1.思春期の不登校の子の当事者の気持ちを知りたい!
中学校で不登校になると、時間が経つのがとても早く感じませんか?高校受験がある、など、将来の自立への準備段階に入っているので、親としては焦る気持ちがあるのは事実です。
現在中2の息子も不登校中です。
せっかくの自由な時間も、全てゲームやYou Tubeばかり。将来のこと、どう思っているのかしら?と思って話しかけても「うるさい!」「わかってる」「後で考える」などと投げやりな返事しか返ってこないこともあり、そろそろ未来に向けて何か行動してほしい、と思うのですが、思春期の子の「本音」を推し量るのは難しいですね。
今回は元不登校であり漫画家の棚園正一さんにお会いしてきました。著書の『学校へ行けない僕と9人の先生』『学校へ行けなかった僕と9人の友だち』はご自身の体験を元に、小〜中学校の間不登校だった主人公が、様々な先生や友だちに出会い、傷つき、試行錯誤しながら自分の道をみつけて成長していくストーリーです。
不登校の本人の思いや、どのようにして自分を認め、自らの道を進んでいったのか、不登校の子を持つ親として聞きたい、子どもの心のうちをたくさん伺うことができました。
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2.学校に行けないことは「ふつう」じゃない?
ーー小学生の時「学校に行かなきゃ」と、何度も頑張ったのは、ご自身の本心からだったのか、周りの大人たちからのプレッシャーがあったからか、どちらでしょうか?
「当時、学校にいくことは当たり前、だと思っていました。学校に行くのが「ふつう」だと。それ以外の選択肢は自分の中にはなかったです。周囲にいた大人たちも、学校に行かせる、ということが必ず裏テーマにあって、行かせよう、行かせよう、としていたと思います。でも、行けない、という中で葛藤の連続でした。」
ーー毎日、お母様に学校まで連れて行ってもらったりもしていましたよね。
「すんなり中に入ることができず、教室の横の部屋に母といて、次の休み時間になったら入ろう、次の休み時間になったら、とやっていたら昼になってしまって、母と一緒に帰り、家では母とひたすら喧嘩をする、ということもありました。」
ーーなんとか学校に通わせようと、毎日自転車で学校へ連れていくお母様のお気持ちがよく理解できます。本人にとっても、行くのが「ふつう」なのだ、と自分に言い聞かせて頑張ろうとするのに体が言うことを聞かない状態なのだろうと思います。親子とも、とても辛い状態ですよね。
もし、辛かった頃の自分に、今声をかけてあげるとしたら、なんと言ってあげたいですか?
「はっきりとした答えはないですね…。その時はその時で一生懸命頭を使って過ごしていたと思うので。絵を描いていたら、素直に「上手だね」と言ってあげたいです。」
ーー
学校に行けず、みんなと同じように「ふつう」にできない、自分の穴を埋めるように、棚園さんはたくさんのイラストを描いていらしたそうです。不登校の子どもが何かに没頭していると、声をかけていいのか、黙ってただ見守ればいいのか、迷ってしまいますが、普段どおり、を心がけて素直に対応しましょう。
学校へ行けないこと=ふつうでない。「ふつう」であるという重圧がどれだけ子どもの心を苦しめるのか周りの大人は理解すべきですね。
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3.不登校の子にOKの対応、NGの対応とは?
子どもが不登校になると、親はどうやってこの子と向き合えばいいか、どんなサポートをしたら良いのか、どんな声かけをしたら良いか、難しいですよね。
ご両親も、当時は情報もまだまだ少なかったと思いますので、サポートが大変だっただろうなと思います。
ーーお母様とは、毎日喧嘩をしていた、ということですが、話もできない、顔も合わせたくない、というような時期はありませんでしたか?
「母は僕が小学校低学年の頃は、感情的なタイプで、ガーーっと怒って、叩かれたこともありますが、中学年になってから、母は外に友だちができたようで、よく出かけるようになりました。前よりは感情的になることが少なくなったように感じます。」
ーーお母様はどこかで発散されるようになってきたのですね。
「そうですね。家の外で僕のことを話せるような繋がりができたのが大きかったのかもしれません。」
ーー小学生の頃から、ご家庭に家庭教師のかたや、様々な大人の方が訪問されていましたよね。
「家庭教師の先生もいましたが、どこかで、子どもたちの問題に詳しい学校の先生や、支援者などを母親が新聞や雑誌などから探して、手紙を書いたりして依頼していたようですね。僕は、ただ、「あ、また新しい人が来た…」という感じでしたが。」
ーーそういう働きかけが、しんどく感じる時期もありましたか?
「当時は、あ、嫌だな、と思っていました。でも、あとあと思うと、感謝しています。色々な大人がいることを知ることが出来たし、大検やフリースクールのこと、憧れていた鳥山先生に会えたのもそうだし、情報をたくさんもらうことが出来ました。
嫌だ、嫌だ、と思っていたのに、色々な情報を知らない間に得ていたなと思います。」
ーー本人が望んでいない支援は、本人に負担がかかりますが、本人に動く準備ができてきた時には色々な情報を与えておくのはよさそうですね。
ーーまた、ご両親に、これは、してもらいたくなかった、またはしてもらって嬉しかった、ということがあれば教えていただけますか?
「両親だけでなく、学校の先生もなのですが、何度か、無理やり連れ出されたことがありました。担がれて連れて行かれたり。それは、最悪な思い出として残っています。
逆に良かったことは、学校に行っていなくても遊びに連れていってくれたし、家族旅行にも行き、普通に会話もしたし、当たり前の日常があったことがありがたかったかな、と思います。」
ーーふつうで当たり前の日常が大事なんですね。
そして、お母さまご自身も、ストレスを抱えたままでいると、イライラしやすくなって子どもにあたってしまったり、落ち込んでしまったりするので、自分自身のための時間をしっかり持って楽しむことも大事だと実感します。
ーー先ほど、中1の時が一番酷かった、とおっしゃられていたのですが、思春期の心の変化と、親の心構えについてどうお考えになっているか教えていただきたいのですが。
「学校に行けなくて、周りと同じことができなくて、完璧主義。収まらない気持ちを両親にぶつけていました。とにかくぶつけていましたね。
ありがたいな、と思っているのは、あの時「ああしなさい」「こうしなさい」と言われなかったことです。大人の僕だったら、ああすればいいでしょ!こうすればいいでしょ!とついつい言ってしまうと思いますが、言われなかったのがよかったです。何か困難にぶつかった時は「大変だったね」と言って共感して過ごしてくれたのがよかったなと思います。それでも僕はどなってしまっていたのですが。突き放さずに、話を聞き続けてくれた両親に、とても感謝しています。」
ーーついつい親があれやこれやとアドバイスをしたくなりますが、それを言わないで共感した、というのが思春期を乗り越えるコツなのですね。
4.不登校を乗り越える道は、螺旋階段
ーー最後になりましたが、今不登校で悩んでいる親子に、メッセージをお願いできますか?
「(性格や考え方が)一気に変わることなんてなくて、その当時はずっと同じことの繰り返しばかりしていると思っていました。前には進んでいないような感覚でした。でも今、振り返ると、それは螺旋階段のように同じところにいるようでも、違う景色が見えていたと気づいたのです。それが大きな財産になっています。
その当時は、勉強も、人との出会いも、今ここでやらなきゃと思っていたけど、後からいくらでもやり直せるチャンスはあったので、焦らなくて大丈夫かな、と思います。不登校も決して失敗ではなく、たくさんある成長への道の一つだと。
だからこそ、今を少しでも楽しく過ごしてもらいたい。何かを変えなきゃと思わずに。何か行動している段階で変わっていないことはなくて、少しずつ変わっています。
その当時は、試行錯誤の末、失敗した、と思うかもしれないけど、全然失敗なんてなくて、それが全部糧になっているので、色々試しながら、失敗しながら、今やれることをやりつつ、楽しく過ごして欲しいです。」
ーー棚園先生、ありがとうございました!
実際に不登校を経験した方の成長した姿を拝見し、お話を聞くことで、焦る気持ちがなくなって、子どもへ、その焦りを押しつける必要もないのだということがよくわかりました。
我が家の思春期真っ只中の不登校の息子も、勉強は全くせず、引きこもりがちなのですが、家の中を安全基地として好きなことだけをして過ごしています。
気楽に楽しんでいるように見えるのですが…本人なりに考えていることもあるでしょう。
家の中でやりたい活動ができ、心が安定してくれば、また上を向いて動き出したくなる時がやってきます。動き出せば、行動範囲も広がり、安心できる居場所や仲間が増えます。そこで出会った人たちからたくさんのことを学べます。
不登校でも、失敗しても、動いていれば大丈夫。ぜひ今日から、心配を手放して、まずは本人がやりたいことに取り組める環境を用意してみてくださいね。
主な著書:
学校へ行けない僕と9人の先生
学校へ行けなかった僕と9人の友だち
マンガで読む、学校に行きたくない君へ
棚園さんホームページ〜不登校についての講演会活動等の情報配信中!
菊池のりか
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
おうちでもお母さんの対応だけで発達を促せる方法をたくさんご紹介しています。