ニートや引きこもりの若者の自立支援者に学ぶ!発達障害や不登校の子が一歩を踏み出すためのヒント  NPO法人リネーブル・若者セーフティネット代表インタビュー「前編」

発達障害や不登校の親は、子どもが将来自立できるのか、不安を感じてしまいます。今回ニートや引きこもりの若者の自立支援をされている団体の代表の方にお話を伺いました。明るい未来に向け子どもが一歩を踏み出すヒント、今お母さんができることを探ります。

1.ニートや引きこもりの若者を社会につなげたい!

私の息子は、発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性上、興味の幅が狭く、毎日決められた時間割で動く学校生活では、たいくつな時間を過ごすことが多いように感じています。

発達科学コミュニケーション(発コミュ)に出会い、成長が見られる息子ですが、やっぱり見えない将来に不安を感じてしまいます。

そんなとき、さまざまな生きづらさを抱えて、ニートや引きこもりになってしまった若者の自立を見つけるための「居場所」の存在を知りました。

将来、発達障害がある息子がマイノリティ(少数派の立場)になって、生きづらさを抱える可能性は否めません。

そこで、「居場所」を主催し、生きづらさを抱える多くの若者と接してこられたNPO法人リネーブル・若者セーフティネット(以下「リネーブル」)代表の荒川陽子さんのお話から、発達障害や不登校の子どもが一歩を踏み出していくためのヒントを得たいと思います。

【リネーブル】
2016年、愛知県に設立
コンセプトは「人とつながる、社会とつながる」
◆NPO法人リネーブル・若者セーフティネット
・居場所〜若者のサークル活動
・若者Lab〜居場所の若者が社会とつながっていくための活動
◆有限会社リネーブルキャリア
・若者事業部~実際に仕事としてお金を稼いでいく部門

―――荒川さん、よろしくお願いします。まずは、「居場所」を開所したきっかけを教えてください。

「私が、主人の海外赴任から日本に戻り、職場復帰をしようとしたとき、当時小学4年生だった娘に、『ママ、仕事していい?』って聞いたら、『やだっ!』って言われて。

それで、20代に産業カウンセラーの資格を取っていたことから、キャリアコンサルタントの資格を取ることにしました。

そして、キャリアコンサルタントとして、ニートや引きこもりの若者の就職支援をしている地域若者サポートステーション(以下、『サポステ』)にボランティアをさせてもらいに行きました。

そこで初めて、働けそうなのに働けない子がこんなにいるんだということを知って、びっくりしました。

そして、早期離職を繰り返しているうちに、発達障害の診断を受けて、福祉的就労(障害者雇用)になる方が多いという現実を知りました。

働く力がある子たちなのに、この子たちは納税者になることができないなんて…、自分の子だけ育ててる場合じゃないなと感じました。

当時は、サポステと企業のキャリア面談をやっていて、辞めた後は、企業のキャリア面談をやっていこうと思っていたんです。

でも、今、目の前にいる若者をどうしたらいいのかなぁと思って。

学校に行っていない、会社へ行っていない、就職をするための心構え、準備ができていないっていう子たちにも所属がないと、なかなか前に進めないじゃないですか。

そういった人たちの居場所を作ろうということで、仲間たちと共に、リネーブルの活動の1つとして、「居場所」を始めることにしたんです。」

―――リネーブルには、どういった方が参加できるのですか?

「基本、「居場所」は火曜・木曜に開いていて、ニートや引きこもり状態の15歳からおおむね30歳ぐらいまでの働きたいと意欲のある若者が、会員となれます。」

―――実際に「居場所」へ通われる若者は、どのような若者なのでしょうか?

「今、私が支援している若者たちというのが、17~19歳ぐらいから上は31歳まで。20代前半ぐらいの子たちって、今ほど学校で、発達障害についてあれこれ言われる時代ではなかったと思います。

25歳以上となると、そんな言葉すらなかったと思います。親も、なんか育てにくいなぁと思いつつ、何となく不登校や行き渋りもあったけれども、何とか学校を卒業して…という状態。

発達について指摘されることなく、下手すると知的障害も見逃されるような時代だったのかなぁという風に思っています。

「居場所」に参加している若者たちは、何か問題があったときに逃げちゃうとか、非常にセンシティブで傷つきやすい子たちです

だから、パッと見て、お話をして、あぁなんで働けないのかな…という方たちがほとんどですね。

今現在、居場所には8~9人ぐらいの方が来ていて、なかには、就職に不安があって相談だけ乗っているという方もいらっしゃいます。」

◆支援制度の狭間にいる若者たちの居場所

キャリアコンサルタントとして、ニートや引きこもりだった若者の就職支援をしていた経験を持つ荒川さん。

ハローワークなどで自分で活動する就職支援と福祉的就労支援の制度の狭間に落ち、身動きが取れなくなっている若者の居場所を造りたいと活動を始められました。

「人とつながる、社会とつながる」というコンセプト通り、「居場所」での活動から、ゆっくりと社会へ繋がっていく仕組みがあるようです。

次は、「居場所」の若者たちが、どのように過ごしているのかを伺っていきたいと思います。

2.「居場所」から社会へつながる若者たち

―――「居場所」に参加している若者はどんなことをしているのですか?

「期限を決めずに、自由に自分の場所を作っていく「居場所」なんですが、うちに来ている子たちは、働きたいと意欲のある若者です。

働くための一歩を踏み出したいと思っている若者たちの居場所だと思っています。

仕事につながる活動をする場ではありますが、居場所は基本、大学のサークル活動と思ってくださったらいいかと思います。

居場所では、バーベキュー、ボードゲーム、体操教室、スポーツクラブ(フットサルなど)をしています。

なぜ、このような活動をしているかというと、働くためには、人とのコミュニケーション力と体力が必要だから。

やはり、リネーブルに来る子たちは、人とのコミュニケーションの経験が少なかったり、非常に体力がない子が多いんです。

例えば、バーベキューの話をすると、私のようなスタッフは動かないんです。参加者、行く方法、料理の内容など、色んなことを全部、彼らに任せてやってもらう。

その中で、人とどういう風に関わるのか、自分がどんな役割を持ったらいいのかということが学べます。」

―――「居場所」での活動に早く馴染むための工夫やトラブルの対応法など、コミュニケーションで気を付けていることはありますか?

「ボードゲームで交友を深めたり話し合いの場を作ったり、なにか気になることがあれば、スタッフに相談するように言っています。

それに、笑いあっていれば、自然と話せるようにもなり、話すトレーニングにもなります。

ボードゲームは人となりが分かるんです。勝負をかけるときに、相手の予測をしなければいけないときがある。当たったら嬉しいし、外れたら意外な面を見たなと。

駆け引きは生身の人としかできなくって、スマホゲームではできない。例えば、メンバーによって自分の役回りを考えて動いている子もいたり、面白いですよ。」

◆楽しみながら、ゆっくり社会とつながっていける場所

リネーブルは、ニートや引きこもりだった若者を、少しづつ社会とゆるやかにつなげてくれる「居場所」です。

「居場所」の若者達は、楽しんで活動しているうちに、いつの間にか、人との関わり、段取りや体力といった社会に必要な力を身につけていっているのですね。

いわゆるお勉強という形ではなく、サークルのように楽しんでいることで成長できる。それは過剰な緊張やストレスを感じずに、若者の本来ある能力を伸ばしてあげられる秘策ですね!

3. 発達障害や不登校の子どもが一歩を踏み出すためにお母さんができること

―――過去に様々な生きづらさを感じてきた若者が、「居場所」の参加に踏み切れたのは、どうしてなのでしょうか?

「リネーブルへの参加っていうのは、信頼されてる方から紹介された方が多いです。

例えば、学校の先生、親、普段行っているクリニックさんとか。そういうこの人が言っていることだったら、ちょっと行ってみようかなと思うようです。」

―――大事なのは信頼関係ということでしょうか。

「そうですね。それと、タイミング。その子のエネルギーが溜まって、ちょっと動きたいなというタイミングと合ったということですね。」

―――発達障害や不登校の子どもの未来を明るくするために、お母さんができることは何だと思いますか?

「子どものころから、例えば習い事だとか、家庭以外のもう一つの居場所があるといいなと思います。

今、リネーブルに来ている子で、ある日本の和楽器の師範をとった子がいるんですが、その子は、小中学校では、ずっと不登校や行き渋りがあったんですけど、その習い事だけはずっと続けていたんですね。

もちろん途中行けないときがあったかもしれないけど、でも、その教室が自分の居場所であり、先生は分かってくれる先生ということで、芸は身を助くじゃないですけど、今それが役に立っているという感じです。」

◆安心して過ごせる居場所があることでエネルギーを回復できる

生きづらさ感じてきた若者は、過去のうまく行かなかった経験から自信をなくし、人に傷ついてきたのだと思います。

そして、過去の記憶に怯え、上手にできない自分を責めてきた結果、殻に閉じこもることで自分を守ってきたのではないでしょうか。

ときに若者は、親に同年代の友人と比べられ咎められるのではないか、家族に負担をかけて心苦しいなど、あれこれ考えを巡らせて、口を閉ざしてしまいます

そんな状態の若者が、「ここにいてもいいんだ」と思える居場所があることで、次の行動のためのエネルギーを貯めることができるのです。

最近よく耳にするようになった「発達障害」という言葉ですが、それでも、発達障害グレーゾーンの子どもは見逃され、誤った対応により、うつや引きこもりなどの二次障害が起きてしまうことがあります。

まずは、家が一番の居場所になって、疲れた心を休ませる必要があります。

そして、少し元気になってきたら、親子でたわいもない話をし、子どもが気持ちを話せそうならじっくり聞いてあげて、「話してくれてありがとう」「いつでも話してね」と吐き出させてあげましょう。

子どもが安心した状態になったら、楽しくゲームをしたり、体を動かして、社会とつながる準備をしておく。

乗り気じゃない時はそんな日もあるよな、とお母さんは自分時間を楽しみながら。

そうすることで、子どもは、家に居場所を見つけ、次なる自分の居場所を見つけたいと希望が沸き、自分から、一歩ずつ社会につながっていくのだと思います。

さて、居場所をみつけた若者たちはどのように働くことにつながっていけるのでしょうか。

【NPO法人リネーブル・若者セーフティネット】
〒446-0071 愛知県安城市住吉町荒曽根1-245 アワーズビル2F

後編では、「居場所」の若者たちを働くことに繋げる「若者Lab」の活動について伺っていきたいと思いますので、是非ご覧ください。

発達障害・不登校の子どもの未来は“つながること”で変わる!NPO法人リネーブル・若者セーフティネット代表インタビュー「後編」

執筆者:福井 縁
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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