発達障害思春期の子どもの「好き」や「得意」を探せ! 苦手をできるに変える「推ししか勝たん」作戦

発達障害やグレーゾーンの子どもは、好きな事や得意な事を伸ばそうと言うけれど、思春期のわが子はゲームやYouTubeばかりで将来が不安と思う親御さんは多いのではないでしょうか?でも大丈夫!YouTubeやゲームからも好きや得意は見つかります。

1.思春期の発達障害やグレーゾーンの子どもは崖っぷち?

「発達凸凹のある子どもは、できないことより得意な事、好きな事に注目して伸ばしてあげましょう。」とはよく聞くお話。

でもうちの子はゲームやYouTube三昧で、得意なことなんて見つからない。

こんなことで自立できるの?将来は大丈夫?と不安と感じている親御さんは多いのではないでしょうか?

また、思春期に入ると反抗的になり、指示が通りにくく、ゲームやYouTubeの時間でバトルになるご家庭も多いと思います。

発達凸凹の子どもは、興味のない事には関心が持てず、やるべき事ができなかったり、逆に興味のあることに対しては、過剰な集中力でやり続けてしまったりする傾向があります。

さらに、それまでは親が主体で進められた発達の特性への取り組みも、本人が主体となり親は見守るしかない場面が増えてきます。

その一方で、思春期になると発達凸凹のある子どもも、次第に客観的にものごとが見えるようになってきます。

ものごとを客観的に見ることができるようになることは、小さいころは気にならなかった他者との違いを意識しはじめることでもあります。

その上思春期は、発達凸凹のありなしに関わらず、人間関係も複雑化していきます。

そのため発達凸凹のある子は、思春期になると、自信を失くし、複雑化していく人間関係の中で、ストレスから不登校やうつ症状といった二次障害を引き起こす可能性もあります。

親の保護も受けにくくなる上に、本人をとりまく環境は激化する思春期の発達凸凹さんは、まさに崖っぷちにいるのです。

 そんな思春期の発達凸凹さんにゲームやYouTubeの中からでも「好きなこと」や「興味のあること」を見つけ、苦手をできるにして自信をつけることが出来るとしたらどうでしょう?

 ここでは、YouTubeで出会ったK-popをきっかけに、発達凸凹の特性を活かし、さまざまな苦手をできるに変え、自信を取り戻していった我が家の娘の事例を紹介します。

2.発達凸凹娘YouTubeで元気を取り戻す

現在中1のわが娘には、自閉症スペクトラム(ASD)と不注意優勢型の注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向があります。

 娘は小さい頃からマイペースでのんびりしたタイプの子どもでしたが、好きなことや得意なことには、驚くほどの集中力を見せることがありました。

 保育園の頃は、積み木をきちんと並べて積み上げ、自分の背丈よりも高い塔を作ったり、小学校の工作では、段ボールでスーパーのレジや公衆電話を緻密に再現したりしました。

 それらの作品は周囲からほめられることが多く、それは娘の自信となっていました。しかし、思春期に入った娘は、まわりのお友達の心の成長にだんだん追いつけなくなり、ほめられることも少なくなりました。

 そして小5のGW明けぐらいから不眠や腹痛を訴えるようになり、秋にはついに学校に通えなくなりました。

 不登校になった頃の娘は、すっかり元気をなくし、ずっとスマホにかじりつき、ゲームをしたりYouTubeを見ることしかできなくなっていました。

 目が悪くなる、姿勢が悪くなる、それよりこのままスマホ依存になってしまうのではないか?

そんな娘の姿に、私は不安しかありませんでした。

なんとかスマホを取り上げたいと思いましたが、娘はかたくなにスマホを手放さず

私はただ見守るしかありませんでした。

そんな娘でしたが、1か月ほどスマホにかじりついたあとは、地元のフリースクールに通い始め、次第に元気を回復し復学していきました。

あとから娘に聞いたところ、あの頃は何もやる気が出ずに、スマホを見るしかできなかったけれど、YouTubeから流れるK-popの歌やダンスを見るうちに元気が出て、また学校に行こうという気持ちになったそうです。

3.「推ししか勝たん」作戦で、苦手をできるに、自信もUP!

「推ししか勝たん」と言う言葉をご存じでしょうか?

推しとは、もともとは自分の好きなアイドルを指す言葉で「推しに勝てるものはない」「推しが最高」と言う意味があります。

そこから発展して、自分の好きや興味のあるものに勝るものはないと言う意味でも使われています。

我が家の場合、娘の推しはもちろんK-popです。

不登校をきっかけに発達科学コミュニケーション(以下発コミュ)を学び始めた私は、娘がK-popで元気になっただけでなく、今までなら苦手と避けてきたことにもチャレンジしたい、と思うようになっていることに気づきました。

娘は、もともと整理整頓が大の苦手でしたが、ある日YouTubeでK-popファンの人のお部屋紹介動画を見て、自分の部屋を片付けたいと言いだしました。

部屋の片付けは、それまで何度も私がさせようとしましたが、できた試しはありませんでした。

これはチャンス?と思い、私はまず娘と一緒にYouTubeを見て、娘の憧れているお部屋の様子をつかみ、実現に向けてどのように進めるのがよいかを考えました

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特性上苦手なモノを捨てるという部分はサポートし、きちんと並べる、カテゴライズするといった得意なことを優先してやらせところ、その集中力を活かし部屋をきれいに片付けることができました。

また娘は「整理整頓」だけでなく「計画を立てる」「優先順位をつける」「時間配分をする」ということも苦手でした。

しかし部屋を片付けたことをきっかけに、K-popのグッズを買うために、お手伝いのアルバイトをするようになり、お手伝いのアルバイトをするために、やりたいことに優先順位をつけ、時間の配分をするようになり、お金の管理もできるようになりました。

また娘の不登校は、友達の輪に入れず寂しい思いをしたことも原因のひとつでしたが、中学校では同じ趣味の友達をつくり、K-popのお店めぐりをしたり、一緒にK-popのダンス教室に通ったりしています。

まさに「推ししか勝たん」作戦で、苦手をできるに変えていき、自信を取り戻していったのです。

4.「推し」で思春期の子どもが動き出す!

「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」ということわざがあります。

どんなにお膳立てをしても本人にその意志がなければ実行することはできません。

まして、思春期の子どもを親の主導で動かすことはむずかしいのです。

一方で、お子さんが「好き」や「興味がある」ということをきっかけに、自分で対応できた、解決できたという体験があれば、親が主体となって与えたものよりもしっかり身につける事ができます。

 思春期に入ると親の言うことは聞かなくなる一方で、自分の意志を持つようになります。

「推し(好き)」はまさに、自分の意思で選び取ったもので、放っていても本人を動かす原動力となります。

さらに、思春期になれば自分のやりたいことを実現するにはどうすればよいかという戦略を立てられるようにもなります。

その戦略を実行することを考え、行動することで苦手なことが連鎖的にできるようになるのです。

思春期凸凹さんは崖っぷちですが、自我が芽生える分、好きなものにその特性を活かし集中することで、多くの苦手を一挙にできるに変えられるのです。

5.YouTubeやゲームからでも大丈夫!親の声かけ次第で「好き」や「得意」は見つかります!

いくら「推ししか勝たん!」と言われても、わが子にとって何が「推し(好き)」かは簡単にはわからないかもしれませんね。

でも今、お子さんがYouTubeやゲームにはまっていると感じ、将来に不安を感じているならYouTubeやゲームをやめさせようとするよりも、その内容を聞いてみてください

もし、お子さんの反応が薄くても、「どんなの?」「面白いの?」と肯定的に声をかけて聞いてみましょう。

お子さんに肯定的に声をかけることで、親は自分のことを気にかけてくれているという安心感を与えることができます。

安心感が感じられれば、子どもは自分のことを話しやすくなります。

肯定的に声をかけることによって、すぐにお子さんの「得意」がわからなくても、興味を持って聞くことによりお子さんがどんなものが「推し(好き)」なのかを知ることはできるでしょう。

YouTubeやゲームの「推し(好き)」には、「得意」が隠れている可能性は大です。

そして得意がみつかれば、肯定的な声かけで背中を押してみてください。

「好き」や「得意」が見つかれば、「推ししか勝たん」作戦で、苦手をできるに変え、自信をつけることができますよ!


執筆者:西田加奈子
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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