生意気な男子が好きなことを語りはじめる。思春期の可能性のふくらませかたはこれだ!~イイトコサガシ代表 冠地情さんインタビュー後編~

思春期になると急に生意気になる男子。部屋にこもってゲームや動画ばかりで今日は会話したかなという状態になってませんか?発達障害の男性にインタビューして、子どもに好きなことを語らせると、可能性がふくらみやすいんですよと教えていただきました。

1.男子はもっと気持ちを言葉にしてくれたら優しくできるのに

発達障害やグレーゾーンの子どもたちは、特性により自分の気持ちを言葉にできないことが多いです。

特に思春期の男子は、学校生活のことや友だちのことを話したがらないですよね。

お母さんがちょっとでも話しかけると「うるさい」「うざい」や無視をするという態度が生意気で、お母さんはイライラガミガミ

会話ができて気持ちを聞けたら「そう思っていたのね」とわかって、こちらも優しくすることができるのに…

思春期の男子は大人が「なにを考えているの?」という裏では、こう思っている、考えているんだよ。周りの大人は気持ちを言葉にするサポートをしてあげましょうと、イイトコサガシ代表の冠地情さんに前編で伺いました。

『発達障害の思春期男子には気持ちを「ことば」にしてコミュニケーション力をつける~イイトコサガシ代表 冠地情さんインタビュー前編~』

今回の記事では、思春期男子の気持ちを知った後、どう対応すれば、子どもが人とうまく関わって、可能性の種を膨らますことができるのかについて伺いました。

2. 思春期にこれができたら”すごい”ことになってますよ

冠地さんが代表のイイトコサガシの中に「タイムスリップ」というワークショップがあります。

自分が癒されたい時代を振り返って、そのころの自分になんて声をかけるかをみんなに発表します。

かける言葉によって、振り返った時代の自分を癒して、今を前向きに考えるというものです。

そこでいじめ・不登校・引きこもりがあった冠地さんに、その頃の自分にどんな言葉をかけるのか伺ってみました。

これを知ることによって私たち親が発達障害やグレーゾーンの子どもたち、特に思春期男子へどう対応したらいいかの手がかりがつかめますよ。

ーーー冠地さんは、いじめ、不登校、引きこもりと色々あった子どもの頃の自分になんと声をかけますか?

「重要なのは今の学校という枠とは関係のない、自分にとって目指したい、なりたい自分のための関係性を創ること。

そのために必要なのは人と建設的コミュニケーションが大事だよね。

※建設的コミュニケーションは、冠地さんの造語で自分の意志や想いを伝えて、相手の意見も受け止めて、対話をすること。

今の君のように、生意気なことばかり言っていると潰されたり、無視されたりするよ。

大丈夫!君はユニークだから10人あたれば1人は面白いって思ってもらえるから、そのユニークな個性を、あとはどれだけハイブリッドできるかだよ。」

ーーーハイブリッド⁈車のですか?

「僕のいうハイブリッドとは、『色々な価値観と自分の価値観が交わってできる化学変化のこと。』

りんごの品種改良で説明するとわかりやすいかな。

僕は、りんごの品種改良するときの交配がハイブリッドで、新しいおいしい品種を創ることを化学変化するといっています。

人は色々な価値観を交配して、そこから化学変化すると味のある、味わい深い人になるんだよといいたい。

だからハイブリッドして、味のある人になるために、自分の可能性を膨らませていくことが人生には大切

そのためには勉強よりも、相手を必要以上に傷つけない、自分も必要以上に傷つかないコミュニケーションが必要だよ。

そして人間関係というのはきれいごとでは創れないという、仕組みを知っておいたほうがいいね。

どうしても君は特性により『僕はこう思うんだ!』『僕はこういう風になったほうがいいと思うのに!』と、我が強くなる傾向がある。

人間関係でどうされると自分が傷つくかというパターンを知って、コミュニケーションしていけば相手との関係が悪化したり、自暴自棄になる前に相手から離れられるよ。」

ーーー子どもの頃の自分に、自分の傷つくパターンを知って、暴言暴力などで自分の気持ちを表現するのではなく、コミュニケーションの仕方を変えようと言ってあげたいわけですね。

「昔の大人たちがいうアドバイスはほぼ一緒で、『とにかくまず普通でいいから、他の人と同じくらいできるようになってから夢ややりたいことを語ったほうがいい。今の冠地くんだと認めてもらえない。まずは勉強やろうよ。学校行こうよ』でしたね。

そのアドバイスでどんどん自分が死んでいくというか、自分のやる気が出ない、自分ってだめなヤツなんだというマインドコントロールされている感覚でした。

不親切なアドバイスがない状態で、僕の今くらいのコミュニケーションができて、思春期の15歳くらいから自分の可能性を膨らませるという価値観で人と交わっていけてたら…

自分の得意分野をコミュニケーションで活かすことができていたら、すごいことになってますよ(笑)」

ーーー
冠地さんが大人たちのアドバイスをマインドコントロールされているような感覚になったと聞いて、ドキッとしました。

普段、何気なく子どもに言っている言葉でマインドコントロールしている可能性があり、そして子どもはされている気持ちになってしまう危険性があるのです!

大人は注意しなくてはいけませんね。

発達障害やグレーゾーンの子どもたちは、周りができて当たり前ということをできないことが多く、私たち大人もつい「なんでできないの?」「あの子はできているのに」と言ってしまうことあると思います。

冠地さんのおっしゃるハイブリッドして、子どもの可能性を膨らませたいなら、気持ちを聞くというコミュニケーションスタイルにして、かける言葉や接し方を変える必要がありますね。

3.自分の好きなことをとにかく言語化すること

ーーー冠地さんくらいコミュニケーションのわかっている15歳だったらきっと可能性膨らみますよね。そうすると、自己肯定感があればということでしょうか…

「自己肯定感の前に、自己効力感ですよね。自分でこういうことできるんだとか、自分がこういうことをやっていくと、生きがいを感じるんだ、充実感を感じるんだというもの。

自己効力感がない状態で、自己肯定感だけ目指すと結局は、他人に評価されることを目指しちゃう。」

※自己効力感:できると自分を信じられること
※自己肯定感:できてもできなくてもありのままの自分を受け入れられること

ーーー自分はこの人よりできてるとか?

「そうそう。この点数が取れてるとかね。

やはりそこで『大好きマスター』にならないとだめですよ。」

ーーー大好きマスター⁈ですか!!

「ポケモンマスターじゃないけど、自分の大好きな趣味とかジャンルに関してはすごく語れる人になる。

そういう自分と同じくらい語れる人とは会って話したらめちゃくちゃ盛り上がるじゃないですか。

いい意味でも悪い意味でも、『自分はこう思ってないのに、モヤモヤするな~、でも相手の言っていることも正しいな~』と相手の言うことを受け止められたり、相手にも受け止められる。

そんな科学変化が起きるところまで盛り上がれるような、大好きマスターになることが必要なんですよ。

特に子どもの多くは、まだ外に可能性が出ていない状態が多いから、それを外に上手に出すためには、まず自分の大好きをとにかく言語化すること。

そして人に質問したりされたり、色々な視点でそれを考察したり、してもらったり、というようなものがコミュニケーションの土台にできていると、可能性が膨らみやすいんです。

僕の場合は、プロレスが大好きで、猪木さんのプロレスが好きなんですよ。

このプロレスの話題から同時進行で、例えば馬場さん好きの人たちの話を聞いたり、雑誌を読んだりして、他の価値観も吸収して広げていく過程というものがあったんです。

こうして、違う価値観を受け止めて、受け入れる土台が作られたんですよ。」

ーーーそうすると、自分の好きなものから違う価値観を受け止め、受け入れる経験をして土台が作られて、その土台があってこそコミュニケーションが成り立つということですね。

「そう。受け止められないから、暴言吐いたり、物を投げたり、暴力ふるったり、または黙ってしまったりで、自分を正当化や防衛しちゃう。これではコミュニケーションできないですよね。

だから、自分の大好きなことで、コミュニケーションの土台を作って、たくさんの人とコミュニケーションしていく。これが大事。

親御さんには、この土台作りをまずやってほしいですね。」
ーーー
冠地さんのおっしゃる通りです。

どちらかが怒ったり、黙ったりしてしまったら、コミュニケーションできないですね。

思春期の男子との会話で、よくありがちなパターンではないですか?

大人に心無い言葉をかけられて、自己効力感が下がって、うまくコミュニケーションできなくなって、可能性が膨らんでいかない…

まさにコミュニケーションの悪循環!これはなんとか避けたいものです。

コミュニケーションをいい循環に変えることで、自己効力感がつき、「自分はこれもできるかも」「自分だったらもっとこうするな~やってみよう」など、たくさんの可能性が見えてきますね。

4.生意気な男子が好きなことを語りはじめたら大成功!

大人の発達障害である冠地さんのお話から、発達障害やグレーゾーンの子どもたちの言動の裏にある気持ちを言語化することで、うまくコミュニケーションをとることができるようになるということがわかりました。

大人は、気持ちを言語化するサポートをして引き出してあげることが大切です。

気持ちを言語化して引き出すトレーニングとして、いい方法が大好きマスターになることでしたね。

まずは「大好きなものを言語化する。」

言語化をして引き出すために、いますぐお母さんができることを考えました。

わが家の中3息子はゲームが大好き。ゲームのことを言語化することにチャレンジしてみました。

ゲームのきりのいいところで「このゲームはどんなゲーム?」「どうしたらゴールなの?」「このゲームの楽しいところはどんなところ?」などなど、どんどん質問して言語化してもらいました。

最初は、「シューティングゲーム」とか一言二言の返事でした。

ところが、私がゲームに興味をもつようになると、どう質問に答えようか考えるようになり、私が知らないゲームだと思うと「これはこういうゲームでこれが面白いんだよ」と話してくれ、ゲームの話が長く続くようになったのです。

このように、子どもが大好きなことに大人が興味をもって、話を聞いていくことで、子どもがイキイキしてきたのです。

音楽ゲームも好きなので「作曲をしてみようかな」とも言い始めました。

これが冠地さんのおっしゃる、ハイブリッドして可能性を膨らますための、コミュニケーションの土台作りなのかなと思います。

特にゲーム大好きな思春期の発達障害やグレーゾーンの男子に、言語化させるにはおススメです!

私たち大人が、自己効力感持たせて、コミュニケーションの土台を作ってあげてコミュニケーションすることで、子どもの可能性の種が膨らんでくる。

大人になった発達障害の方がこうおっしゃっているのだから、これをやらない手はないですよね。

今、お子さんと会話があまりできていない、ガミガミ言いすぎてこじれてしまっているという場合は、お子さんの好きなことは何かを観察して、それを言語化するサポートをしてあげましょう。

まだまだ見えていない、可能性の種がたくさんある子どもたち。

良好なコミュニケーションというお水を与えて、種を膨らませてあげるのは私たち大人なのです。

もっと、もっとコミュニケーションして、可能性の種を膨らませてあげましょう!

生意気な男子が好きを語りはじめたら、「大成功」ですよ!

~冠地さんからのメッセージ~
自分らしさで対話を、人間関係を、選択肢を、世界を開拓!子供たちが目をキラキラさせながら『冠地さん、俺は試した時点で大成功!だったら、どんなワークショップでも参加できるよ!』というシチュエーションが夢です。

冠地情さんプロフィール
1972年生まれ。 不登校・ひきこもり・いじめ・発達障害の四冠王だったと語る、イイトコサガシの代表。
イイトコサガシとは、コミュニケーションに生き辛さ(苦手意識・経験不足)を抱えている人たち、そしてその関係者(ご家族や支援者)、更にはもっともっとコミュニケーションの幅、経験、可能性を増やしたい人のためのワークショップを中心とした会です。
全国各地でいいところを探し、互いにほめるワークショップ(80種類以上)を43都道府県で1000回以上開催。 これまでに10000人以上が参加。 NHK ハートネットTV、バリバラ にも出演。
▼イイトコサガシのHPはコチラ
http://iitokosagashi.jimdo.com/

執筆者:渡辺くるり
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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