“どんな自分もオールOK”でいこう!家庭でマインドフルネスを取り入れることはできるの?~マインドフルネスティーチャー戸塚真理奈さんインタビュー前編~

春は環境の変化が大きい時期。変化に敏感な子どもに強い心を授けてあげたいと思いますよね。心のトレーニングとして今注目されているマインドフルネスとは一体どのようなものなのでしょうか?マインドフルネスティーチャー戸塚真理奈さんにお話を伺いました。

1.最近注目される“心のトレーニング”マインドフルネスとは?

これから、春の進級・進学で環境の変化が大きい時期になりますね。

ストレスを感じやすいお子さんに、どんな環境でもがんばれる心の強さを授けてあげたいと思いませんか?

最近、企業や学校で取り入れられている心のトレーニングにマインドフルネスがあります。

聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

マインドフルネスとは一体どのようなものなのか?

今回は、一般社団法人heARTfulness for living協会代表理事・戸塚真理奈さんにお話を伺いました。

戸塚さんは、子ども達が生きる力を高められるよう、こころの成長をサポートするマインドフルネスとEQ教育プログラムの開発と実践教育をされています。

ーーインタビューよろしくお願いします。

戸塚さんは、ご活動を通してEQはトレーニングによって伸びるということを伝えていらっしゃいますが、EQはこれからの時代に必要な力だと思われますか?またマインドフルネスがEQにどのように影響するのでしょうか?

EQとは…感情知能(心の知能指数)。ダニエル・ゴールマン博士「EQーこころの知能指数」によるとEQは「自己認識・自己統制・モチベーション・共感・ソーシャルスキル」の5つの領域から構成される。

「日本の今までの教育は、計算問題を解く力や暗記などのいわゆるIQの部分、きっちりやりこなす計画性の部分は伸ばしてきたと思います。

反対に『あなたはどう感じているの?』『あなたはどうしたいの?』という部分は教育の場ではあまり問われてこなかったので、親御さん自身も聞かれてもわからなかったりするのではないでしょうか。

今は情報社会で、何が正解か、不正解かを頭で考えると見失ってしまうところがあるような気がします。

正解かどうかではなくて『自分はこう感じたから、こうした』という感覚を持って、自分の中でロジックをあたためていくような力が必要になってくると思います。

それがあるからこそ、たくさんの情報の中で『これを自分は選び取っていくぞ』という選択につながっていきます

今の世の中はVUCAワールドといって、変動性が高く、不確実で複雑、曖昧さを含んだ先行きの見えない時代です。まさにコロナ禍の『これから何が起きるかわからない』というような状況ですね。

そういう状況では、自分の中に心のコンパスを持っていることが大切です。

自分に気づく力・自己認識力、状況が複雑で絡み合っている中でも『きっとこれだ』という当たりをつけていく力が求められるのではないでしょうか。

マインドフルネスとは、今、ここで起きていることを感じ取ることという意味です。

マインドフルネスでは『気づく』力を高め、心をモニタリングすることができるようになるので、EQにも良い効果がもたらされると期待されます。」

ーーマインドフルネスは呼吸をする・瞑想をするという行動を指すものではなくて、「今、ここで起きていることを感じ取る」状態を指す言葉なのですね。

「そうです。マインドフルネスは、その瞬間、その場で起きていることを感じ取っていくモードのことでbeing(状態)のことを指します。

この状態をめざして1つのことに集中し、この瞬間を感じとることでマインドフルになれるのです。

今、ここで起きていることを感じ取るモードになることをたとえるなら、山の頂上になります。頂上を目指すための山道としての方法は、呼吸法に限らず他にも色々あります。」

ーーマインドフルネスというと、呼吸に意識を集中する方法をイメージしますが、呼吸法以外の方法もぜひ知りたいと思いました。

2.お皿洗いでマインドフルネス⁉

ーーマインドフルネスの方法として、呼吸法以外にはどんな方法がありますか?

「なぜ呼吸がいいのか科学的な意味でいうと、深い呼吸をすると副交感神経が優位になる、ストレスホルモンが低下していく、などと言われています。

あとは道具がないと心が落ち着けない、というのではなくて、呼吸だったら自分の体と常に一緒にいるものなのでやりやすいということがあります。

呼吸以外でも、クッキング、掃除、皿洗いなどの家事でもマインドフルになれます。私もお皿洗いをして気持ちがスッキリした状態になれるのに気づくことがあります。

目の前のことだけに集中して、自分のことを1歩ひいた目線で客観的にみて自分のやっていることを実況中継する感じで、ぜひお試しいただきたいと思います。

スポンジを握る感触を味わったり、目の前のお皿を見て『このお皿は◯年前にあそこで買ったものだな』と感じてみたり。

時には『まったくうちの子は、算数の点数がちっとも上がらないんだから!』などと思いながらお皿に向かっているご自身に気づくかもしれませんね。

『あー、今ものすごいイライラしてる』という気持ちや『私、今掃除機をかけている』と自分のやっていることを言葉で発してみるのも、気持ちの穏やかさを取り戻すことにつながることがあります。

強い感情にのみこまれそうな時に役立ちますよ。」

ーーなるほど。感情に良い・悪いはなく、自分がどんな気持ちなのかにまず気づくことが大切なのですね。マインドフルになれる方法は日常の中に色々ありますね。

「ざわついてしまって集中ができない時、何かをしてマインドフルになることでリラックスを得ていくことができます。イメージとしては、スキマづくりをしていく感じです。

スキマがあるから、『今自分はこういうことで心がいっぱいで、心配だ』と自分の状態に気づくことができるのです。

今の子ども達がいる環境は、お稽古ごとや塾、人間関係の心配ごとや溢れる情報でノイズが多い環境になりがちだと思います。

ノイズが大きいと自分がどういう風に思っているか内側にアクセスしずらくて、そこに気づけません

そうなると、つい苛ついたり周りに当たりちらしたり、他の人はどうでもいいという考えになったり、将来についても希望を持ちにくくなります。」

ーーやるべきこと・考えることが多いと、自分の気持ちに気づけなくなるというのは心当たりがあります。

忙しい日常の中でも、目の前のことだけに集中する時間を持つと精神的なゆとりが生まれてきそうですね。

「人間の脳は、ネガティブなことに反応しやすいといわれています。

昔々、狩猟生活をしていたり、戦いの歴史の中では、驚異的なことが起きたときに『戦うか、一目散に逃げて身を守るか』のモードに自身を切り替える必要がありました。

人間の脳には今でも、この危険を察知して『あぶない・逃げろ』と信号を出す扁桃体という器官があって、刺激があった時にスイッチがオンになってしまうのです。

たとえばお母さんがパートナーや子どもの言動でイライラ・カチーンときた時、脳の中では扁桃体がスイッチオンされます。

そうすると理性的にものを考える脳の部分が働きません。つまり『色々あるから私にあたっちゃうのよね』という理性的な視点が持てないでキレるということが起こるわけです。

この扁桃体は驚異的な威力を持っていて、いったんオンになると理性が働かないということが起きるのです。この状態は扁桃体ハイジャックとよばれています。

実はマインドフルネスのトレーニングを2・3ヶ月続けていくことで、スイッチがオンになるまでの遊びができてきて、おだやかになっていくとの研究結果もあります。」

ーーイライラするような事があった時にすぐに怒っていたのが、「最近、穏やかになってきたな」と自分でも変化を感じられたら嬉しいですね!

マインドフルネスは途中でやめないで、一定期間継続することも大切なのですね。

3.「どんな自分もオールOK!」を親が体現する

ーー子育てをしていると、まさに扁桃体ハイジャックが起きて理性が働かなくなる状態を親であれば誰でも体験したことがあると思います。まずお母さん、お父さんにもマインドフルネスが必要だなと感じました。

「親御さんにもマインドフルネスはおすすめです。視野が広がり、子どもの事情を慮ったり見守ったりしてあげられるようになると期待できます。

私が交流をさせていただいている、親御さんや先生など子どもの教育に取り組んでいらっしゃる大人の方々の多くが、とても真面目で教育熱心で、頑張りやさんだという印象があります。

この記事を今読まれている、お会いしたことがない皆さんも、きっと子どものため・家族のために身も心も常に忙しくし、かなりの疲労やストレスやプレッシャーの中で精一杯に励まれているのではないかと思います。

そんな大人の方々ご自身にこそ、ほんのすこしでも「ゆるむ、リラックスする」を意識することを大切にしていただきたいなぁと願っています。

親が自然体で人間らしくのびのびしている姿を見ることで、子どもも『僕(私)もこれでいいんだ』と思えるようになります。

どんな自分でもオールOK!”を親御さんが体現すると、子どももありのままの自分を受け入れられるようになると思います。」

ーー親がまずプレッシャーから解放されてリラックスしていることが必要ですね。

「脳の仕組みを知っておくだけでも、家庭内でキレやすい子がいた時に『なんでうちの子こんなにキレるのかしら⁉』と同じ土俵に立って感情的になる代わりに、今この子の脳の中では扁桃体ハイジャックが起きているのだなと気づくことができますよね。

そうすると、気分転換に一緒に楽しいことしようよ、マインドフルネスで深呼吸しようよ、と子どもをサポートできることもあると思います。

親の目線からすると、イライラしにくい、過敏じゃない子どもの方が扱いやすいですよね。

ただ、子どもだって自分がそうしたくてそうなっているわけじゃないと親がわかっていること

親が子どもを1人の人間としてみて、その子が敏感であったり、怒りやすいキャラクターで生きていることの生きづらさに共感を持ちサポートしてあげるという目線でいることが大切ではないでしょうか。」

ーー親が感情に飲み込まれず、理性的にその子のことを見守りながらサポートしてあげられると、親自身も安らいだ気持ちになるのでしょうね。


戸塚さんの親子向け教室※の様子。
※不登校・発達の特性があるお子様に特化したクラスではありません(マインドフルネスはどんなお子さんにもオススメです)

4.リラックスしてありのままの自分を受け入れる

戸塚さんのお話、いかがでしたか?

マインドフルネスとは、非日常で何か特別な事をするものではなく、日常の中で自然に取り入れることができるものなのですね。

目の前のことにただ集中して取り組むこと、簡単なことのようですが、忙しい日常の中では頭が考えごとでパンパンで、いくつもの用事を同時にこなそうとしてしまいがちです。

まずは日常の家事、お皿洗いからでも短い時間集中してやってみませんか?

頭がスッキリして、今までとは違うリラックスした感覚が感じられるかもしれません。

子育てや家事などで忙しくしていると、どうしてもイライラしてしまうことがあります。

そんな時は「今、私イライラしているな~」とまずは自分の状態を感じて客観的に自分をながめてみようと思いました。

心のトレーニングとしてマインドフルネスを子どもにも伝えてみたいなと思ったら、お母さん、お父さんがまず体験してその素晴らしさを感じてみるところからスタートしましょう!

親がリラックスしてありのままの自分を受け入れている姿は、「どんな自分でもいいんだよ」と子どもへメッセージを伝えることにもなります。

後編では、子どもがマインドフルネスを実践する方法について伺っていきます。ぜひお読みください!後編はコチラ▼

執筆者:滝麻里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)

子どもの気持ちに寄り添えるようになるヒントが見つかります!
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