元不登校さんから学ぶ!不登校の原因、起立性調節障害の克服法は安心できる環境づくりです!〜前編〜

不登校の多くの子どもが悩んでいる起立性調節障害とはどんな病気でしょうか?一旦なってしまってから学業に復帰するまでどのような気持ちでしょうか?中学生で起立性調節障害になり不登校となった現役大学生にインタビューし親としてできることを伺いました!

1.起立性調節障害ってどんな病気?

不登校や学校の行きしぶりをしている子どもの中には、

朝起きられない
起きるとクラクラする
だるい

など、体調面での不調があり学校へ行けないという場合があります。

子どものそんな様子を見て
怠けていないでシャキッとして!

行きたくないから具合悪いようにしているんじゃないか?

と、「学校に行ってほしい」大人側からの視点で誤った見方をしていることがあります。

上記のような症状で子どもが苦しんでいる場合、起立性調節障害という病気の可能性があるのです。

不登校の子どもの多数が起立性調節障害に悩まされているとも言います。

我が家にも、小学生高学年の娘がおり、起立性調節障害の兆候が見られることがあります。

早めに気づいたおかげで、過度なプレッシャーを与えることなく済み、学校生活も続けられています。

しかし、気づく前は親子共に、

学校を休むことへの不安
この体調不良はなんなんだろう?という不安
勉強を取り組むエネルギーが湧いてこない

という問題を抱えていました。

今回は、起立調節障害により不登校となったことをきっかけに、通信制高校への転校を選び現在は体調をうまくコントロールしながら大学生活をおくっている現役大学生にお話を聞きました。

今回インタビューをさせていただいたのは、せごさんという男性です。

中学生の時に起立性調節障害を発症し、不登校となりました。病気で心が苦しかったときにどのように乗り越えたのか、周囲の大人はどのようにサポートすべきかを聞いていきたいと思います!

2.突然絶たれた充実した学校生活

ーー本日はどうぞよろしくお願いします。せごさんが起立性調節障害の症状が出たのは何歳のときでしたか?

「中学2年の秋頃でした。ある日、貧血状態になってクラクラしてしまって、親に部活終わりに迎えに来てもらったのですが、次の日の学校でも倒れてしまって、学校にある車椅子で保健室に運んでもらいました。その翌日からもう数ヶ月ぐらい学校に行けなくなりましたね。

ーーある日突然学校に行けなくなってしまったんですね。体調が悪くなったのは、本当に突然という感じでしたか?それ以前から兆候のようなものはありましたか?

「そうですね、野球部に入っていたのですが、練習終わりにクラクラしたり、お風呂に入ったら貧血気味になったりというのがあって気になってはいたんですけど…そういう体質なのかなという感じでそんなに病気とまでは考えてなかったんですよね。」

ーーそうですか。症状が軽いと、あれ?ちょっと変だな。と思うけど自分の心の中で抱えてやり過ごしてしまいますよね。起立性調節障害ということは、学校へ行けなくなって病院で診断してもらってわかったんですか?

「はい。学校で倒れて車椅子で運ばれたときに保健室の先生が症状的に起立性調節障害じゃないかと教えてくださって、小児科へ行って起立検査という検査をして分かりました。」

ーー病気になって、学校に突然行けなくなってしまったということはとても辛かったと思います。起立性調節障害になって学校を休んでいるときはどんな風に自宅で過ごしていましたか?好きなことなどをする余裕はありましたか?

「病気になって初期の頃は、朝に目が覚めて起き上がったら、もうふらついたりとかクラクラして気持ち悪くなっちゃったりする状態でした。

僕の場合は丸1日体調が悪かったので、ご飯を食べたり、お風呂に入ってシャワーを浴びたり、トイレに行ったりという、必要最低限の行動の中での、立ち歩きくらいしかしてないという感じでしたね。」

ーー生きていくだけで精一杯という感じですかね?

そうですね、横になっているだけで精一杯でした。

ーーせごさん自身、いきなりのことで不安があったと思います。学校を休まなくちゃいけなくなってしまった状況の時や、休んでいる間というのは、焦りや不安はありませんでしたか?

「めちゃくちゃ、ありましたね!元々はどちらかいうと優等生タイプというか、部活でキャプテンもやって、勉強では上位1割ぐらいに入るみたいな成績をキープしたりしていたので。

完璧主義まではいかないけど、きちっとしたいタイプだったのもあって、学校にしばらく行けないというのはすごく、当時の自分にとっては大ダメージでしたね。

だから、体調がある程度安定してきたなってなったときも、うまく学校に戻れなくて、学校が嫌いじゃないのに戻るのに苦労しました。

その時期は、起立性調節障害の症状によって学校に行けないというよりは、心理的な部分での不登校に当てはまる状態で、すごく難しかったなと思いますね 。」

ーー起立性調節障害になる子は、真面目で気を遣いやすいタイプの子どもが多いと言われていますね。我が家の娘も同じようなタイプです。そのような子は病気になって、完璧な自分がいなくなってしまったと辛い思いをすると思います。

せごさんも、キャプテンとしての部活もできなくなる、勉強を頑張ることで理想的な進路を描く道がとざされてしまうという状況は、本当に苦しかったですよね。

3.外に出る機会が不登校回復の転機に!

真面目で優等生タイプのお子さんが起立性調節障害になってしまったら、親としてどうやって子どもに安心させてあげられるでしょうか?

せごさんの心身が回復していった時期についてお話を聞いていきます!

ーー起立性調節障害となり学校へ行けなくなったとき、せごさんの親御さんの対応はどうでしたか?

「最初はやっぱり僕と一緒でわからない病気だったので、どうすればいいんだろうかみたいな感じになっていた雰囲気はありました。でもすぐに、体調が悪いときは無理して行かなくていいと言ってくれて、体調が良くて行ける時に学校に電話するようにしてくれました。

あまり急かされることがなくて、僕より落ち着いて対応してくれた気がするので助かりましたね 。

ーーそうなんですね!親御さんが安心させてくれる環境だったんですね。親御さんからの将来へのプレッシャーもなかったですか?

「それもなかったです。親よりも、自分の中での不安や焦りが強かったですね僕の場合は。家っていうものは居心地悪いものじゃなかったです!

Twitterなどで、色んな人のコメントを拝見しているとあんまり親との関係も良くないという子も結構いらっしゃるので、救われたなと思います。学校に行けないから家にいるのに、家であれこれ言われちゃうとまいってしまうじゃないかなって感じていますね。

ーー『学校に行けないから家にいる』、本当にそうですね。休養が必要なんですよね。せごさんは、最初は本当に寝ていることがやっとという感じだったのが、少しずつ回復してきた段階では、どんな風に1日を過ごしていましたか?学校に復帰する前に、自宅でも勉強できましたか?

「最初は前の自分と今の自分の違いを感じて、体の調子が良くなっても沈んでいることが多くて、体調良くても寝てるみたいな感じだったんですが…

親も焦ってもしょうがないという風に言ってくれたので、自分でもそうだよなと思い始めて、勉強も家でちょっとして学校には行こうかなと思ったんですけど…

どうやら勉強を頑張りだすと『あれ?なんか勉強やるとあんまりいい気分にならないな』という事態になってしまって。

勉強を始めると体調が悪くなるという感じになって、どうしてだろうなと思いながら、勉強以外に散歩とかドライブとかちょっと勉強とは離れて外に出始めてみたんですよね。

違うことをし始めたら、そこからの心の持ち方とか、行動への慣れが生まれて学校に気持ちを持っていけるようになっていきました。そのタイミングで勉強もちょっとずつできるようになるっていう事がありました。」

ーーやはり、私も娘を見ていて、起立性調節障害が起きているときは、症状が軽くても脳までエネルギー満タンという感じではなさそうで、本調子じゃない状態だと勉強できる感じじゃないのかな?と思っていました。

「そうですね。あまり頭が働かないんで、勉強してあまり理解できない自分にイラついたりとか、ちょっとできないと悪い方向に気持ちが流れることもあったので、それに悩んでからは、一旦そこを忘れてみたいな感じにしましたね。」

ーー勉強に身が入らないなという焦りを認めつつ、一旦その気持ちを置いておくということができたというのはすごいなーと思います。そこで、「できないできない…」とグルグル悩んでいても先に進みにくいですもんね。

先ほども、勉強以外の違うことをし始めたら気持ちが変わっていったとおっしゃっていましたが、これをやったら気持ち的にも明るくなれたとか、自分を肯定的に感じられるようになったとかいうことがあったら教えてくれますか?

「親がドライブに連れて行ってくれたりというのが、外を出るきっかけになって助かりましたね。

一番に覚えているのは、玄関から出た時のことです。ずっと家の中にいたので、日光に当たった方がいいと言われていて、でも、あまり症状がピークの時はできなかったのでそろそろ外出できるかなと思って玄関出たときです。

もうずっと基本自分の部屋の中にいて、部屋とリビングまでの生活をずっと続けていた中で、外に出るというだけで、すごく空間の広さみたいなものを体感したんですよね。

ーー「うわぁ!広い!」という感じですか?

「そうです。そこで、分の悩みとかが少し小さく思えたっていうところから、あんまり気にしないで、『なんかやってみるか!』という風に思ったような覚えがあります。

結構、自分でよく物事を考えるタイプと思っているので、そういった良い方向に一旦考えられたから、それから少しずつ体が動いたかなと思います 。」

ーーすごいですね、まだ中学生でそこまで自分を心の状態の変化に気づいて、それをきっかけにその後の行動も変えることができたというのは、大人だな〜という風に感じます。外に出て日光を浴びたり風を感じたりすることで自律神経も整いそうですね。

4.辛い状況に立ち向かえる心を作るため親は焦らないでサポート!

突然の重度な起立性調節障害の発症により、不登校となってしまったせごさん。

部活のキャプテンや優秀だった成績、全てを突然奪われてしまったことでとても辛かったのだと思います。

起立性調節障害になる子どもは、繊細で頑張り屋さんであることが多いと言われることが多いです。

それまでにも頑張りすぎていたのかもしれないですが、頑張ることで自分を保っていたのでしょう。

中学2年生という思春期真っ只中。他者と自分との違いを認識し、自分らしさを獲得していく時期ですから、頑張れなくなってしまったという苦しさは子ども一人で抱えることはあまりにも大きいですね。

せごさんが徐々に回復でき、自分の物事の考え方にも気づき、一歩前へ踏み出せるようになったのは、親御さんが焦らず見守ってあげていたからだと思います。

時にはせごさんが焦っている場面で落ち着かせてあげる対応をしてあげた。

子どもは、安心できる環境でこそ、辛い状況にも立ち向かえる心が芽生えてきます。

ついつい、子どもの将来が心配で色々と口出ししたくなってしまうこともありますが、まずはしっかり休むこと。そして子どもの気持ちが少し安定してきたタイミングで外出や好きなことをやってみるよう誘うこと。

それが大事な親の役目なのだなと思います。そのためには、焦らずじっくりと、子どもの体調をよく観察したり、「今どんな気持ちなのかな?」と子どもの目線で想像する。決して親側のペースで物事を進めないということが大事ですね!

後編では、せごさんが起立性調節障害と付き合いながらどのように進路を決めたのか、将来の夢について教えていただきます。是非、後編も読んでくださいね。


せごさん(▲twitterアイコン)
SNSにて「不登校の経験を発信」している現役大学生。SNSリンクはこちら
起立性調節障害、通信制高校の自分の経験や学んだことを発信している。
「1ピースくらい」でも自分から与えることができたら嬉しいと考え活動中です!

執筆者:すずき真菜
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

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