に強くなってしまいます。
このとき、頭の中がいっぱいいっぱいになっているのは、子どもだけではありません。
ママ自身もまた、焦りから、つい急かす声かけになりやすい状態に引き込まれているのです。
吃音のある子の朝、急がせても宿題が進まない本当の理由
時間がない朝、つい「早くして」「間に合わないよ」と声をかけたくなります。
焦らされることで頭の中がいっぱいになると、「何から始めたらいいのか」「どう進めたらいいのか」を考える余裕がなくなり、行動が止まりやすくなります。
さらに、朝、時間がないとき、「なんで急がないの?」そう感じたことはありませんか?
実はこれ、やる気の問題ではなく、“時間の感じ方の違い”が影響していることがあります。
子どもはまだ、「あとどれくらい時間があるのか」「どれくらい急ぐ必要があるのか」を見通す力が発達の途中です。
そのため、親は「もう時間がない」と感じていても、子どもは同じようには感じていないことがあります。
このズレがある状態で、「早くして」「間に合わないよ」と急かされると、何からやればいいか分からない、どう進めればいいか考えられない、という状態になりやすいです。
これはやる気の問題ではなく、脳が「考えられない状態」に入っているために起きています。
そしてこの影響は、言葉にも現れます。
吃音のある子は、話すとき、「どう言おう」「間違えないかな」「どもらないかな」と、複数の処理を同時に行っています。
そこに朝の焦りやプレッシャーが重なると、言葉を選ぶ余裕がなくなり、吃音が出やすい状態になります。
つまり、急かすほど動けなくなる、急かすほど言葉も出にくくなる、ということが起きやすくなるのです。

この関わりが続くと、焦る場面になるほど動けなくなる、考える前に止まるというパターンが繰り返されやすくなります。
だからこそ、朝のような焦りやすい場面で、一度立ち止まり、落ち着いて考えられる状態に戻る経験が重要になります。
この経験を重ねることで、焦っても戻れる、自分でペースを整えられる、という力が育っていきます。
そしてこの力は、「どうせうまく言えない」ではなく「伝えてみようかな」と思える、話したい気持ちを守る土台にもつながっていきます。
吃音のある息子が落ち着いて宿題に向かえた関わり
我が家には吃音のある小学生の息子がいます。
宿題をやることはわかっていますが、遊びに夢中で忘れてしまうこともありました。
この日は朝起きてしばらくしてから、宿題をやっていなかったことに気づきました。
家を出るまで残り20分。
内心は焦っていましたが、「よく思い出したね」とまずは肯定しました。
いつもの習慣である起きてから10分のYouTube。
この時間を削って宿題に充てる様子はありません。
そこで、焦る気持ちを抑えて、今見ている動画の話題に関心を向けました。
「この動画面白いね!」「やってみたいって思うよね!」すると、そうなんだよ、と動画の話題で盛り上がり元気になるスイッチが入った様子でした。
動画が終わるタイミングで、出発までの残り時間を一緒に確認し、宿題に取りかかることを提案しました。
残り時間が明確になったことで、いますぐ取り掛かる理由がはっきりとした様子でした。
途中で手が止まったときには、その少し前に書けていた文字を「読みやすく書けているね」と具体的に伝えました。

途中でこまめに肯定する声かけを挟んだことで、最後までやる気が途切れることなく宿題を終わらせて登校時間に間に合うことができました。
ママが焦っているときの関わり・3つのポイント
ママが焦っている状況だからこそ、大切にしたいポイントが3つあります。 我が家で意識していた関わりをご紹介します。
注意ではなく、やる気のスイッチを届ける
「早くして」「間に合わないよ」そんな言葉をかけて、急いでやらせたくなることはありませんか?

ですが、この声かけは、かえって焦りを強め、やる気を失わせてしまうことがあります。
すでに「怒られている」「うまくできなかったら、また怒られる」 そんな気持ちが膨らみ、恐怖や不安が先に立ってしまうからです。
注意を重ねるよりも、好きな話題に少し触れ、 元気が戻るきっかけ=やる気のスイッチを入れるサポートをすると、 「やってみようかな」という気持ちが自然と前に出てきます。
気がそれたら、「できている」を言葉にする
やらなければいけないことに取り組んでいる途中で、気がそれたり、手が止まりそうになることもあります。
そんなときは、止まった瞬間を責めるのではなく、直前にできていたことを言葉にして伝えます。
「早くしなきゃ」という声かけは、不安を強め、行動をさらに止めてしまいがちです。
一方で、「ここまでできている」「さっきの字、読みやすかったね」 と伝えられると、「もう少し頑張ろう」と、再び前に進みやすくなります。
最後ではなく、途中でこまめに伝える
宿題が終わったときだけ褒めるのではなく、途中途中で進んでいることを伝えるようにしました。
「もう1問できたね」「ここで半分終わったよ」「あと少しだね」 進んでいる実感が持てると、「たくさん残っている」という不安が和らぎ、最後まで取り組めるモチベーションにつながります。
時間がない朝ほど、ママも、吃音のある子も、追い込まれやすくなります。
ですが、行動を急がせる声かけでさらに焦らせるよりも、 落ち着いて取り組める状態を整える方が、結果的にスムーズに進みます。
この経験を重ねることで、子どもは「焦っていても、落ち着いてできた」 という感覚を持てるようになっていきます。
焦っているときほど強く出ていた吃音も、「焦っても大丈夫だった」という経験を重ねることで、少しずつ、焦りに左右されにくくなっていきました。
焦っているときこそ、「やらなければいけないこと」ではなく、 「できていること」に目を向けてみませんか。
その積み重ねが、親子で落ち着きを取り戻す力になっていきます。
(発達科学コミュニケーショントレーナー)

