「授業中に消しゴムを頻繁に机から落とすんです」と先生から指摘されたことはありませんか?ADHDの息子はわざとじゃないといいます。なぜ不注意で物を落とすのか、問題は目の動きにありました。見える世界が変わった息子の改善ストーリーをお伝えします。
1.発達障害の子どもの不注意には目が関係することもある
学校の先生から
「机の上の消しゴムや鉛筆をよく落とすんですよね」
「いつも、ポロポロ何かが落ちて転がって、もう少し落ち着いて授業を受けることができないんですかね?」
と指摘されたことはありませんか?
学校の授業中に起こるこうした行動には発達特性もありますが、目の動きが悪いのが原因かもしれません。たとえ視力が良くても、物が正しくきちんと見えていないことがあるんです。
机から物を落としてしまう行動の原因には注意欠陥多動性障害(ADHD)の多動性により授業中そわそわしてしまうことや、不注意傾向によりうっかりミスして慌ててしまう場合もありますが、それだけが原因ではないパターンもあると疑ってみる必要があります。
鉛筆、消しゴムの落とす回数が半端なく多い、授業中、鉛筆を落としては拾い、落としては拾いで、先生に注意されてしまう子どもは、しっかり見えていないということに本人自身が気づいていない場合もあるのです。
本人の見えにくさを聞き出す会話や、見えにくさを解消するトレーニングがおウチでできると良いですよね。
今回は、我が家でビジョントレーニングを実践し、机から物が落ちることがほとんどなくなったストーリーをご紹介します。
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2.授業中、頻繁に鉛筆や消しゴムを落としてしまう息子
我が家には発達障害グレーゾーンの息子がおります。息子は小学校低学年のうちは授業の様子について、先生から何も言われませんでしたが、3年生になると鉛筆や消しゴムなどを落としていることが目立ち始めました。
他のお友達は成長とともにだんだん落ち着いてきたのですが、息子はいつまでたっても変わらないままだったからです。
中学校生活を考え出す6年生の3学期ごろ、担任の先生から「いい加減、机のものを落とすな」と叱られます。先生にそう指導されるたび、息子にとっては「机が小さいんだ」と屁理屈を言って怒っていました。
私もその時は先生と同じように
「周りのお友達は同じ大きさの机を使って、鉛筆と消しゴムを使っているでしょう?どうしてそんなにポロポロと落とすのよ。」
「授業中何度も落とす音がしてしまうと、真面目に勉強している子に迷惑になるでしょ!」と叱っていました。
それでも、息子の様子は変わることがありませんでした。中学に上がっても、物を落としてしまう行動はなくなりませんでした。
発達科学コミュニケーション(発コミュ)を実践し、叱ることのなくなった私。そんな私に思春期の息子でも素直に悩みを打ち明けてくれるようになり、学校生活について聞いていると、息子はこう言いました。
「机があると思って右側に鉛筆を置くとなぜか落ちてしまうんだよ」
物を落としてしまう原因は机が小さいという理由ではなく、見え方に問題があることに親子の会話の中で気づいたんです。
それから私は目の見え方に関わる書籍を調べました。そこで学習障害の事例で子どもたちがどうのように文字を見ているかのイラストがあったので、息子に見せました。すると
「俺、こんなふうに見えてるよ」
と教えてくれたのが、文字が二重に少し重なって見えているイラストでした。
息子が見ていた世界では学校の机の形も少し右側だけ広く伸びて見えていたため、そこに机があると思ってつい鉛筆を置くと落ちてしまっていたのでした。文字も右斜め上に宙に浮くような感じで重なるように見えていると教えてくれました。
国語の教科書は行間のところに同じ文章の文字があるように見えるとのことでした。
部活動ではバスケットボール部でしたが、「バスケットボールのゴールが右にもう一つあって、それをめがけて投げると外れるから左のゴールを狙っているんだ」と言うではありませんか。
これには本当に驚いて、どうしてもっと早く気づいてやれなかったのかと息子に申し訳なく、大変後悔しました。
息子は「俺はこれが普通だと思っていたから、違和感を感じなかった」と言います。なんとかして、くっきりと見えるようにしてあげたい、その一心でたどり着いたのがビジョントレーニングでした。
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3.親子の会話から息子の見える世界を変えられた
近くにビジョントレーニングをしている先生がいらっしゃったので相談にいくと、目の動きがとても遅いと言われました。
トレーニングを始めて3ヶ月たった頃、息子の目の動きはまだ平均よりは遅い様子でしたが、「こんなにくっきりした世界だったのかぁ」と変化の様子を教えてくれました。
自宅でトレーニングをして3ヶ月に1度先生のところへいくことになっていましたが、自宅でできるならもう先生のところへ行くのはめんどくさいというので今は行っていません。
ビジョントレーニングの方法は書籍があり、自宅で簡単に取り組めます。
まずお試しとしてウォーミングアップに目玉を左右に動く範囲ギリギリまで往復で動かしてみましょう。その次に上下でもやってみます。目玉を一周ぐるっと動かすのもいいですね。
スマホ生活で意外と目の周りの筋肉は凝り固まっているので、ママにもおすすめです。
メトロノームでテンポよく左右に動かせるようになるとバランスが取れてきます。実際やってみると、これが意外と動かないんです。無理せず柔軟体操のように毎日少しずつトレーニングをすることが大切です。決して焦らないでくださいね。
息子は今までは机に教科書やノートを置くとすぐに落ちてしまうかもと不安に思っていたようですがそのストレスがなくなったと言います。
バスケットボールのゴールもくっきりと一つに見えてシュートがしやすくなったとそうです。
ビジョントレーニングを始めた頃は疲れたらゴールが二つに見えてしまったようですが、半年トレーニングを続けていると、意識しなくてもずっとくっきり見えているようです。
ビジョントレーニングをしてもう一つ変化があったのは、極度の車酔いがなくなったこと。
次々変わる景色が二重に見えていたのですから、目を開けているだけでも大変だったと思います。
気づくのが早ければと後悔しかありません。
ただ、どう見えているかは本人の言語化がなければ分かりませんでした。生まれた時から見えているものが自分の世界だったのですから。
思春期に入った息子の困り事を解決できたのも発コミュを実践して、穏やかな親子の会話ができたからこそ、目の見え方に気づくことができました。
文字が複雑に見えていた分、漢字の書取りや板書の苦手がありますが、少しずつ頑張って取り組んでいます。もし同じような状況が少しでもあれば、一度ビジョントレーニングを試してみてください。
毎日継続することで効果が出てきます。一度、目の機能がきちんと見える状態になれば後戻りはないようです。半年から一年は続けていけるといいでしょう。
目の疲れを取る運動と言いつつ、親子で楽しみながら取り組めるといいですね。
執筆者:中曽根里美
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
発達凸凹キッズを楽しく発達させていく声かけをお伝えしています。
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